2012年06月12日
レオナルド・ダ・ヴィンチ 美の理想 展 (続き)
前回「実は特別に見たい絵があったわけではない。でも、これを逃せばたぶん一生見られない光景が、この展覧会にはあったから」と書いたのはモナリザのこと。ダ・ヴィンチといえばモナリザ、モナリザといえばダ・ヴィンチである。
もっともダ・ヴィンチの描いたモナリザはルーブル美術館にあって、もちろんここでは展示されていない。しかしモナリザは今でも画家が練習として模写するように、ダ・ヴィンチの生きていた時代からたくさんの模写がある。この展覧会ではその中でも一流どころを集めたという、なかなか気の利いた企画を催しているのである。
会場を進んでいくとモナリザがズラーッと並んだコーナーにつく。
なぜか思わず愉快で笑ってしまった。
写真はネットの画像検索で拾ってきたもの。
私の盗撮じゃないよ(^^ゞ でも無断借用陳謝。
ところで日本の美術館は写真禁止になっているけれど、海外じゃ別に咎められない。ルーブルじゃモナリザも皆パチパチやっているらしい。私も昔ニューヨークの近代美術館で一杯撮ってきた。今じゃ、ほぼ全員が携帯やスマートフォンを取り出すだろうから一概に解禁賛成ともいえないが。
話はモナリザの模写に戻って、展示されていたのはカラーの油絵で4点、白黒のものが6点くらい。モチーフはモナリザでもアレンジを加えた作品がその他に数点。
●アイルワースのモナリザ
これが今回の目玉作品。
イギリスのアイルワースというところで発見された(らしい)のでアイルワースのモナリザという名前がついている。作者はダ・ヴィンチ本人で、ルーブルにあるモナリザの前に制作したものではないかという学説もあるくらいの一級品。個人所蔵の作品で展覧会に出品されるのは大変珍しいらしい。ある意味ルーブルのモナリザより希少価値かも。
このアイルワースのモナリザ、とっても気に入った。
本家のほうのモナリザは何となく顔が男っぽいし、眉毛がないのも苦手。ミステリアスな魅力があるのは本家のほうで、アイルワースはただの肖像画という気がしなくもないが、どちらか売ってくれるならアイルワースのモナリザを買いたい(^^ゞ
参考までにルーブルにあるダ・ヴィンチの本家モナリザ
他のモナリザもそれぞれよかったというか楽しめた。なかでもエッキングのモナリザという作品はちょっと幽玄な印象があっておもしろかった。残念ながらアイルワース以外は、そんなに有名じゃないのかネットで画像は見つけられず。
ところで模写というものを見たのは初めて。
どんなものなのだろうと興味津々だったが、名曲がいろんな歌手によってカバーバージョンを歌われるのと同じようなものかなという印象。作家によるオリジナリティのつけかたは歌ほどではないから、クラシック音楽の演奏者による違いくらいか。つまりは充分に楽しめる。というよりいろんなバリエーションを味わえてよりいっそう楽しめる。
もともと私は絵に対して「本物にしかない魅力」があるとは思っていない。本物を見ても、雑誌やネットで見ても、その絵から得られる感動やインスピレーションは同じ。違うのはサイズも含めて実物でしか得られないリアリティ、存在感、それとうまく表現できないが絵というモノが経てきた時間の重みーーーなどである。たぶん私はオリジナルと同年代に製作された一級品の贋作なら十二分に満足できるタイプだ。
もっともオリジナルを描いた画家と、それを模写した画家とではクリエイティビティには大差がある。だから両者を同じレベルでは評価しない。しかし作家に対する評価と、できあがった絵を楽しめるかどうかは別次元の話。
まあ一般的には展覧会に出かけて「ホンモノに会えた!」と感激するのが清く正しき市民の姿なんだろうけれど、そんなガラではない私はずらっと並んだ人類の宝とも言うべきモナリザの模写を眺めて、ますます肩の力が抜けてニタニタとほくそ笑んでいたのであった。
