2016年06月26日

カラヴァッジョ展 日伊国交樹立150周年記念

6月も末になってきたがーーー
5月3日に上野公園に行き、黒田清輝展と共に見てきた展覧会のお話。


カラヴァッジョはミラノ生まれのイタリア人。生まれたのは信長が比叡山を焼き討ちした1571年。フルネームはミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジョ。あのミケランジェロ(ミケランジェロ・ディ・ロドヴィーコ・ブオナローティ・シモーニ)と同じ名前。ミケランジェロってイタリアじゃポピュラーな名前なのかな? それとあのミケランジェロはなぜ名前(ファーストネーム)で呼ばれるんだろう。

それはともかくミケランジェロがルネサンスの巨匠中の巨匠だとすれば、カラヴァッジョはルネサンスに続くバロックと呼ばれた時代を切り開いた、これまた巨匠中の巨匠だといわれている。美術に詳しい人ほどカラヴァッジョの評価が高く、17世紀以降の西洋絵画に革命的影響を与えた人物だといわれている。でもミケランジェロなら誰でも知っていても、カラヴァッジョの世間一般的な知名度はそんなに高くないだろう。私も何となく知っていた程度。

ただし、この展覧会に合わせてテレ東の「美の巨人たち」、NHKの「日曜美術館」の2大美術テレビ番組でカラヴァッジョが紹介されたし、さらにNHKでは彼の生涯を追ったドキュメント番組も製作された。ちなみにNHKはこの展覧会の主催者に名前を連ねている。放送の私物化ですな(^^ゞ そんなこんなで、それなりの予備知識は持って展覧会を訪れたし、テレビで知った「法悦のマグダラのマリア」を見られることにはとても期待していたのである。



「女占い師」  1597年
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タイトルを知らなければ占いをしているようには見えないし、タイトルを知っても女が占い師には見えない。ヨーロッパの人は彼女の服装で占い師だとわかるのかな。ところでこれはまじめに占いをしているのではなく、占いをする振りをして女が男の指輪を盗もうとしているシーンらしい。説明がないとまったく違うイメージでとらえてしまう絵である。


この絵は一番最初に展示されていた。絵そのものにはそれほど興味を引かれなかったのだが、同じ日に見た黒田清輝とまったく違うことが印象的だった。もちろん両者の優劣ということではなく、何が違うかというと見応え。言い換えると満腹感。例えるなら和食と西洋料理の違い。西洋人画家が描く絵のすべてコッテリというわけではまったくないが、カラヴァッジョはバターやクリームをたっぷり使った濃厚ソースのフランス料理といった感じ。


カラヴァッジョが「17世紀以降の西洋絵画に革命的影響を与えた」といわれる由縁は、その写実的表現と光の明暗を描き分ける手法にあるらしい。次の3枚は写実的表現の一例。人物も描かれているが注目するのは手前の植物や果物のほう。

「トカゲに噛まれた少年」  1596〜97年
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ガラスの花瓶に水が入っているーーーこういう描き方は今では見慣れたものだが、当時は腰を抜かすくらいのリアリティと感じたのかも。


「果物籠を持つ少年」  1593〜94年
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「バッカス」  1597〜98年
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カラヴァッジョより400年ほど後に生きていて、さまざまな絵を知っているからその細密さに驚きはしないが、それでもこれらに描かれた果物は見事。それはそれとして3枚ともモデルが男性だが、何となく同性愛的なイメージにも思える。また日本人としてはバッカスのヘアスタイルが文金高島田みたいでユーモラスな印象を受けてしまう。

ちなみにバッカスは酒の神様でワインを勧めるかのようにグラスを差し出している。ブログに貼り付けた写真では小さくてわからないが、実はワインが揺れてグラスの中で波打っているところまで描かれている芸の細かさ。ところで昔のワイングラスは広口だったのか、波打っているところを描くために広口にしたのかどっちなんだろう。



「ナルキッソス」  1599年
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ナルシストの語源でもあるギリシャ神話のナルキッソス。たぐいまれなる美貌だが傲慢な行いを重ねたので、神様から自分しか愛せないという罰を与えられたというか呪いをかけられる。そんな状況になっていると知らないナルキッソスが泉で水を飲もうとした時、水面に映った自分の姿に恋をしてしまう。そして、その場所から離れなくなって餓死したとか、水面の自分にキスしようとして泉に落ちて溺死したというのが神話のストーリー。

なんだけれどカラヴァッジョのこの絵は、
なぜかナルキッソスがたいしてイケメンじゃない(^^ゞ


「マッフェオ・バルベリーニの肖像」  1596年
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肖像画はカラヴァッジョ以外の画家のほうがよかったかな。

この展覧会は51作品が展示されており、そのうち11点がカラヴァッジョの作品。全部で7つのテーマに分けられており、平均すれば各テーマにカラヴァッジョの絵が1〜2点あり、同時代の他の画家のが6点ほどといった構成。


ーーー続く

wassho at 14:36│Comments(0) 美術展 

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