2017年10月20日

暗闇演劇「イヤホン」 その2

くらやみ

劇場のキャパは200名くらい。一般席はほぼ満席、後方に3列分ほど設けられた招待席は半分くらい埋まっていたように思う。


さて暗闇演劇「イヤホン」がどんな芝居だったかを説明するのはちょっと難しい。Y君から教えてもらってホームページを見た時はアングラっぽい芝居かなと考えていた。でも実際のストーリーは難解でも前衛的でもない。ただし演出の仕方が実験的。

ストーリーをかいつまんでいうと

  劇場に役者や観客やその他10名くらいが人質として閉じ込められる。
  犯人から拳銃でロシアンルーレットをするように強要される。
  その過程でいろんな人間模様がある。

というもの。
また犯人とやりとりしている警察の交渉人が、外部から人質と連絡を取り合うという設定。


演出の仕方が実験的というのは暗闇演劇の名前通り、約2時間の上演中に舞台照明がついているのは全部で5分くらいだから。単に照明が落ちているだけでなく、出入り口には暗幕を張り、非常誘導灯なども隠しているようで館内は正真正銘の暗闇。

開演と同時に暗くなり、しばらくすれば目が慣れるだろうと思っていたが、光ゼロの空間なので本当に何も見えない。自分が目を開いているのか閉じているのかもわからないくらいである。目を閉じると暗闇の濃淡のようなものを感じることがあるが、目を開いていてもそういうものが見えるという体験もした。

  とにかく人生で一番瞳孔が全開になった2時間


というわけで演技はまったく見えない。実はメガネを忘れて「しまった!」と思っていたのだが、まったく必要なかった(^^ゞ 不思議なのはたまに舞台照明がついた時、役者がその場面に応じた立ち位置にいたこと。直前まで暗視ゴーグルでもつけていたのか?

暗視ゴーグルといえば芝居が始まる前に「館内は暗闇だが係員が暗視ゴーグルで監視している。気分が悪くなったりした人は手を挙げてくれれば係員が誘導する」というような説明があった。その時はこんな光なしの暗闇になるとは知らなかったので「本当にそんな装置を使っているの? 暗くなってイチャついたり、痴漢防止の牽制じゃないの?」と思っていた。しかしでも芝居の途中で2〜3名が館外へ連れ出されていたから、やはり監視していたようだ。



もうひとつの演出がイヤホン。一般客は無線レシーバー付きのイヤホンを渡され、招待席には有線のイヤホンが座席に備え付けられていた。このイヤホンから聞こえるのは警察の交渉人のセリフ。イヤホンの没入感を演出に利用しようという試み。

しかし交渉人とやりとりする人質のセリフは舞台から聞こえる、つまりイヤホンのセリフだけで完結していないから企画倒れな気がする。だいたい暗闇で姿が見えないから役者のセリフとイヤホンで聴いているセリフも耳への入り方は大差ない。


前回のエントリーで書いた「大変久し振りに小劇場での芝居を観た、というより聴いてきた」というのはこういう内容だったから。芝居というよりラジオドラマのライブみたいなもので久し振りに芝居を「観る」という期待は叶わなかったものの、光ゼロの空間に2時間いるという大変貴重な体験ができた。これを契機にたまには芝居を観ようかと思っている。


なお最後に役者の舞台挨拶があった。しかし登場人物より人数が少ない。暗闇を活かし声色を変えて一人二役で登場人物の水増しをするという演出?も行われていたようである。


おしまい

wassho at 08:03│Comments(0) 映画、ドラマ、文学 

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