2016年05月13日
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2016(5)
前のプログラムが終わったのが午後8時頃で、次のプログラムが9時45分の開演。各ホールのプログラムを上手に選べば、あまり間隔を開けることなくなく聴けるのだが、今年はAホールのプログラムしか買えなかったので待ち時間が長い。
とりあえず広場の屋台村でビール。ケバブも買ったが、これが具が少なくパサパサで最悪にマズかった(/o\) 去年食べたのはおいしかったののに。広場を見ると前日はワーゲンのバンの屋台だったところに、この日は違うクルマの屋台が出ている。日によって屋台は入れ替わっているみたいだ。この店でまた食べることがないように、マズいケバブ屋台の写真を撮っておくべきだったかな。
展示ホールを覗いてみる。ほとんど撤収準備状態だったがCD売り場はまだ営業していた。
並べ方は工夫されていて、こちらは各プログラムで演奏された曲を有名アーティストがレコーディングしたCDのコーナー。
こちらは今回のラ・フォル・ジュルネで演奏したアーティストが出しているCD。(内容はプログラムとは関係ない)
何かおもしろそうなCDはないか探し始めたたころで蛍の光が流れ出す。残念、いい暇つぶしだと思ったのに(^^ゞ
ラ・フォル・ジュルネの公式CDというのがあって、これは出演者が以前に発売していたものから、ラ・フォル・ジュルネで演奏した曲を寄せ集めたもの。この日最初のプログラムで聴いたペレスがピアノを弾くファリャの「スペインの庭の夜」も収められているが(オーケストラは別の団体)、第1楽章しか入っていないので購入せず。
それでこの公式CD、売り場の入口で店員が盛んに声を出して売り込んでいた。そのコーナーの裏側に回ると見覚えのある女性の写真のジャケット。去年の公式CDが売れ残っているみたい。来年はここに2015〜2016公式CDと並ぶのだろうか?
展示ホールはEホールに名前が変わったらしい。
さてAホール。座席は前回のプログラムと席番号が1つ違うだけの5列目の右隅。ステージ中央からの距離は真ん中に位置する座席9列目あたりに相当する。
席番号がひとつ違うだけだから前回とステージの見え方は同じ。しかし今回はクラシックの演奏会では滅多に見られないものがステージ奥に鎮座している。
5月5日の最後に聴いたプログラムは
松下功:和太鼓協奏曲「飛天遊」
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
1曲目は和太鼓協奏曲。世の中にそんな協奏曲があったとは。
1980年代の終わり頃だったと思うが、鬼太鼓座(おんでこざ)という和太鼓がブームになったことがあって、テレビなどでもよく取り上げられていた。祭り囃子や盆踊りでの和太鼓には馴染みがあっても、和太鼓がメインの演奏?というのは物珍しくてインパクトが強かったように思う。人の身長より大きな和太鼓も登場したりして迫力満点だった。(記憶が曖昧なので時期は間違えているかもしれない)
一方でドンドコ鳴るだけの太鼓を延々と聴いていておもしろいのかという気持ちもあった。それと太鼓を叩く奏者の肉体美をやたら強調したパフォーマンスとか、何となく感動の押し売りみたいな雰囲気も気に入らなかった。まあそれはテレビ側の演出だったのかもしれないが。
そんなこんなで結局、今日にいたるまで演奏としての和太鼓を聴く機会には恵まれず。今回、ラ・フォル・ジュルネのプログラムに和太鼓を見つけた時は、ここで聴かなければ一生聴かずに終わってしまうかもと速攻でこのプログラムを選んだしだい。
指揮はロベルト・トレヴィーノ。
昨年は彼の指揮でベートーベンの英雄交響曲を聴いた。
オーケストラがシンフォニア・ヴァルソヴィア。
前日にヘンデルの天地創造を聴いたし、去年に英雄交響曲を演奏したのもこのオーケストラ。
和太鼓奏者が林英哲(えいてつ)。
パンフレットによると1984年にニューヨークのカーネギーホールでも叩いたとある。カーネギーホールは日本でいうなら武道館みたいな位置づけで、そこに出演することが一種のステイタス。
プログラムは和太鼓協奏曲の飛天遊から。最初は細かく太鼓を叩いて小さな音から始まり、やがて力一杯の連打。まあビックリするくらいの大音量。室内・屋外という違いはもちろんあるとしても、祭り囃子や盆踊りの和太鼓とはまったく次元が違う。和太鼓ひとつでオーケストラより大きな音が出る。太鼓の大きさはたぶん1メートル前後。想像していたより小さなサイズだったが、その音量は耳で聴くというより全身で感じると表現すべきなくらいのパワフルさ。