また模写とは似て非なるものであるが、どこかの美術館で「世界の名画の贋作展」でもやってくれないかな。
●「裸のモナリザ」レオナルド・ダ・ヴィンチ構想 サライ(帰属)
これはモナリザの変形バージョンとでもいうべき作品。サライというのはダ・ヴィンチの弟子の名前。ダ・ヴィンチの最晩年作品に「洗礼者ヨハネ」という作品があるが、それと何となく顔が似ている。どっちもちょっとカマっぽい(^^ゞ それと、こんなオッパイはないと思うし、肩や首回りはプロレスラー並みに逞しい。なんとも不思議な作風。モナリザにあやかったモナリザ商法という気がしなくもない。
●「フローラ」 カルロ・アントニオ・プロカッチーニと、その子
上の裸のモナリザに対する模写もあって、さらに裸のモナリザからインスピレーションを得て描かれたような作品も何点か展示されていた。これはインスピレーション版のほうでダ・ヴィンチより1世紀ほど後の作品。ここまで変態っぽいと逆に認めたくなる。
●「モナリザ」 作者不詳
模写だけじゃなくて彫刻もあった。
可愛すぎてモナリザといわれなければモナリザには見えないというか、いわれてもモナリザには見えなかったけが。
●「モナリザを描くレオナルド・ダ・ヴィンチ」 チェーザレ・マッカーリ
模写が名曲のカバーなら、これはパロディかな?
ずっと後の19世紀の作品。「神格化されるレオナルド」というコーナーで展示されていた。ちなみにチェーザレ・マッカーリは明治時代にヨーロッパに渡った日本人画家に絵を教えている日本の洋画家の恩人のような人。
というわけで、何十点もの模写やモナリザつながりの絵をたっぷり見られて、なかなか有意義な日だった。メインの模写コーナーには4点プラス白黒1点が展示されていて、その迫力がかなり強烈だったのも印象的。模写にもそっくりにコピーするのと、そうでないのがあるんだろうけれど、もっと盛んになればいいのにと思う。そうすれば、いずれダ・ヴィンチを越えるモナリザが誕生したりしてーーーーと妄想。
あっ! ホンモノのモナリザを見たことなかった(^^ゞ
おしまい
もっともダ・ヴィンチの描いたモナリザはルーブル美術館にあって、もちろんここでは展示されていない。しかしモナリザは今でも画家が練習として模写するように、ダ・ヴィンチの生きていた時代からたくさんの模写がある。この展覧会ではその中でも一流どころを集めたという、なかなか気の利いた企画を催しているのである。
会場を進んでいくとモナリザがズラーッと並んだコーナーにつく。
なぜか思わず愉快で笑ってしまった。
写真はネットの画像検索で拾ってきたもの。
私の盗撮じゃないよ(^^ゞ でも無断借用陳謝。
ところで日本の美術館は写真禁止になっているけれど、海外じゃ別に咎められない。ルーブルじゃモナリザも皆パチパチやっているらしい。私も昔ニューヨークの近代美術館で一杯撮ってきた。今じゃ、ほぼ全員が携帯やスマートフォンを取り出すだろうから一概に解禁賛成ともいえないが。
話はモナリザの模写に戻って、展示されていたのはカラーの油絵で4点、白黒のものが6点くらい。モチーフはモナリザでもアレンジを加えた作品がその他に数点。
●アイルワースのモナリザ
これが今回の目玉作品。
イギリスのアイルワースというところで発見された(らしい)のでアイルワースのモナリザという名前がついている。作者はダ・ヴィンチ本人で、ルーブルにあるモナリザの前に制作したものではないかという学説もあるくらいの一級品。個人所蔵の作品で展覧会に出品されるのは大変珍しいらしい。ある意味ルーブルのモナリザより希少価値かも。
このアイルワースのモナリザ、とっても気に入った。
本家のほうのモナリザは何となく顔が男っぽいし、眉毛がないのも苦手。ミステリアスな魅力があるのは本家のほうで、アイルワースはただの肖像画という気がしなくもないが、どちらか売ってくれるならアイルワースのモナリザを買いたい(^^ゞ
