2009年03月13日

(続き)工業製品とファッションと

タイトルは変えたけれど、2つ前のブログの続き。
トヨタは販売の都合を考えて、プリウスとハリアーは新旧モデルを併売していくという話。


あれっ?
新車が発売されて、その後、そのクルマの欠点を改良したり、新しく開発された技術を取り入れたりしてモデルチェンジをするんじゃなかったっけ? だから旧モデルは新モデルより劣っているハズじゃなかったっけ?


価値の劣ったものを安くして売るなら理屈に合っている。しかしプリウスは装備の簡略化による値下げだし、ハリアーにいたっては定価の改定はない。新旧モデルの併売というのは、この不景気にそんなことかまっちゃいられないのだとしても、「モデルチェンジして、よりいいクルマになりました。だから、買い換えてね」という長年のお約束というか建前をひっくり返す、マーケティング的には一大事な出来事なのである。つまり「技術者を遊ばせておくわけにもいかないからモデルチェンジはしましたが、旧モデルでも充分ですよ」と客にいっているに等しい。極論すれば買い換えなくてもいいですよ、という理屈になる。



「走り曲がり止まる」というのがクルマの基本性能。ぶっちゃけていえば、普通に使っている限りクルマの基本性能は20年前から、それほど進化していない。ちなみに20年前の1989年は、初代セルシオやホンダNS−Xが発売され、日本の自動車産業が最盛期を迎えたとか、世界に並んだとかいわれた年である。

もちろん20年間で進化した部分もある。燃費や環境対応は格段に進化したし、90年代半ばからはエアバッグも普及したから安全性も向上した。もっとも100キロで事故を起こせば今も昔もタダじゃすまない。全般的にサイズアップしたり、室内スペースの稼ぎ方(設計)がうまくなったので、広く快適にもなっている。ミニバンという広さ優先のクルマも登場した。クルマ屋の仕事じゃないがナビもついた。

しかし、基本性能は変わっていないから、今、20年前のクルマに乗ったとしても、それほど不都合はないはず。(20年落ちのポンコツ中古車じゃなくて、あくまで新車での話ね)


話は変わるけれど
ファッションの世界では毎シーズンごとに新作が発売される。洋服の場合、新作は「進化」ではなく「変化」。新作だからといって別に性能が向上するわけじゃない。


さて
顧客のニーズをくみ取り、製品やサービスに反映させるのがマーケティングの文法。それには「進化」するという概念が前提としてある。しかし、最近は「変化」ということにマーケティングはもっと真正面から取り組むべきだという気がしている。


世の中の多くの製品やサービスは、すでに充分に基本性能が高く、それを進化させたからといって売り上げ向上に寄与する割合は、それほど高くはならない。まあ、そんなことは私がこの世界に足を踏み入れた昔から議論されてはいたけれど、結局、細かなニーズまで掘り起こそうとか、心理の奥にあるニーズを呼び覚まそうとか、マーケティングの文法から脱却できない結論が多い。進化の努力は必要だとしても、変化は必須とか、常にファッション性を追求しなければならないとか、マーケティングの文法も少し書き換える必要があるのかも知れない。


ここでいう変化や、ファッション性というのはーーーー
ーーーー長くなるので、いずれそのうち


ところでブログの続きをさぼっていた昨日、
プリウスは旧型を安く併売するのではなく、新型の価格をドカンと下げて、インサイトと並ぶ205万円にするという記事があった。当初の予定価格からは50万円以上の値引き(という表現もヘンだが)になる計算。さらに加えて旧型は、200円万以下で法人向けに併売するらしい。


モデルチェンジの建前をひっくり返すことはせず、法人向けという新たな建前まで作ってーーー。トヨタ恐るべしと思うべきか、よっぽどせっぱ詰まっていると思うべきか。

wassho at 12:26│Comments(0) マーケティング、ビジネス 

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