演奏は10分少々で、和太鼓のソロはその半分くらい。飽きるということはなかった。叩き方=リズムもいろんな展開があったし、太鼓を叩く場所によって微妙な音色や音程の変化も感じられる。時々発せられる掛け声で気分が高揚するのは、やっぱり日本人の血が騒ぐのかも。
協奏曲的には和太鼓のソロ・和太鼓とオーケストラの掛け合い(交互に演奏する)・一緒に演奏する部分に分かれていた。掛け合いの部分はおもしろかった。和太鼓にこんな可能性があったのかと新発見。できたらベートーヴェンやチャイコフスキーにも和太鼓協奏曲を作曲してもらいたかったと思うくらい。
ただし和太鼓とオーケストラが一緒に演奏するパートはちょっと厳しい。その時はメインの和太鼓ではなく、上に載せた写真にわずかに写っている和太鼓のパーカッションセットのようなものを主に叩く。それでもオーケストラに負けない大音量だから、和太鼓パーカッションとオーケストラの音がお互いに邪魔をする。結果として騒音のようにしか聞こえなかった。和太鼓と協奏曲を演奏するならオーケストラは3組くらい必要かな。そんな公演をどこかで実現して欲しい。
演奏が終わるとものすごい拍手。クラシックの場合、指揮者が舞台の袖に下がってから3回再登場するまで拍手を続けるのがお約束になっている。たまにはたいした演奏でもなく、さっさと終わりたい時もあるのだが。でもこの時はラ・フォル・ジュルネで、かつて聞いたことのない拍手の大きさ。皆さん感動したみたい。私としてもこの日の和太鼓は忘れられない体験となった。クラシックコンサートなので「ブラボー」と叫んでいる人がいたが、この場合は「いよ日本一!」というべきだよね(^^ゞ
2曲目がストラヴィンスキーの春の祭典。よくハルサイと省略して呼ばれる。ストラヴィンスキーは1882年生まれで1971年没=明治15年〜昭和46年。つまり比較的最近の作曲家。だからか一般的なクラシックとはかなりイメージの違う音楽が多い。特にこの春の祭典はちょっと前衛的でヘンテコな曲。全部で14楽章に分かれていて、どれも複雑なリズムと不協和音のオンパレード。オーケストラを使ってどんな音を出せるか実験しているような印象も受ける。
しかし単に前衛的なだけの曲はたくさんあるが、春の祭典は完成度が高いので多くのオーケストラで録音されている人気作品。私も一時よく聴いていた。今でも1年に1度くらいは無性に聴きたくなる中毒性の高い曲でもある。なぜか春の祭典を聴くと猛獣のいる密林あるいはジュラシックパークにいる気分になる。共通するのは自然豊かで危険な場所。チューバーが多く使われているので、それがゾウや恐竜の鳴き声を連想させるのかも。
ホームページには書かれていなかったが、パンフレットにはシンフォニア・ヴァルソヴィアと共に東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の名前があった。ヴァルソヴィアは小編成のオーケストラだから、フルオーケストラを必要とするこの曲の演奏に助っ人が必要だったみたい。ヴァルソヴィア2/3、東京シティ・フィルハーモニック1/3位の混成メンバーでの演奏だった。
演奏はよかったと思う。この曲はたぶんCDで100回以上聴いていると思うが、それと同じような感じで楽しめた。ティンパニーの音量がかなり大きかったのは和太鼓に刺激されたのかも。この曲の演奏は難しいはず。内容的に複雑だし、不協和音が多いから演奏していて「決まった!」というような手応えもないんじゃないかな。オーケストラのメンバーは真剣そのものの表情で演奏していた。
春の祭典は迫力のある大作品。でも気持ちが高ぶるような音楽じゃない。最終楽章も割とあっけなく終わる。初めてこの曲を聴いた人には訳のわからないうちに過ぎた時間だったはず。しかも前曲が盛り上げイノチの和太鼓。このプログラムはラ・フォル・ジュルネ2016としてもファイナル・プログラムとして位置づけられている。だからオオトリとしての盛り上がりが欲しいところだが、ちょっと選曲ミスだったかな。大拍手だった和太鼓と較べて、ごく普通の拍手にとどまったのはオーケストラが少し気の毒だった。
とにもかくにも今年のラ・フォル・ジュルネを聴き終えた。私としてはオラトリオ、ファリャというスペインの作曲家の音楽、そして和太鼓と新しい体験が3つできて満足度高し。来年もまた来られますように。
