2017年03月29日
草間彌生展 我が永遠の魂
先日、六本木の国立新美術館で開催されている草間彌生(やよい)展を見てきた。彼女は日本のみならず国際的にもモダンアートの女王的な存在。2016年には米国タイム誌の「世界でもっとも影響力のある100人」に選ばれ、また日本では文化勲章も受章している。作品の価格は数千万円クラスだという。
しかしこのブログで何回か書いたと思うが、私はモダンアートが苦手というか趣味に合わないというか。はっきり言って好きじゃないし、モダンアートあるいはモダンアート美術界(業界?)を少し見下しているところもある。でもまあ、たまには毛色の変わったものを眺めて肥やしにしようかと考えたしだい。
草間彌生大先生は御年88歳。もちろんいまだ現役。そして見て通りの奇抜なファッション。こんな人を街中で見かけたら目をそらす(^^ゞ それとマスコミで紹介される時は、だいたいこういう風に目を見開いて睨みつけている写真が使われることが多い。だから、よっぽどブッ飛んだバア様かと思っていたが昨年の文化勲章受章のニュースで
「文化勲章にもまさるもっともっと素晴らしい人間愛と、世界の平和のために
私たちは芸術をやっていくことができればこれにまさる光栄はないと思っております」
「大変感激しております。今後とも草間彌生の生き様を見ていただきたい。私は多くの
人々が私の芸術を見てもらうことに全てを賭けています。どうぞ草間彌生をよろしく
お願いします」
「今後もなお一層、自分の芸術を高めるために努力を惜しむことなく闘ってまいります」
などときわめて真っ当なコメントを述べていたことが意外であり印象的だった。いろんなメディアで草間彌生のことはよく紹介されるけれど、それまではあまり関心を持たず読むこともほとんどなかった。でもこの時から彼女に少し興味を持ちだしていた気もする。
水玉は草間彌生の作品でよく使われるモチーフであり、国立新美術館の木々も水玉でラッピング。私もネクタイは水玉が好きだから実は趣味があったりして。
訪れたのは平日の午後2時頃。チケットを買うのに5分くらいの行列。
展示室に入って最初は小さなコーナーで、この富士山の絵だけが置かれている。背景の水色部分に小さな白いドットが無数に描かれているが、草間彌生はその技法をよく使う。
「生命は限りもなく、宇宙に燃え上がっていく時」 2014年
その小さなコーナーを抜けると、いきなり草間彌生ワールド全開。
ちょっと度肝を抜かれた感じ。
このフロアは写真撮影が認められている。なぜかケータイのみ可能でデジカメは禁止。
巨大な空間とそれに負けていない作品のパワーが伝わるかな。
壁にある絵は草間彌生が2009年から描き続けている「我が永遠の魂」と名付けられた連作。現在作品数は500点を超えているそうで、この展覧会には132点が展示されている。500点を8年で割ると62.5だから、80歳から1週間に1枚の割合で描いていることになる。しかも写真を見てわかるように、これらはかなり大きなサイズの作品。信じられないくらいのバイタリティーである。
フロアに置かれているオブジェは「明日咲く花」または「真夜中に咲く花」という題名がつけられている。これをどう評価していいのかはわからないけれど、理屈抜きに楽しくてエネルギーに満ちあふれているのは確か。私がもう50ウン歳ほど若かったら作品の周りでスキップしながらはしゃいだだろう(^^ゞ
材質は見たところ(触れられないので)FRPのようだ。こういうのはどうやって作るのだろう。着色も筆で塗ったような感じではなかった。製作過程をどこかで紹介して欲しい。これのミニチュア版がグッズとしてあったら買いたかったのだが、残念ながら売っていなかった。洗面所やトイレにでも飾れば運気が向上しそうである。
草間彌生のサイン。全部で7作品あって2010年から2016年にかけての制作。
細かなドットが無数に描かれていたり、近づいて眺めるととても手の込んだ絵だということがわかる。でもそれを別にすれば小さな子供が描くような絵である。この絵を1枚だけ見せられたら「なんじゃこりゃ」で終わっていたと思うが、これだけの数を並べられると、まさに圧巻としかいいようがないのも事実。広いフロアが異空間のように感じられる。
ここにある絵がすべてラファエロだったら、ゴッホだったらーーーそれはそれで壮観だろうが異空間という感じはしないと思う。芸術はその作品に酔えるかどうかが私の判断基準。モダンアートは理解できたり価値を認めたりできても酔えないから関心の対象外だった。でもこの日は草間彌生のファンタジーに酔うことができた。望外の収穫。
「我が永遠の魂」というのが連作としてのネーミングで、それぞれに個別の名前もついている。例えばこの4枚は左上から時計回りに「うれいのごとく くれないの赤きくちびる おしあてて あつきなみだを ながせども あゝ 春はゆく 春はゆく」「私に愛を与えて」「我が悲しみのきわみ」「夕焼けの花壇」といった具合。左上のなんて絵のタイトルというより詩みたい。タイトルを確認してから絵を眺めれば、もっといろいろなことを感じたような気もするが、作品があまりに多すぎてそこまでできなかった。
この展覧会は(作家の生涯にわたる作品を展示する)回顧展だが、展示の仕方が少し変わっていて、現在の草間彌生の作品からスタートする(普通の回顧展は年代順の構成)。この後、彼女の初期の作品から順に見ていくわけだが、それを見終えると出口ではなく、またこのフロアに戻ってくるという順路になっている。
