2016年05月06日

ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2016(2)

ラ・フォル・ジュルネの人気は高くなっているみたいだ。一昨年〜昨年は4月の終わりに座席の位置を気にしなければ、どのプログラムを聴こうかと選り好みできた。しかし今年は4月最初の時点でAホール以外、つまり中小サイズのホールで私の聴きたい=あまりマニアックでないプログラムのほとんどは売り切れになっていた。今年はピエール=ロラン・エマールや広瀬悦子といったCDを持っているアーティストも参加していて、その演奏を是非聴きたかったのに残念。

というわけで今年聴いたのはAホールのプログラムのみ。ここは5000人規模の超大型ホールで、過去に何度か書いたようにクラシックの演奏会をするには無理があるサイズ。経験上1階の15列目までで聴かないと音量的にフラストレーションが溜まる。49列ある1階の46列目で聴いたことがあるけれど「スピーカーのボリューム回してくれ〜」という気分だった。2階の経験はないがおそらく論外。

クラシックの場合に理想的なのは5〜8列目の真ん中あたり。前に行くほど音は大きいが、ステージは客席より高いので、あまり前だとオーケストラ全体が見えない。また端のほうだとオーケストラは横に広がって演奏しているから音のバランスも悪くなる。しかし身体全体で浴びるように音楽を聴きたいというのが生演奏に出かける優先事項なので、左右は気にせずできるだけ前の座席を買うことに決める。

チケットを買ったのは4月4日。それで購入できたのが次の座席。57や58番はとても隅っこという感じだが、そのプログラムでセンター寄りの座席はもう40列以降にしか残っていなかった。
座席





5月4日に聴いたのはハイドンのオラトリオ「天地創造」。ハイドンを代表する傑作という知識はあっても、あまり聴いた記憶もないしCDも持っていない。でもこのプログラムを選んだのは、この曲がオラトリオで声楽をともなうから。オペラと較べてオラトリオという音楽用語は聞き慣れないかもしれないが、こういう区別になっている。

オペラ
オーケストラの演奏付きで登場人物が歌いながら芝居を演じるもの。
オペラの現代版がミュージカル。もっともミュージカルの歌は肉声じゃなくマイクで拾ってスピーカーで流すのが大きく違う。音楽も生演奏とは限らない。

オラトリオ
まず音楽のテーマがキリスト教関連のものということになっている。
オーケストラと声楽の共演なのはオペラと同じで、その内容や構成も演劇的であるが、オラトリオでは芝居はしない。歌手は普通に立って歌う。



演奏は指揮者がダニエル・ロイス。アクション大きめの振り方。
ちょっと大杉漣に似ているかも。
1ダニエル・ロイス


オーケストラは昨年ベートーベンの英雄交響曲を聴いたシンフォニア・ヴァルソヴィア。
2シンフォニア・ヴァルソヴィア

この写真よりも小編成での演奏だった。ちなみにヴァルソヴィアとはポーランドの首都のワルシャワのフランス語読みらしい。ラ・フォル・ジュルネはフランス発祥のイベントなのでフランス語がよく使われる。


歌手陣は
リュシー・シャルタン (ソプラノ)
この写真は運転免許証的に写りが悪い。もっとキレイな人だった。
3リュシー・シャルタン


ゾエリーヌ・トロイエ (アルト)
ほとんどを合唱団メンバーとして歌い、最後にメイン歌手として前列に登場。天地創造ではそういう演出がお約束らしい。
4ゾエリーヌ・トロイエ


ファビオ・トゥルンピ (テノール)
6ファビオ・トゥルンピ


アンドレ・モルシュ (バリトン)
この写真よりもっと髪が長く髭も濃くて、パッと見はあの「ショーン・ マクアードル川上」に似ている(^^ゞ 声もよくイケメンなんだけれど背がかなり低い。
5アンドレ・モルシュ


なおの高さは、高いものから次の順番となる。

     女性
      ソプラノ
      メゾソプラノ
      アルト

     男性
      テノール
      バリトン
      バス


ローザンヌ声楽アンサンブル
ソロで歌う歌手がいてオーケストラもいるから合唱団はオマケみたいなものかと思っていたが、一番感動したのは合唱の素晴らしさだったかもしれない。
7ローザンヌ声楽アンサンブル




人間って大きな声が出るんだなあというのが最初の驚き。喉仏あたりにある声帯は2センチ弱程の筋肉。楽器と違って喉や口の中で声が共鳴して大きくなるわけでもない。それが小編成とはいえオーケストラの演奏をバックにソロで歌ってかき消されないのだからすごいものだ。ソロの4人に自宅のリビングで歌ってもらったら、どんな音量なんだろうか。

曲や演奏の批評を書くのは私の感性や音楽知識レベルでは難しい。感想として表現するなら演奏を聴いている間ずっと心地よかったということ。天地創造の演奏は約2時間と大変長いのだが、退屈せず居眠りすることもなく音楽に身をゆだねていた感じ。リュシー・シャルタンの歌声は美しく澄み切っていたし、ローザンヌ声楽アンサンブルのコーラスはステージ奥から放物線を描いて私のいる場所に落ちてくるような気がした。

ただし何を歌っているかはさっぱりわからない。会場では歌詞を記したパンフレットをくれるのだがほとんど見ずじまい。それを読むと「はじめに神は天と地を想像された。地は形なく、むなしく、闇が淵のおもてにあった」で始まり「いまや野は爽やかな緑をさしいだして目を楽しませ、花々の優しい装いがその優美な眺めをさらに高めた」とか「喜ばしき輪を描いて大気の中を揺れ動き、健やかな鳥たちの群れが舞う」というような歌詞が延々と続いている。だから天地創造のキリスト教的な叙述だと理解しているだけで充分。歌というより人の声という音色を楽しんだというところ。もし日本語で歌われたら退屈したかも。

でもそう考えるのは少数派のようで、4000人ほど入っていたと思われる観客の多くがいっせいにパンフレットのページをめくるものだから、その時の紙の音は結構大きかった。ステージ両サイドの壁には大きなスクリーンがあって演奏風景を常に映し出しているのだから、そこに歌詞を表示すればいいのにと思う。


それはともかく初めての生オラトリオは大変満足のいく体験だった。オラトリオは宗教音楽だから、全体としては単調なパートの部分が多い。だからCDで聴くとちょっと退屈する。でも生演奏だと音以外の何かが伝わってくるのか、ずいぶんと印象が違って生き生きとした音楽に感じた。次は舞台装置は簡単でいいから、ラ・フォル・ジュルネでオペラもやってくれるとうれしいな。


ーーー続く

※アーティストの写真はホームページからの借用
 http://www.lfj.jp/lfj_2016/performance/artist/artist_name.html

wassho at 23:39│Comments(0) 音楽、オーディオ | イベント、旅行

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