おしまい
※アーティストの写真はホームページからの借用
http://www.lfj.jp/lfj_2016/performance/artist/artist_name.html
とりあえず広場の屋台村でビール。ケバブも買ったが、これが具が少なくパサパサで最悪にマズかった(/o\) 去年食べたのはおいしかったののに。広場を見ると前日はワーゲンのバンの屋台だったところに、この日は違うクルマの屋台が出ている。日によって屋台は入れ替わっているみたいだ。この店でまた食べることがないように、マズいケバブ屋台の写真を撮っておくべきだったかな。
展示ホールを覗いてみる。ほとんど撤収準備状態だったがCD売り場はまだ営業していた。
並べ方は工夫されていて、こちらは各プログラムで演奏された曲を有名アーティストがレコーディングしたCDのコーナー。
こちらは今回のラ・フォル・ジュルネで演奏したアーティストが出しているCD。(内容はプログラムとは関係ない)
何かおもしろそうなCDはないか探し始めたたころで蛍の光が流れ出す。残念、いい暇つぶしだと思ったのに(^^ゞ
ラ・フォル・ジュルネの公式CDというのがあって、これは出演者が以前に発売していたものから、ラ・フォル・ジュルネで演奏した曲を寄せ集めたもの。この日最初のプログラムで聴いたペレスがピアノを弾くファリャの「スペインの庭の夜」も収められているが(オーケストラは別の団体)、第1楽章しか入っていないので購入せず。
それでこの公式CD、売り場の入口で店員が盛んに声を出して売り込んでいた。そのコーナーの裏側に回ると見覚えのある女性の写真のジャケット。去年の公式CDが売れ残っているみたい。来年はここに2015〜2016公式CDと並ぶのだろうか?
展示ホールはEホールに名前が変わったらしい。
さてAホール。座席は前回のプログラムと席番号が1つ違うだけの5列目の右隅。ステージ中央からの距離は真ん中に位置する座席9列目あたりに相当する。
席番号がひとつ違うだけだから前回とステージの見え方は同じ。しかし今回はクラシックの演奏会では滅多に見られないものがステージ奥に鎮座している。
5月5日の最後に聴いたプログラムは
松下功:和太鼓協奏曲「飛天遊」
ストラヴィンスキー:バレエ「春の祭典」
1曲目は和太鼓協奏曲。世の中にそんな協奏曲があったとは。
1980年代の終わり頃だったと思うが、鬼太鼓座(おんでこざ)という和太鼓がブームになったことがあって、テレビなどでもよく取り上げられていた。祭り囃子や盆踊りでの和太鼓には馴染みがあっても、和太鼓がメインの演奏?というのは物珍しくてインパクトが強かったように思う。人の身長より大きな和太鼓も登場したりして迫力満点だった。(記憶が曖昧なので時期は間違えているかもしれない)
一方でドンドコ鳴るだけの太鼓を延々と聴いていておもしろいのかという気持ちもあった。それと太鼓を叩く奏者の肉体美をやたら強調したパフォーマンスとか、何となく感動の押し売りみたいな雰囲気も気に入らなかった。まあそれはテレビ側の演出だったのかもしれないが。
そんなこんなで結局、今日にいたるまで演奏としての和太鼓を聴く機会には恵まれず。今回、ラ・フォル・ジュルネのプログラムに和太鼓を見つけた時は、ここで聴かなければ一生聴かずに終わってしまうかもと速攻でこのプログラムを選んだしだい。
指揮はロベルト・トレヴィーノ。
昨年は彼の指揮でベートーベンの英雄交響曲を聴いた。
オーケストラがシンフォニア・ヴァルソヴィア。
前日にヘンデルの天地創造を聴いたし、去年に英雄交響曲を演奏したのもこのオーケストラ。
和太鼓奏者が林英哲(えいてつ)。
パンフレットによると1984年にニューヨークのカーネギーホールでも叩いたとある。カーネギーホールは日本でいうなら武道館みたいな位置づけで、そこに出演することが一種のステイタス。
プログラムは和太鼓協奏曲の飛天遊から。最初は細かく太鼓を叩いて小さな音から始まり、やがて力一杯の連打。まあビックリするくらいの大音量。室内・屋外という違いはもちろんあるとしても、祭り囃子や盆踊りの和太鼓とはまったく次元が違う。和太鼓ひとつでオーケストラより大きな音が出る。太鼓の大きさはたぶん1メートル前後。想像していたより小さなサイズだったが、その音量は耳で聴くというより全身で感じると表現すべきなくらいのパワフルさ。
