2011年05月19日

フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展

東京で暮らしていれば、常に興味を引く美術展がどこかで開催されている。しかし地震や放射能のせいで世界各国の美術館は、日本への貸し出しを敬遠する傾向にあるらしい。原子炉で放射能が漏れたとか水が漏れたとか水位が下がったとかのニュースは、もう慣れっこになっていちいち気にもしなくなった。政府や東電は、まさか嘘はついていないだろうけれど、正確・真正直にも言っていないーーー世間の平均的な印象はこんなところか。そんなあやふやな国に大事なお宝を貸してくれなくなるのも仕方がないか。


そんなことを思いつつ珍しく渋谷で待ち合わせをしたので、そのついでに渋谷の東急文化村(東急百貨店本店の隣にある美術館・映画館・コンサートホールなどが入っている複合ビル)に行ってきた。


展示会のタイトルがややこしいかもしれない。

フェルメールは画家の名前。
地理学者は、フェルメールの作品の名前。
オランダはそのまま。
フランドルというのは、現在のベルギーを挟んでオランダの西側とフランスの東側辺り一帯をフランドル地方と言っていた。フランダースの犬のフランダースは、フランドルの英語読み。

要は17世紀頃の、ベルギーやオランダあたりの画家の展示会である。フランダースの犬で有名なルーベンスやレンブラントも、その時代のその地域の画家。もちろんフェルメールも。


フェルメールは一般的にはゴッホやピカソほどの知名度はないが、美術好きではファンが多い。「真珠の耳飾りの少女」「牛乳を注ぐ女」は何かで眼にした人も少なくないと思う。

この展示会にはルーベンスやレンブラントの作品も展示されているのに、冠(かんむり:展示会のタイトル)がフェルメールなのは、彼の人気が高く集客力があるのと、彼の作品は30数点しか残っていないので、なかなかお目にかかれないからである。タイトルをパッと読んだだけではフェルメール展のように錯覚するが、彼の作品は1点しか展示されていない




1竪琴を弾くダヴィデ王

いっかにもヨーロッパの絵画な感じ。

「竪琴を弾くダヴィデ王」というこの作品は、頭の部分をあのルーベンスが描き、弟子?のブックホルストという画家が後に胴体を描き加えたらしい。そういわれてみると頭と胴体の部分の立体感が違う。しかし解説がなければたぶん気づかない。

なおルーベンスは単に老人の頭を習作で描いただけなのに、ブックホルストは胴体を足し、なおかつそれを絵画として価値の高い=高く売れるダヴィデ王に仕立てた(デッチあげた?)らしいから、なかなかやり手である。フランドル・マーケティングの始祖と呼んであげよう。


2歌う若い男

この絵に似た絵か、あるいはこのモデルに似た登場人物が出ている映画を絶対に見たはずなのに、それが何だったか思い出せなくてイライラした作品。私の場合、思い出せないということは、そんなに昔の出来事じゃないはず(意味がわかるかな?) 

ディルク・ファン・バーブレンの「歌う若い男」という作品。タイトルを読むまで歌っているとは思わなかった。イライラしたけどいい絵だった。でもどこかイタリアっぽいと思うのはなぜだろう?




3画家と読みものをする女性、掃除をする召使のいる室内

何となく惹かれた作品。ピーテル・ヤンセンス・エーリンハの「画家と読みものをする女性、掃除をする召使のいる室内」。画家の名前も作品のタイトルも長すぎ!

絵としてもよかったけれど、違う国の違う時代の、つまりは実際には体験できない人々の暮らしをみるのが私は好きなのかもしれない。映画でも室内シーンになるとよく目を凝らしている。

絵に話を戻すと、召使いが主人公になっているのがおもしろい。絵とは関係ないが、やはり天井というのはこれくらい高くないとね。日本人はコツコツまじめで優秀でも、発想や行動がこぢんまりとしてつまらないのは、天井が低いからだと常々思っている。


ーーー続く

wassho at 01:36│Comments(0) 美術展 

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