2011年10月06日
さよならジョブズ
本日のブログを、このテーマ以外で書く事はできない。
アップルの創業者で、8月に病気でCEOを退任したスティーブ・ジョブズが亡くなった。この10年ほどすい臓ガンを患っており、ニュースで頬がこけて激ヤセした彼を見るたび、そう長くないだろうとは思っていたが、ついにそれは現実となってしまった。享年56歳。
「私はこれまで常々、私がAppleのCEOとして職務と期待に応えられなくなるような日が来たときは、私からまず皆様にお伝えすると申してきました。残念ながら、その日が来ました」という書き出しで始まる退任に際してのメッセージを、今改めて読めば、本人が死を覚悟していたとわかる。
1977年 アップル創業
1985年 アップルから追放される
1997年 アップルに復帰
簡単に経歴を書くとこういう事になる。
ジョブズはアップル創業の頃から、既に伝説の有名人だったものの、私が彼を心底すごいなと思ったのは復帰してから数年間のマーケティング戦略である。
膨れあがっていた製品ラインナップを、プロ用←→コンシューマー用と、
デスクトップ←→ノートパソコンの基軸で、たった4タイプに絞り込んだ。
当時、パソコンと周辺機器をつなぐケーブルはいろんな種類があった。
それをUSBなどの新しい規格のケーブルに変更した。もちろん他メーカーも
新しい規格は採用したが、マックの場合は古い規格のケーブルの差し込み口を
あっさりと無くした。
今までのOSとは互換性のない新しいOSに切り替えた。
モトローラのCPUから、それまでけなしてきたウインドウズ系のインテルの
CPUに突然乗り換えた。
などなどーーー。
一言で言えば「選択と集中」である。
選択と集中なんて、どんなビジネス書にも書かれている経営戦略。でも経営者がそれを実行するのがどれだけ難しいか、というよりビビってできないかは仕事柄よくわかっている。彼は天才と呼ばれているけれど、一体どんな神経をしていたのかのほうが私には興味があった。
でもまあ、パソコンでは結局ウインドウズに勝つことはなかった。
今も昔もマックのシェアは10%以下である。
※アップル社の造っているパソコンのブランドがマック。
マッキントッシュが正式な名前で、これはリンゴの品種名
から名付けられている。品種名の話はあまり知られていない。
だからかどうか、
その後は「iPod」と「iTunes」で音楽産業の在り方を変え、「iPhone」や「iPad」で人々のライフスタイルまで換えようとしている。ビル・ゲイツがパソコンどまりだったのに対して、ジョブズにはその先の未来が見えていた気がする。
そして、彼が復帰する前は何度も倒産や買収の噂があったアップルも、今や株式時価総額で世界一にまで登りつめた。あまり金儲けに執着していたとは思えない彼が、それを成し遂げたのだから世の中はおもしろい。昔はビル・ゲイツにはビジョンがなく、スティーブ・ジョブズには「ビジョンしかない」と陰口をたたかれたものの、今やそんなことをいう人もいない。
もう一つ私が彼を気に入っているのは、その美意識である。アップルは製品はもちろん、アイコンやホームページに至るまでデザインが洗練されている。ナビとか携帯電話の操作画面を見るたびに、これを作った連中はきっとウインドウズユーザーに違いない思うこともよくある。本当かどうか知らないが、ジョブズはユーザーの目に触れないパソコン内部のパーツまで「これはダサイからイヤ」とダメ出しをしていたそうである。「神は細部に宿る」ーーー彼はそれもよくわかっていたはずだ。
ジョブズの代わりが務まる人間なんていない。
アップルも徐々にフツウの会社になっていくだろう。信長→秀吉→家康と、残念ながら世の中はそういう風にできている。彼が生きていたなら、今後どんな革新的なことをやってくれたかと思うと残念である。でも運命には逆らえない。MS-DOSなら無理だったが、マックでパソコンを使い始めることができ(彼が追放されていた時期だけれどーーー)、今はiPadで毎日便利にソファでネットを利用しているのを彼に感謝して冥福を祈ろう。香典代わりに、そろそろiPhone買おうかな。合掌