2015年01月22日
横浜美術館コレクション展 2014年度 第2期
ホイッスラー展のエントリーの最後に常設展について「続く」と書いちゃったが、ブリヂストン美術館のように常設展に世界の名画が並んでいるわけではない。全体的にはあまりテンションは上がらないものの、いくつかの作品は見応えのあるものだった。
なおタイトルが2014年度になっているのは書き間違いではない。一般に常設展というのはその美術館のコレクションを常に展示している展示室のこと。もちろん展示内容は時々入れ替わるが、美術館が開いていれば必ず見ることができる。常設展の反対語が企画展で、テーマに合わせて集めた(よそから借りてきた)作品を中心に期間を定めて展示する。
横浜美術館の場合は変則的で、常設展ではなく自前のコレクションの中から企画を立てて期間限定で展示する方式のようである。だから名前もコレクション展。年に2〜3回のペースで開かれており、私が見てきたのは昨年の12月から今年の3月までの期間で2014年度ということになる。
過去の記録を見ると2014年度の場合(3月から始まっているものもあるが)
3月1日〜5月25日:企画展
3月1日〜5月21日:コレクション展
8月1日〜11月3日:企画展
12月6日〜2015年3月1日:コレクション展(今回の展示)
という構成。6月と7月は休館していたのかな? どうしてそのような運営になっているのかは知らないが、この美術館に勤めたら休暇はたっぷり取れるかも?
開催されていたコレクション展は3部構成。
最初のコーナーは抽象画だった。そこそこかなと思う作品もあったが、こんなもの買うなんて税金の無駄遣いとしか思えない作品もあった。まあ芸術なんてものは、あまたある作品のほんの一握りだけが価値を持つ。そして芸術は、あまたの無駄なものも一緒に育てないと、その一握りが生まれないというやっかいな性質を持っている。芸術を楽しむとは基本的に道楽で成り立っている行為。無駄遣いした税金が、やがて素晴らしい作品を生むことを期待しましょう。
展示されている抽象画は大きなサイズのものが多かった。中には横幅が数メートルを超えるものも。私は絵は大きければ大きいほどよし、サイズは質の一部だと捉えているところがある。そういう意味では見応えがあった。これで小さければただの落書きだと思う作品もあったが、悪口はこれくらいにしておこう(^^ゞ
次の展示室は光と影がテーマ。
それとは関係ないような作品も多くて、結構強引なテーマ設定だったかな。
「隅田川夜」 小林清親
1881年(明治14年)の作品。去年の正月に浮世絵をたくさん見た。浮世絵の魅力のひとつが日本的な色彩の豊かさだが、こういうモノトーンに挿し色程度のものもなかなか味わい深いと感じる。
「春少女」 奈良美智
奈良美智(よしとも)は、この少女の顔ばかりを描いている人だったと思う。その顔作品は時々見かける。しかし怒っていたり、意地悪そうな表情をしている作品が多く、こういう無表情なものは初めて見た気がする。私には漫画にしか思えずまったく興味が湧かないけれど、彼の作品は美術オークションで1億円以上の価格になるというから、ありがたく拝んでおいた。
ちなみに、このページによると先日に訪れたデ・クーニングの作品が、世界で高価な絵ランキング第3位:159億円となっていてビックリ!
「夢想植物園」 北久美子
調べてみると、こういうタイプの絵を専門に描いている画家のよう。先に訪れたホイッスラーが唯美主義なら彼女は唯爽快主義かな。絵を見て爽快な気分になったのは初めてで、貴重な体験をした。
「幻想的風景」 ダリ
ここに貼り付けた写真じゃこの絵のよさはわからない。
なんてったて3枚合わせて横幅が7メートル以上ある大作。
当日は知らなかったが、このコレクション展は自由に作品を撮影していいみたい。というわけで作品の大きさがわかるページを探してみた。なおリンク先は今回のコレクション展での展示とは限らない。
リンク1:http://www.nminoru.jp/image/nminoru/2010/0612/PIC074053.JPG
リンク2:http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/src/28/05/35/src_28053536.jpg
リンク3:http://hoshino.asablo.jp/blog/img/2013/01/28/266675.jpg
※それぞれのURLのimgより左側が引用した写真のメインページになる。
もっとも絵の大きさがわかったところで、この絵を実感することは難しいかも知れない。しかし、このヘンテコリンな絵をその大きなサイズで眺めていると、何となく異空間がそこに存在しているような不思議な気分になってくるのである。さいわい展示室はガラガラだったし、ダリの絵の前に椅子があったので、しばらくの間じっくりと眺めることができた。
多くの人がダリの顔と、こんな作品は見たことがあると思う。その印象が強烈なせいか、なんとなくゲテモノ芸術家のイメージがつきまとう。私もそうだったし、今まで展覧会でダリの絵を見る機会もあまりなかった。芸術の価値は酔えるかどうかが持論である。ダリの絵はその持論とは違う意味で、大げさに表現すなら幻覚的に酔えた。ダリってなかなかいいじゃん!
