2018年05月05日
ラ・フォル・ジュルネTOKYO 2018 その2 アンヌ・ケフェレック
最初に聴く公演はB7ホール。
面積は1400平米で約800名収容、天井高が7メートル。音楽専用ではなく多目的ホールなので、ステージにピアノがなければ講演会でも始まるような雰囲気。
座席は6列目の右寄り。ピアニストの顔は見えるが手は見えない位置。ステージの奥に並べられているのは音の響きをよくするためのパネル。
【公演番号:M121】
ヘンデル:「調子のよい鍛冶屋」ホ長調 HWV430(ハープシコード組曲第5番から)
スカルラッティ:ソナタ ホ長調 K.531
スカルラッティ:ソナタ ロ短調 K.27
スカルラッティ:ソナタ ニ長調 K.145
スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K.32
ヘンデル(ケンプ編):メヌエット HWV434(ハープシコード組曲第1番から)
J.S.バッハ(ヘス編):コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
ヘンデル:シャコンヌHWV435(ハープシコード組曲第2巻から)
アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
※アーティストの写真は公式ページから借用
このプログラムを選んだのはケフェレックの演奏を聴きたかったから、そしてスカルラッティが聴きたかったから。理由は単純で彼女がスカルラッティを弾いているCDを持っていて気に入っているから。昨年も公演があったがチケットを取れなかった。
ドメニコ・スカルラッティは1685年生まれだから、5代将軍の徳川綱吉が生類憐れみの令を発した年。教科書に載るほど有名ではないものの、バッハやヘンデルと並んでバロック時代の代表的作曲家とされている。ほとんどがチェンバロ作品で555曲も残している。ちなみにこの時代に鍵盤楽器といえばチェンバロ(=ハープシコード=クラヴサン)でありピアノが台頭するのはもう少し後になる。
このスカルラッティ、バロックの大家ではあるが、そのピアノ曲(当時のチェンバロ作品は現代ではほとんどピアノで演奏される)はまったくバロックぽくないのである。じゃバロックとはどんな曲でスカルラッティはどうなんだと問われると、それに返答するだけの感性と文章力がないのが残念。あえていえばバッハのピアノ曲が単調なのに対して、スカルラッティはもっと情緒的。だからバロックよりモダンに感じる。バロック音楽=バッハというイメージを持っている人が多いから、スカルラッティを聴いてこれはバロック音楽だと思う人は少ないはず。あくまで勝手な推測だけれど。
アンヌ・ケフェレックは御年70歳のフランスのピアニスト。レパートリーは広くサティの作品も多くレコーディングしている。実際に目にしてみると、小柄でとても上品なおばあさんというイメージ。だから写真は10年ほど昔に撮ったものかな(^^ゞ
演奏はヘンデルからスタート。こちらは教科書にも載っている作曲家。しかし意外と耳にする機会は少ない。タワーレコードでヘンデルと検索すると5179件がヒットするがバッハだと2万2000である。私もCDを数枚しか持っていない。それにピアノ曲のイメージがあまりない。
でもいい曲だった。どうよかったかは説明できないとしても。
続くスカルラッティのピアノソナタは、当たり前ながらCDで聴いている通りの演奏。スカルラッティの良さは控えめな美曲というところだと思っている。それに加えて今回は生で聴くピアノの音が素晴らしかった。B7ホールって、こんなにいい音がしたっけとびっくり。オーディオで聴くピアノはどこか音が固い。だから長く聴くと少し耳が疲れてしまう。でもこの日に聴けたピアノは厚みのある柔軟な響きでずっと聴き続けられそう。それと普段と違って集中して聴いているので、右手と左手のパートがよく聴き分けられる。そのせいか音楽も音も立体的に感じた。まあとにかく美曲に美音で至福の時間を過ごす。
スカルラッティは美曲揃いだが、難点はどの曲も似通っていること。でも5曲目に弾いたソナタ・ニ短調K32はスローで哀愁が漂ってくる少しタイプの違う曲。そしてこの曲でケフェレックのメロースイッチが入ったのか、続くヘンデルのメヌエットも濃厚で情感たっぷり。なぜかテレサ・テンを思い出したのが自分でも不思議。
メヌエットを弾き終わった後、次の曲に移るまでにケフェレックは少し間を置いた。気のせいかもしれないが哀愁ワールドに入り込んだ気持ちを切り替えているように思えた。
そして演奏したのがバッハ。これはガチガチのバロック。最後がヘンデルのシャコンヌ。たぶん初めて聴いたがいい感じ。アップテンポな曲で、ケフェレックの演奏にはグルーヴ感が感じられた。グルーヴ感はクラシックで使われることのない言葉だが、私はけっこう重視している。
さてスカルラッティを聴きに来たはずが、最大の収穫はヘンデルのピアノ曲がよかったことである。こういう発見があるのもラ・フォル・ジュルネのいいところ。そのうちCDを探すことになるだろう。
ケフェレックはアンコールも演奏してくれた。彼女が発する曲名の声は聞こえたが言葉を聴き取れず。しっとりした曲だった。ところでアンコール曲はプログラムリストには載っていないから、コンサート終了後にロビーに曲名が張り出される。でも私がホールから出た時にはまだ掲示されていなかった。建前はともかくアンコールで何を演奏するかは事前に決まっているのだから、もっと手早く対応してくれればいいのに。