それでこのフロアに立つと、また一から見直したくなるのである。初期や中後期の作品も大変よかったので、結局展覧会を3周も見て回ってしまった。モダンアートなんてとバカにしていたのは誰だ!(^^ゞ
ーーー続く
しかしこのブログで何回か書いたと思うが、私はモダンアートが苦手というか趣味に合わないというか。はっきり言って好きじゃないし、モダンアートあるいはモダンアート美術界(業界?)を少し見下しているところもある。でもまあ、たまには毛色の変わったものを眺めて肥やしにしようかと考えたしだい。
草間彌生大先生は御年88歳。もちろんいまだ現役。そして見て通りの奇抜なファッション。こんな人を街中で見かけたら目をそらす(^^ゞ それとマスコミで紹介される時は、だいたいこういう風に目を見開いて睨みつけている写真が使われることが多い。だから、よっぽどブッ飛んだバア様かと思っていたが昨年の文化勲章受章のニュースで
「文化勲章にもまさるもっともっと素晴らしい人間愛と、世界の平和のために
私たちは芸術をやっていくことができればこれにまさる光栄はないと思っております」
「大変感激しております。今後とも草間彌生の生き様を見ていただきたい。私は多くの
人々が私の芸術を見てもらうことに全てを賭けています。どうぞ草間彌生をよろしく
お願いします」
「今後もなお一層、自分の芸術を高めるために努力を惜しむことなく闘ってまいります」
などときわめて真っ当なコメントを述べていたことが意外であり印象的だった。いろんなメディアで草間彌生のことはよく紹介されるけれど、それまではあまり関心を持たず読むこともほとんどなかった。でもこの時から彼女に少し興味を持ちだしていた気もする。
水玉は草間彌生の作品でよく使われるモチーフであり、国立新美術館の木々も水玉でラッピング。私もネクタイは水玉が好きだから実は趣味があったりして。
訪れたのは平日の午後2時頃。チケットを買うのに5分くらいの行列。
展示室に入って最初は小さなコーナーで、この富士山の絵だけが置かれている。背景の水色部分に小さな白いドットが無数に描かれているが、草間彌生はその技法をよく使う。
「生命は限りもなく、宇宙に燃え上がっていく時」 2014年
その小さなコーナーを抜けると、いきなり草間彌生ワールド全開。
ちょっと度肝を抜かれた感じ。
このフロアは写真撮影が認められている。なぜかケータイのみ可能でデジカメは禁止。
巨大な空間とそれに負けていない作品のパワーが伝わるかな。
壁にある絵は草間彌生が2009年から描き続けている「我が永遠の魂」と名付けられた連作。現在作品数は500点を超えているそうで、この展覧会には132点が展示されている。500点を8年で割ると62.5だから、80歳から1週間に1枚の割合で描いていることになる。しかも写真を見てわかるように、これらはかなり大きなサイズの作品。信じられないくらいのバイタリティーである。
フロアに置かれているオブジェは「明日咲く花」または「真夜中に咲く花」という題名がつけられている。これをどう評価していいのかはわからないけれど、理屈抜きに楽しくてエネルギーに満ちあふれているのは確か。私がもう50ウン歳ほど若かったら作品の周りでスキップしながらはしゃいだだろう(^^ゞ
材質は見たところ(触れられないので)FRPのようだ。こういうのはどうやって作るのだろう。着色も筆で塗ったような感じではなかった。製作過程をどこかで紹介して欲しい。これのミニチュア版がグッズとしてあったら買いたかったのだが、残念ながら売っていなかった。洗面所やトイレにでも飾れば運気が向上しそうである。
草間彌生のサイン。全部で7作品あって2010年から2016年にかけての制作。
細かなドットが無数に描かれていたり、近づいて眺めるととても手の込んだ絵だということがわかる。でもそれを別にすれば小さな子供が描くような絵である。この絵を1枚だけ見せられたら「なんじゃこりゃ」で終わっていたと思うが、これだけの数を並べられると、まさに圧巻としかいいようがないのも事実。広いフロアが異空間のように感じられる。
ここにある絵がすべてラファエロだったら、ゴッホだったらーーーそれはそれで壮観だろうが異空間という感じはしないと思う。芸術はその作品に酔えるかどうかが私の判断基準。モダンアートは理解できたり価値を認めたりできても酔えないから関心の対象外だった。でもこの日は草間彌生のファンタジーに酔うことができた。望外の収穫。
「我が永遠の魂」というのが連作としてのネーミングで、それぞれに個別の名前もついている。例えばこの4枚は左上から時計回りに「うれいのごとく くれないの赤きくちびる おしあてて あつきなみだを ながせども あゝ 春はゆく 春はゆく」「私に愛を与えて」「我が悲しみのきわみ」「夕焼けの花壇」といった具合。左上のなんて絵のタイトルというより詩みたい。タイトルを確認してから絵を眺めれば、もっといろいろなことを感じたような気もするが、作品があまりに多すぎてそこまでできなかった。
この展覧会は(作家の生涯にわたる作品を展示する)回顧展だが、展示の仕方が少し変わっていて、現在の草間彌生の作品からスタートする(普通の回顧展は年代順の構成)。この後、彼女の初期の作品から順に見ていくわけだが、それを見終えると出口ではなく、またこのフロアに戻ってくるという順路になっている。
それでこのフロアに立つと、また一から見直したくなるのである。初期や中後期の作品も大変よかったので、結局展覧会を3周も見て回ってしまった。モダンアートなんてとバカにしていたのは誰だ!(^^ゞ
ーーー続く
wassho at 23:42│Comments(0)│
│美術展