ところで展示室の椅子はダリの大きな絵が見渡せるように、作品からかなり離れた位置に置かれている。そこに座って眺めていたわけだが、たまに入ってくる人が皆、なぜか私に遠慮して作品の前に立たないことに途中から気がついた。よほど恍惚の表情をしたアブナイ人に見えたのかなあ?
絵とは別に写真の展示室があった。横浜は日本の商業写真発祥の地ということで、この美術館も写真展示に力を入れているらしい。商業写真というのは広告やパンフレットで使う写真のことかと普通は思う。でも商業写真発祥の地というのは、日本で写真館が最初にできたのが横浜だったということを意味しているようである。
写真は8割以上が被写体の価値だと私は思っている。だから素晴らしい写真を見たとしても、それは広い意味での情報として素晴らしいのであって、絵を見て素晴らしいと思う時のような気持ちにはならない。だからあまり写真作品には興味がなく、写真展というものも今までに3回くらいしか行ったことがない。
というわけでザッと見ただけ。
ある作品は、横浜のあちこちの商店街の雑然とした風景ばかりを集めてきたような20枚ほどの白黒写真。撮っている時は楽しいだろうが、それを見せられてもねえという印象。私がツーリング先で撮ってブログに載せている写真と同じかな(^^ゞ
別の写真家は阪神大震災をテーマにした写真だった。といっても震災直後の生々しい写真ではなく、10年くらい前に撮られた写真。それが「この川岸は仮設住宅の跡地だ」とか「建て替えられた住宅が並んでいるが、まだ更地のところもある」とか報告書に載せるのならともかく、それで写真展する?というようなものばかりで、なんともその意図が理解不能。
もっとも美術館を訪れたのは1月17日。つまり阪神大震災が起きた日で、ご存じのように今年は震災から20年目。この日に唯美主義のホイッスラーを楽しもうとヘラヘラ訪れた美術館で、阪神大震災をテーマにした写真が偶然にせよ展示されていたことは、ちょっと引っかかるものを感じた。もっとまじめに生きよという啓示か、あるいはそのうちやってくるらしい首都圏地震に備えよという戒めか。
おしまい
なおタイトルが2014年度になっているのは書き間違いではない。一般に常設展というのはその美術館のコレクションを常に展示している展示室のこと。もちろん展示内容は時々入れ替わるが、美術館が開いていれば必ず見ることができる。常設展の反対語が企画展で、テーマに合わせて集めた(よそから借りてきた)作品を中心に期間を定めて展示する。
横浜美術館の場合は変則的で、常設展ではなく自前のコレクションの中から企画を立てて期間限定で展示する方式のようである。だから名前もコレクション展。年に2〜3回のペースで開かれており、私が見てきたのは昨年の12月から今年の3月までの期間で2014年度ということになる。
過去の記録を見ると2014年度の場合(3月から始まっているものもあるが)
3月1日〜5月25日:企画展
3月1日〜5月21日:コレクション展
8月1日〜11月3日:企画展
12月6日〜2015年3月1日:コレクション展(今回の展示)
という構成。6月と7月は休館していたのかな? どうしてそのような運営になっているのかは知らないが、この美術館に勤めたら休暇はたっぷり取れるかも?
開催されていたコレクション展は3部構成。
最初のコーナーは抽象画だった。そこそこかなと思う作品もあったが、こんなもの買うなんて税金の無駄遣いとしか思えない作品もあった。まあ芸術なんてものは、あまたある作品のほんの一握りだけが価値を持つ。そして芸術は、あまたの無駄なものも一緒に育てないと、その一握りが生まれないというやっかいな性質を持っている。芸術を楽しむとは基本的に道楽で成り立っている行為。無駄遣いした税金が、やがて素晴らしい作品を生むことを期待しましょう。
展示されている抽象画は大きなサイズのものが多かった。中には横幅が数メートルを超えるものも。私は絵は大きければ大きいほどよし、サイズは質の一部だと捉えているところがある。そういう意味では見応えがあった。これで小さければただの落書きだと思う作品もあったが、悪口はこれくらいにしておこう(^^ゞ
次の展示室は光と影がテーマ。
それとは関係ないような作品も多くて、結構強引なテーマ設定だったかな。
「隅田川夜」 小林清親
1881年(明治14年)の作品。去年の正月に浮世絵をたくさん見た。浮世絵の魅力のひとつが日本的な色彩の豊かさだが、こういうモノトーンに挿し色程度のものもなかなか味わい深いと感じる。
「春少女」 奈良美智
奈良美智(よしとも)は、この少女の顔ばかりを描いている人だったと思う。その顔作品は時々見かける。しかし怒っていたり、意地悪そうな表情をしている作品が多く、こういう無表情なものは初めて見た気がする。私には漫画にしか思えずまったく興味が湧かないけれど、彼の作品は美術オークションで1億円以上の価格になるというから、ありがたく拝んでおいた。
ちなみに、このページによると先日に訪れたデ・クーニングの作品が、世界で高価な絵ランキング第3位:159億円となっていてビックリ!