なお文章に出てくるメヌエットやシャコンヌは、ワルツと同じように何拍子かという基準で分けた曲の分類。ソナタは起承転結みたいな構成を持ったパートが含まれている曲の総称。でもこんな音楽用語は知らなくても私のブログを読む分には差し支えないから、気にしなくて大丈夫←本当は説明するのが面倒(^^ゞ
ーーー続く
面積は1400平米で約800名収容、天井高が7メートル。音楽専用ではなく多目的ホールなので、ステージにピアノがなければ講演会でも始まるような雰囲気。
座席は6列目の右寄り。ピアニストの顔は見えるが手は見えない位置。ステージの奥に並べられているのは音の響きをよくするためのパネル。
【公演番号:M121】
ヘンデル:「調子のよい鍛冶屋」ホ長調 HWV430(ハープシコード組曲第5番から)
スカルラッティ:ソナタ ホ長調 K.531
スカルラッティ:ソナタ ロ短調 K.27
スカルラッティ:ソナタ ニ長調 K.145
スカルラッティ:ソナタ ニ短調 K.32
ヘンデル(ケンプ編):メヌエット HWV434(ハープシコード組曲第1番から)
J.S.バッハ(ヘス編):コラール「主よ、人の望みの喜びよ」
ヘンデル:シャコンヌHWV435(ハープシコード組曲第2巻から)
アンヌ・ケフェレック(ピアノ)
※アーティストの写真は公式ページから借用
このプログラムを選んだのはケフェレックの演奏を聴きたかったから、そしてスカルラッティが聴きたかったから。理由は単純で彼女がスカルラッティを弾いているCDを持っていて気に入っているから。昨年も公演があったがチケットを取れなかった。
ドメニコ・スカルラッティは1685年生まれだから、5代将軍の徳川綱吉が生類憐れみの令を発した年。教科書に載るほど有名ではないものの、バッハやヘンデルと並んでバロック時代の代表的作曲家とされている。ほとんどがチェンバロ作品で555曲も残している。ちなみにこの時代に鍵盤楽器といえばチェンバロ(=ハープシコード=クラヴサン)でありピアノが台頭するのはもう少し後になる。
このスカルラッティ、バロックの大家ではあるが、そのピアノ曲(当時のチェンバロ作品は現代ではほとんどピアノで演奏される)はまったくバロックぽくないのである。じゃバロックとはどんな曲でスカルラッティはどうなんだと問われると、それに返答するだけの感性と文章力がないのが残念。あえていえばバッハのピアノ曲が単調なのに対して、スカルラッティはもっと情緒的。だからバロックよりモダンに感じる。バロック音楽=バッハというイメージを持っている人が多いから、スカルラッティを聴いてこれはバロック音楽だと思う人は少ないはず。あくまで勝手な推測だけれど。
アンヌ・ケフェレックは御年70歳のフランスのピアニスト。レパートリーは広くサティの作品も多くレコーディングしている。実際に目にしてみると、小柄でとても上品なおばあさんというイメージ。だから写真は10年ほど昔に撮ったものかな(^^ゞ
演奏はヘンデルからスタート。こちらは教科書にも載っている作曲家。しかし意外と耳にする機会は少ない。タワーレコードでヘンデルと検索すると5179件がヒットするがバッハだと2万2000である。私もCDを数枚しか持っていない。それにピアノ曲のイメージがあまりない。
でもいい曲だった。どうよかったかは説明できないとしても。
続くスカルラッティのピアノソナタは、当たり前ながらCDで聴いている通りの演奏。スカルラッティの良さは控えめな美曲というところだと思っている。それに加えて今回は生で聴くピアノの音が素晴らしかった。B7ホールって、こんなにいい音がしたっけとびっくり。オーディオで聴くピアノはどこか音が固い。だから長く聴くと少し耳が疲れてしまう。でもこの日に聴けたピアノは厚みのある柔軟な響きでずっと聴き続けられそう。それと普段と違って集中して聴いているので、右手と左手のパートがよく聴き分けられる。そのせいか音楽も音も立体的に感じた。まあとにかく美曲に美音で至福の時間を過ごす。
スカルラッティは美曲揃いだが、難点はどの曲も似通っていること。でも5曲目に弾いたソナタ・ニ短調K32はスローで哀愁が漂ってくる少しタイプの違う曲。そしてこの曲でケフェレックのメロースイッチが入ったのか、続くヘンデルのメヌエットも濃厚で情感たっぷり。なぜかテレサ・テンを思い出したのが自分でも不思議。
メヌエットを弾き終わった後、次の曲に移るまでにケフェレックは少し間を置いた。気のせいかもしれないが哀愁ワールドに入り込んだ気持ちを切り替えているように思えた。
そして演奏したのがバッハ。これはガチガチのバロック。最後がヘンデルのシャコンヌ。たぶん初めて聴いたがいい感じ。アップテンポな曲で、ケフェレックの演奏にはグルーヴ感が感じられた。グルーヴ感はクラシックで使われることのない言葉だが、私はけっこう重視している。
さてスカルラッティを聴きに来たはずが、最大の収穫はヘンデルのピアノ曲がよかったことである。こういう発見があるのもラ・フォル・ジュルネのいいところ。そのうちCDを探すことになるだろう。
ケフェレックはアンコールも演奏してくれた。彼女が発する曲名の声は聞こえたが言葉を聴き取れず。しっとりした曲だった。ところでアンコール曲はプログラムリストには載っていないから、コンサート終了後にロビーに曲名が張り出される。でも私がホールから出た時にはまだ掲示されていなかった。建前はともかくアンコールで何を演奏するかは事前に決まっているのだから、もっと手早く対応してくれればいいのに。
なお文章に出てくるメヌエットやシャコンヌは、ワルツと同じように何拍子かという基準で分けた曲の分類。ソナタは起承転結みたいな構成を持ったパートが含まれている曲の総称。でもこんな音楽用語は知らなくても私のブログを読む分には差し支えないから、気にしなくて大丈夫←本当は説明するのが面倒(^^ゞ
ーーー続く