演奏は10分少々で、和太鼓のソロはその半分くらい。飽きるということはなかった。叩き方=リズムもいろんな展開があったし、太鼓を叩く場所によって微妙な音色や音程の変化も感じられる。時々発せられる掛け声で気分が高揚するのは、やっぱり日本人の血が騒ぐのかも。
協奏曲的には和太鼓のソロ・和太鼓とオーケストラの掛け合い(交互に演奏する)・一緒に演奏する部分に分かれていた。掛け合いの部分はおもしろかった。和太鼓にこんな可能性があったのかと新発見。できたらベートーヴェンやチャイコフスキーにも和太鼓協奏曲を作曲してもらいたかったと思うくらい。
ただし和太鼓とオーケストラが一緒に演奏するパートはちょっと厳しい。その時はメインの和太鼓ではなく、上に載せた写真にわずかに写っている和太鼓のパーカッションセットのようなものを主に叩く。それでもオーケストラに負けない大音量だから、和太鼓パーカッションとオーケストラの音がお互いに邪魔をする。結果として騒音のようにしか聞こえなかった。和太鼓と協奏曲を演奏するならオーケストラは3組くらい必要かな。そんな公演をどこかで実現して欲しい。
演奏が終わるとものすごい拍手。クラシックの場合、指揮者が舞台の袖に下がってから3回再登場するまで拍手を続けるのがお約束になっている。たまにはたいした演奏でもなく、さっさと終わりたい時もあるのだが。でもこの時はラ・フォル・ジュルネで、かつて聞いたことのない拍手の大きさ。皆さん感動したみたい。私としてもこの日の和太鼓は忘れられない体験となった。クラシックコンサートなので「ブラボー」と叫んでいる人がいたが、この場合は「いよ日本一!」というべきだよね(^^ゞ
2曲目がストラヴィンスキーの春の祭典。よくハルサイと省略して呼ばれる。ストラヴィンスキーは1882年生まれで1971年没=明治15年〜昭和46年。つまり比較的最近の作曲家。だからか一般的なクラシックとはかなりイメージの違う音楽が多い。特にこの春の祭典はちょっと前衛的でヘンテコな曲。全部で14楽章に分かれていて、どれも複雑なリズムと不協和音のオンパレード。オーケストラを使ってどんな音を出せるか実験しているような印象も受ける。
しかし単に前衛的なだけの曲はたくさんあるが、春の祭典は完成度が高いので多くのオーケストラで録音されている人気作品。私も一時よく聴いていた。今でも1年に1度くらいは無性に聴きたくなる中毒性の高い曲でもある。なぜか春の祭典を聴くと猛獣のいる密林あるいはジュラシックパークにいる気分になる。共通するのは自然豊かで危険な場所。チューバーが多く使われているので、それがゾウや恐竜の鳴き声を連想させるのかも。
ホームページには書かれていなかったが、パンフレットにはシンフォニア・ヴァルソヴィアと共に東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の名前があった。ヴァルソヴィアは小編成のオーケストラだから、フルオーケストラを必要とするこの曲の演奏に助っ人が必要だったみたい。ヴァルソヴィア2/3、東京シティ・フィルハーモニック1/3位の混成メンバーでの演奏だった。
演奏はよかったと思う。この曲はたぶんCDで100回以上聴いていると思うが、それと同じような感じで楽しめた。ティンパニーの音量がかなり大きかったのは和太鼓に刺激されたのかも。この曲の演奏は難しいはず。内容的に複雑だし、不協和音が多いから演奏していて「決まった!」というような手応えもないんじゃないかな。オーケストラのメンバーは真剣そのものの表情で演奏していた。
春の祭典は迫力のある大作品。でも気持ちが高ぶるような音楽じゃない。最終楽章も割とあっけなく終わる。初めてこの曲を聴いた人には訳のわからないうちに過ぎた時間だったはず。しかも前曲が盛り上げイノチの和太鼓。このプログラムはラ・フォル・ジュルネ2016としてもファイナル・プログラムとして位置づけられている。だからオオトリとしての盛り上がりが欲しいところだが、ちょっと選曲ミスだったかな。大拍手だった和太鼓と較べて、ごく普通の拍手にとどまったのはオーケストラが少し気の毒だった。
とにもかくにも今年のラ・フォル・ジュルネを聴き終えた。私としてはオラトリオ、ファリャというスペインの作曲家の音楽、そして和太鼓と新しい体験が3つできて満足度高し。来年もまた来られますように。
おしまい
※アーティストの写真はホームページからの借用
http://www.lfj.jp/lfj_2016/performance/artist/artist_name.html