「夢想植物園」 北久美子
調べてみると、こういうタイプの絵を専門に描いている画家のよう。先に訪れたホイッスラーが唯美主義なら彼女は唯爽快主義かな。絵を見て爽快な気分になったのは初めてで、貴重な体験をした。
「幻想的風景」 ダリ
ここに貼り付けた写真じゃこの絵のよさはわからない。
なんてったて3枚合わせて横幅が7メートル以上ある大作。
当日は知らなかったが、このコレクション展は自由に作品を撮影していいみたい。というわけで作品の大きさがわかるページを探してみた。なおリンク先は今回のコレクション展での展示とは限らない。
リンク1:http://www.nminoru.jp/image/nminoru/2010/0612/PIC074053.JPG
リンク2:http://img.4travel.jp/img/tcs/t/pict/src/28/05/35/src_28053536.jpg
リンク3:http://hoshino.asablo.jp/blog/img/2013/01/28/266675.jpg
※それぞれのURLのimgより左側が引用した写真のメインページになる。
もっとも絵の大きさがわかったところで、この絵を実感することは難しいかも知れない。しかし、このヘンテコリンな絵をその大きなサイズで眺めていると、何となく異空間がそこに存在しているような不思議な気分になってくるのである。さいわい展示室はガラガラだったし、ダリの絵の前に椅子があったので、しばらくの間じっくりと眺めることができた。
多くの人がダリの顔と、こんな作品は見たことがあると思う。その印象が強烈なせいか、なんとなくゲテモノ芸術家のイメージがつきまとう。私もそうだったし、今まで展覧会でダリの絵を見る機会もあまりなかった。芸術の価値は酔えるかどうかが持論である。ダリの絵はその持論とは違う意味で、大げさに表現すなら幻覚的に酔えた。ダリってなかなかいいじゃん!
ところで展示室の椅子はダリの大きな絵が見渡せるように、作品からかなり離れた位置に置かれている。そこに座って眺めていたわけだが、たまに入ってくる人が皆、なぜか私に遠慮して作品の前に立たないことに途中から気がついた。よほど恍惚の表情をしたアブナイ人に見えたのかなあ?
絵とは別に写真の展示室があった。横浜は日本の商業写真発祥の地ということで、この美術館も写真展示に力を入れているらしい。商業写真というのは広告やパンフレットで使う写真のことかと普通は思う。でも商業写真発祥の地というのは、日本で写真館が最初にできたのが横浜だったということを意味しているようである。
写真は8割以上が被写体の価値だと私は思っている。だから素晴らしい写真を見たとしても、それは広い意味での情報として素晴らしいのであって、絵を見て素晴らしいと思う時のような気持ちにはならない。だからあまり写真作品には興味がなく、写真展というものも今までに3回くらいしか行ったことがない。
というわけでザッと見ただけ。
ある作品は、横浜のあちこちの商店街の雑然とした風景ばかりを集めてきたような20枚ほどの白黒写真。撮っている時は楽しいだろうが、それを見せられてもねえという印象。私がツーリング先で撮ってブログに載せている写真と同じかな(^^ゞ
別の写真家は阪神大震災をテーマにした写真だった。といっても震災直後の生々しい写真ではなく、10年くらい前に撮られた写真。それが「この川岸は仮設住宅の跡地だ」とか「建て替えられた住宅が並んでいるが、まだ更地のところもある」とか報告書に載せるのならともかく、それで写真展する?というようなものばかりで、なんともその意図が理解不能。
もっとも美術館を訪れたのは1月17日。つまり阪神大震災が起きた日で、ご存じのように今年は震災から20年目。この日に唯美主義のホイッスラーを楽しもうとヘラヘラ訪れた美術館で、阪神大震災をテーマにした写真が偶然にせよ展示されていたことは、ちょっと引っかかるものを感じた。もっとまじめに生きよという啓示か、あるいはそのうちやってくるらしい首都圏地震に備えよという戒めか。
おしまい
wassho at 08:21│Comments(0)│
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