参考までにルーブルにあるダ・ヴィンチの本家モナリザ
他のモナリザもそれぞれよかったというか楽しめた。なかでもエッキングのモナリザという作品はちょっと幽玄な印象があっておもしろかった。残念ながらアイルワース以外は、そんなに有名じゃないのかネットで画像は見つけられず。
ところで模写というものを見たのは初めて。
どんなものなのだろうと興味津々だったが、名曲がいろんな歌手によってカバーバージョンを歌われるのと同じようなものかなという印象。作家によるオリジナリティのつけかたは歌ほどではないから、クラシック音楽の演奏者による違いくらいか。つまりは充分に楽しめる。というよりいろんなバリエーションを味わえてよりいっそう楽しめる。
もともと私は絵に対して「本物にしかない魅力」があるとは思っていない。本物を見ても、雑誌やネットで見ても、その絵から得られる感動やインスピレーションは同じ。違うのはサイズも含めて実物でしか得られないリアリティ、存在感、それとうまく表現できないが絵というモノが経てきた時間の重みーーーなどである。たぶん私はオリジナルと同年代に製作された一級品の贋作なら十二分に満足できるタイプだ。
もっともオリジナルを描いた画家と、それを模写した画家とではクリエイティビティには大差がある。だから両者を同じレベルでは評価しない。しかし作家に対する評価と、できあがった絵を楽しめるかどうかは別次元の話。
まあ一般的には展覧会に出かけて「ホンモノに会えた!」と感激するのが清く正しき市民の姿なんだろうけれど、そんなガラではない私はずらっと並んだ人類の宝とも言うべきモナリザの模写を眺めて、ますます肩の力が抜けてニタニタとほくそ笑んでいたのであった。
また模写とは似て非なるものであるが、どこかの美術館で「世界の名画の贋作展」でもやってくれないかな。
●「裸のモナリザ」レオナルド・ダ・ヴィンチ構想 サライ(帰属)
これはモナリザの変形バージョンとでもいうべき作品。サライというのはダ・ヴィンチの弟子の名前。ダ・ヴィンチの最晩年作品に「洗礼者ヨハネ」という作品があるが、それと何となく顔が似ている。どっちもちょっとカマっぽい(^^ゞ それと、こんなオッパイはないと思うし、肩や首回りはプロレスラー並みに逞しい。なんとも不思議な作風。モナリザにあやかったモナリザ商法という気がしなくもない。
●「フローラ」 カルロ・アントニオ・プロカッチーニと、その子
上の裸のモナリザに対する模写もあって、さらに裸のモナリザからインスピレーションを得て描かれたような作品も何点か展示されていた。これはインスピレーション版のほうでダ・ヴィンチより1世紀ほど後の作品。ここまで変態っぽいと逆に認めたくなる。
●「モナリザ」 作者不詳
模写だけじゃなくて彫刻もあった。
可愛すぎてモナリザといわれなければモナリザには見えないというか、いわれてもモナリザには見えなかったけが。
●「モナリザを描くレオナルド・ダ・ヴィンチ」 チェーザレ・マッカーリ
模写が名曲のカバーなら、これはパロディかな?
ずっと後の19世紀の作品。「神格化されるレオナルド」というコーナーで展示されていた。ちなみにチェーザレ・マッカーリは明治時代にヨーロッパに渡った日本人画家に絵を教えている日本の洋画家の恩人のような人。
というわけで、何十点もの模写やモナリザつながりの絵をたっぷり見られて、なかなか有意義な日だった。メインの模写コーナーには4点プラス白黒1点が展示されていて、その迫力がかなり強烈だったのも印象的。模写にもそっくりにコピーするのと、そうでないのがあるんだろうけれど、もっと盛んになればいいのにと思う。そうすれば、いずれダ・ヴィンチを越えるモナリザが誕生したりしてーーーーと妄想。
あっ! ホンモノのモナリザを見たことなかった(^^ゞ
おしまい
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