2010年03月15日

グルジアの偽ニュースを比較する

3c76512c.jpgグルジアで「戦争が始まりロシア軍が攻めてくる」という偽のニュースが、偽という断りが不充分なまま放送され、パニックが起きたとの報道があった。昔アメリカで火星人が襲来したというラジオドラマを聞いて、それを真(ま)に受けたという有名な事件があったがそれを彷彿させる。(ここここ参照)


火星人襲来の方は、真に受けた人には気の毒だが、真に受ける方が悪い気がする(^^ゞ もっとも当時、真に受けた人も今では楽しい思い出になっているはずだ。しかしグルジアは2年前にロシアと戦闘状態になったばかりだから、ちょっとシャレとしては成立しにくい。報道にあるように国内の政争も絡んでの出来事かもしれない。


こういう情報が錯綜しそうな事件の時は、
マスコミ各社のニュースを見較べるとおもしろい。

  朝日新聞
  読売新聞
  ロイター


放送した局
  朝日新聞:政府系テレビ局「イメージ」
  読売新聞:主要民放テレビ局
  ロイター:親政権のテレビ局

朝日新聞とロイターは同じことを言っているのだが、ニュアンスはロイターの方がよくでている。読売新聞の表現だと、いくつものテレビ局が放送したようにもとらえられる。もっとも読売新聞は2段落目で“政権寄りの「イメディテレビ」”と特定して解説しているが。



放送した時間
  朝日新聞:夜8時のニュース番組
  読売新聞:13日夜
  ロイター:夜のゴールデンタイム

各社同じ情報内容。しかしゴールデンタイムと書いたロイターの記事が、影響のある時間帯の番組だったとイメージしやすい。



偽ニュースだという断り
  朝日新聞:番組の最後
  読売新聞:番組の冒頭と最後
  ロイター:断りがあったとは書かれていない。

放送局と時間についてはロイターの記事がよくできているのに、ここでは重要な情報が欠落している。



短い記事だけれど、記者あるいはライターの分析力や視点、表現の個性がわかる。朝日と読売は現地に記者を飛ばしていないはずだから、どこかの通信社の記事を引用しているはず。それで偽ニュースの断りの情報内容が異なっているから、別々の通信社の記事を使ったと推測もできる。(モスクワ特派員の記事だから電話取材くらいはしているかもしれない)


複数の新聞を読めと情報の達人たちはよく言う。しかし金もかかるし暇もないし、そんな酔狂なことはしていられない。日本の新聞は記者クラブの発表をベースに書かれているから、どこも似たり寄ったりという事情もある。

しかし今は便利なネット時代。少なくとも金はかからない。気になった記事があればマスコミ各社の記事を比較して見ることをおすすめする。海外のマスコミの日本語サイトもたくさんあるから覗いてみると、たまには発見もある。何年か続けていると多少はインテリになれるかも。




【おまけ】

グルジア大統領の名前
  朝日新聞:サアカシュビリ大統領
  読売新聞:サアカシビリ大統領
  ロイター:サーカシビリ大統領


表記がバラバラで、グルジアは日本にとって縁遠い国だということがわかる。
写真はグルジア国旗。ほとんど初めて見るが可愛いね。



追伸:リンク先が消えたときのために、
   「続きを読む」の先に記事をコピーしておきます。

★朝日新聞
「ロシア軍が侵攻」偽ニュース グルジアで市民パニック
2010年3月15日2時46分

【モスクワ=副島英樹】2008年夏にロシアと軍事衝突したグルジアで13日、政府系テレビ局「イメージ」が夜8時のニュース番組で「戦争が始まり、ロシア軍の戦車が首都トビリシに向かっている」という偽のニュースを放送し、パニックが起きた。インタファクス通信によると、グルジア兵の母親1人がショックで死亡、救急車の出動要請も相次いだ。

 偽ニュースは「ロシア軍がグルジアに侵攻。グルジアのサアカシュビリ大統領が殺され、野党指導者の政府が成立した」などの内容。テレビ局は約30分の番組の最後に「可能性のある一つのモデルを伝えた特別ルポ」と断っただけだった。視聴者のほとんどは真に受け、避難を始める人が出るなどパニックが広がったという。

 野党勢力などが抗議に押しかけ、テレビ局は数時間後におわびを流した。野党リーダーのブルジャナゼ元国会議長は「シナリオはサアカシュビリ大統領が書いたはず。彼の承諾なしには放送できない」と批判。ロシア下院のコサチョフ国際問題委員長も「サアカシュビリ大統領による挑発だ」と非難した。

 サアカシュビリ大統領は08年のグルジア紛争で、グルジアからの独立を宣言していた南オセチアに攻撃を仕掛けてロシアの介入を招き、南オセチアとアブハジア自治共和国を事実上喪失。国際的信用を失い、内政でも苦境に置かれている。



★読売新聞
「露軍侵攻」と偽ニュース、グルジア市民パニック
 【モスクワ=山口香子】2008年8月のロシアとの軍事衝突の記憶も新しいグルジアで13日夜、主要民放テレビ局が、「ロシア軍が首都トビリシに侵攻し、サアカシビリ大統領が殺害された」との仮想ニュースを放映し、市民がパニックに陥る騒ぎがあった。


 番組を放映したのは、政権寄りの「イメディテレビ」で、生放送のニュース番組枠で20分にわたり「ロシア軍の侵攻」を報道。「大統領の殺害情報がある」、「露大統領が非常会議を招集」、「米大統領が声明を発表へ」などと次々と報じた。

 地元報道によると、冒頭と最後にこれが「仮想シナリオ」であるとの断りがあったが、そのほかは通常のニュース形式で、断りの字幕もなしに過去のロシア軍戦車の映像などが放映された。このため事実と誤解した市民から問い合わせが殺到し、通信社も速報。大統領報道官が急きょ生放送中のスタジオに乗り込み、放送内容について「懸念」を表明する事態となった。

 テレビ局側は、「最悪のシナリオを検証し、ロシアの企みを防ぐ目的だった」と釈明したが、「シナリオ」は野党指導者がロシアと共謀したとも受け取れる内容で、野党側から「おぞましい」と反発を呼んでいる。

(2010年3月14日21時28分 読売新聞)





★ロイター
グルジアで「ロシア軍侵攻」の偽ニュース、市民がパニックに
2010年 03月 15日 13:35 JST

 [トビリシ 14日 ロイター] 2008年8月にロシアと軍事衝突したグルジアで13日夜、親政権のテレビ局がロシア軍の首都侵攻を伝えるうそのニュースを伝え、国内が一時パニックとなる騒ぎがあった。

 このニュースは、ロシア軍が野党指導者の要請で首都トビリシに侵攻したなどという内容で、夜のゴールデンタイムに20分間にわたり放送されたが、画面上にうそのニュースとの説明は明示されていなかった。

 これを受けて、同国内の携帯電話ネットワークがパンクしたほか、救急車の呼び出しも急増したという。

 地元メディアによると、サーカシビリ大統領は、ニュースがあり得ない話ではないとの見方を示し、「放送の内容は、起こり得る事態や敵国がたくらんでいることに極めて近い」と、国民に危機感を訴えた。

 一方、野党側は、サーカシビリ大統領が放送に関与したとして非難している。





wassho at 18:37│Comments(0) 社会、政治、経済 

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