2015年11月12日
モネ展 「印象、日の出」から「睡蓮」まで

上野の東京都美術館で開催されているモネ展。去年も一昨年もモネの絵はたくさん見ているので実はスルーしていたが、中国人友人のT君がタダ券を手に入れたと誘ってくれたのでラッキーと出かける。彼は普段あまり絵は見に行かないとのことだが、先日パリ旅行でオランジュリー美術館を訪れたらしい。オランジュリーはモネの大きな睡蓮の作品があることで有名。しかし団体旅行でスケジュールに余裕がなかったのか、あまりゆっくり鑑賞できなかったので東京での展覧会に期待しているとのこと。
彼がモネにどんなイメージを抱いていたのかはわからないが、結論から言うとこの展覧会はモネのいかにもモネらしい「ベタ」な作品はあまり多くない。もちろん睡蓮も展示されているが、全体構成の中でそれほどメインじゃない感じ。
この展示会はパリにあるマルモッタン・モネ美術館所蔵の作品だけで構成されている。モネのコレクション数では世界最大級とのこと.しかし、あちこちで選んで作品を借りてくる通常の展覧会と較べれば、単館のコレクションだけではやはり「網羅的」とはならないのかも知れない。しかしおかげであまり見たことのないタイプのモネの絵を見られたし、おそらくマルモッタンに行かないと見ることのできないボリュームで一風変わったモネの晩年のシリーズを見るという体験も貴重だった。
訪れたのは11月1日の日曜日。凄く混雑していて入場制限が実施されているとの噂を聞いていたけれど、この日はそういうことはなかった。でも入場はスムーズでも展示室内はかなりの人数。
本来、この展示会の目玉はサブタイトルにもなっている「印象、日の出」である。最初に貼ったポスターは、その絵が下敷きになっている。「印象、日の出」は印象派の名前の由来となった作品。もっともこの作品が発表された当時は「内面のない、まさに印象だけの絵だね」という否定的な意味だったのだが。
残念ながら東京での「印象、日の出」展示は10月18日まで。サブタイトルに使うほどのメイン作品が期間の途中でなくなってしまうなんて納得がいかないが、なぜかそういう運営がされている。正直にいうと「印象、日の出」がそれほど素晴らしい作品だとはあまり思っていない。しかし印象派の名前の由来となったという「縁起物」として、一度は見ておきたかったのだ。
ヨーロッパ橋、サン=ラザール駅 1877年
「印象、日の出」と入れ替わって展示されていたのがこの作品。昨年のオルセー美術館展で、これとは別のサン=ラザール駅を描いた作品を見たが印象はかなり異なる。こちらのほうが構図のバランスがよくてダイナミックな感じ。でもモネの微妙な色彩やホワーッとした感じが好きなので、貰えるならオルセーのほうがいいな。
ジャン・モネの肖像 1880年
ポンポン付き帽子を被ったミシェル・モネの肖像 1880年
クロード・モネの長男ジャンと次男ミシェルの肖像画。モネは基本的に風景画家なので肖像画は珍しいらしい。そういえば今まで見た記憶はない。でも絵としては普通で、あまり印象には残らなかった。
ルノワール
新聞を読むクロード・モネ 1873年
これはルノワールがモネを描いた作品。いわれてみればルノワールらしい肉付きの絵だが、それほどルノワール・オーラはでていないので、作品紹介のプレートがなければモネの絵だと思ったかも。ところで解説によるとこれは自宅でパイプを吹かしながらリラックスして新聞を読んでいるモネらしい。自宅で帽子被ってコート着る?
ドラクロワ
エトルタの断崖、馬の脚 1837年
モネ以外の作品はルノワールの他にもいくつかあった。モネ自身が集めていた他の画家の作品らしい。あっさりした絵が多くて、あまり興味を持てなかったが、逆にあっさりさで目を引いたのがこのドラクロワの作品。ドラクロワはこってり濃密なイメージを持っているから意外だった。タイトルの馬の脚とは、崖の右側がそういう風に見える景色だから。
トルーヴィルの海辺にて 1870年
ポーラ美術館のモネ展でウジューヌ・ブーダン(画家の名前)の「トルーヴィルの浜」を見て以来、なぜか私はトルーヴィルを描いた作品はすぐに見分けられるようになった。このモネの絵を見るのは初めてだが、遠くから眺めてトルーヴィルに違いないと確信を持って絵に近づき、作品名を見てヤッパリと美術館で小さくガッツポーズ。前世はトルーヴィルに住んでいたのかもしれない(^^ゞ
雪の効果、日没 1875年
ポーラ美術館で見た「雪のアルジャントゥイユ」とタッチは違うが景色に共通するところがあるから、これもアルジャントゥイユ(地名)かなと思う。制作年も同じ1875年。
モネには雪の絵が多いらしい。オルセー美術館展で見た「かささぎ」は雪景色の、つまりは白い世界なのに光が描き分けられていてグッときた。それとくらべればアルジャントゥイユでの雪作品はまあ普通。
霧のヴェトゥイユ 1879年
ヴェトゥイユも地名。アルジャントゥイユがパリの北西約10キロで、ヴェトゥイユが約60キロ。パリ生まれのモネは31歳でアルジャントゥイユ、38歳でヴェトゥイユへ移り住んでいる。距離10キロのアルジャントゥイユはパリの隣だが、60キロ離れたヴェトゥイユは東京駅から直線で大磯くらいの距離。
パソコンで見るとはっきりしない絵に見えるが実物も同じである(^^ゞ でも実物は柔らかな色彩がふわーっと舞っているような印象があって何ともいえない味わいがある。
ヨット、夕暮れの効果
はっきり言ってたいしたことない絵だと思った。ひょっとしたら空をこんな色彩で描き分けるのは当時は誰もやっていなかったのかも知れなが、今の時点で評価すれば、ちょっと絵心があれば誰でも描けるというか描きがちな絵。私が「これは絵になる」と思って撮る写真みたいなもの。撮っている時はいい気分でも後でパソコンで見ると素人丸出しの写真が写っている。展示会で凄い作品ばかりだと息苦しくなる時があるが、巨匠でもこんな普通の絵を描くんだあと思うと少しホッとする。
オランダのチューリップ畑 1886年
花のところは絵の具を水平に荒く塗ってあるだけなのに、風車との組み合わせでそれがチューリップ以外に決して見えないのは、わたしがチューリップ好きでそれなりに知識もあるからである。普通の人はこれをパッと見て何の花をイメージするのかな。
オランダは風車が名物なくらいだから風が強いのだろうか。何となくチューリップが風に押し流されている感じがする。不思議なのは雲なのか単に空の描写かわからないが、それが縦の線で描かれている。だから風が吹き上がっているようなイメージ。
ーーー続く
wassho at 09:04│Comments(0)│
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