2018年06月22日
ルドン 秘密の花園 その３
「ドムシー男爵の食堂装飾」の次は「『黒』に棲まう動植物」というコーナー。タイトルに黒と入っているのは、ここにあるのが版画でモノクロ作品だからだろう。
それでこういうタイプの作品が並ぶ。
「『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」 1883年
「『起源』 ��. 不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」 1883年
これらが描かれたのは2つ前のエントリーで紹介した「植物人間」「キャリバン」「ゴヤ頌 ��. 沼の花、悲しげな人間の顔」と同じ時期だから、この頃のルドンはこういう作風だったということ。展示作品ではないが、これなんかはけっこうヤバイ感じ。なぜ彼がこういう絵を描いたのかは調べればわかるだろうが、このタイプには興味がないので調べていない。でも展覧会では、せっかく金を払っているのだからとじっくり眺めてきた。それであれこれ妄想するとーーー
まず
ルドンは印象派時代の画家である。その時代に印象派とはまったくベクトルの異なることをするのだからルドンは変わり者。こんな絵は好きじゃないけれど、これは褒め言葉のつもり。
そして
この時期のルドンを知った上で前回に紹介した「グラン・ブーケ」を観ると、少し印象が変わってくるのが面白い。あの美しい絵のどこかに、これらの絵と同じような薄気味悪さあるいは妖気のようなものが、わずかに含まれているように感じるのである。言い方を変えると花なのに話したり動き出しそうな感じ。考え過ぎかな？
次のコーナーは「蝶の夢、草花の無意識、水の眠り」。ここでルドンの作風は一変する。ちょっと一筋縄では行かない雰囲気は残しながらも陰から陽への大変身。
「蝶と花」 1910〜1914年
「小舟」 1900年
前々回のエントリーで紹介した作品でも、光り輝いているものをルドンはいつもこういう線を使って描く。いってみれば子供の絵と同じ表現方法。案外テクニックはなかったのかも？
「目を閉じて」 1900年以降
「ステンドグラス」 1907年頃
ステンドグラスは色ガラスを組み合わせて作るもの。どうやったってこんなステンドグラスは作れない。なぜこれがステンドグラスというタイトルなのかナゾ
「神秘」 1910年頃
「蝶」 1910年頃
次は「再現と想起という二つの岸の合流にやってきた花ばな」という難解なタイトルのコーナー。これはルドン自身が花について語った言葉から引用されているらしい。展示されていたのは花瓶に活けられた花の静物画。
「日本風の花瓶」 1908年
印象派の時代にフランスでは浮世絵を中心にジャポネスクブームがあった。つまり日本的な趣味がもてはやされた。ルドンは印象派とは真逆だから、世間とはかけ離れた孤高の人かと思っていたが、ちゃかり流行には乗っていたのね。
それはともかく、これはまるで花が宙に舞っているように感じる。グラン・ブーケの妖しさとは方向性は違うが、まるで生きている・動くもののようにように植物を描くのがルドン流。とはいっても展示されていた他の作品はそうではなかったけれど。
「青い花瓶の花」 1912〜1914年頃
「野の花のいけられた花瓶」 1910年頃
これは珍しく写実的で立体感のある作風。約90作品が展示されていた今回の展覧会で奥行きを感じさせるのは、これを含めて数点しかなかった。
グラン・ブーケを初めて見た時は、その美しさに惚れ惚れした。今回はその中にかすかな「妖しさ」を感じられたことが収穫。おそらくそれはルドンがモノクロの薄気味悪い絵を描いて習得した何かが反映されているのだろう。そしてルドンはグラン・ブーケだけの一発屋という認識も完全に覆った。少し捉えどころの難しい絵が多いが、それも想像力を膨らませられて楽しめる。それと背景に青を上手く配置したものが多く、写真を撮るなら青空の下に限ると思っている私と趣味が合う(^^ゞ
おしまい
それでこういうタイプの作品が並ぶ。
「『起源』II. おそらく花の中に最初の視覚が試みられた」 1883年
「『起源』 ��. 不恰好なポリープは薄笑いを浮かべた醜い一つ目巨人のように岸辺を漂っていた」 1883年
これらが描かれたのは2つ前のエントリーで紹介した「植物人間」「キャリバン」「ゴヤ頌 ��. 沼の花、悲しげな人間の顔」と同じ時期だから、この頃のルドンはこういう作風だったということ。展示作品ではないが、これなんかはけっこうヤバイ感じ。なぜ彼がこういう絵を描いたのかは調べればわかるだろうが、このタイプには興味がないので調べていない。でも展覧会では、せっかく金を払っているのだからとじっくり眺めてきた。それであれこれ妄想するとーーー
まず
ルドンは印象派時代の画家である。その時代に印象派とはまったくベクトルの異なることをするのだからルドンは変わり者。こんな絵は好きじゃないけれど、これは褒め言葉のつもり。
そして
この時期のルドンを知った上で前回に紹介した「グラン・ブーケ」を観ると、少し印象が変わってくるのが面白い。あの美しい絵のどこかに、これらの絵と同じような薄気味悪さあるいは妖気のようなものが、わずかに含まれているように感じるのである。言い方を変えると花なのに話したり動き出しそうな感じ。考え過ぎかな？
次のコーナーは「蝶の夢、草花の無意識、水の眠り」。ここでルドンの作風は一変する。ちょっと一筋縄では行かない雰囲気は残しながらも陰から陽への大変身。
「蝶と花」 1910〜1914年
「小舟」 1900年
前々回のエントリーで紹介した作品でも、光り輝いているものをルドンはいつもこういう線を使って描く。いってみれば子供の絵と同じ表現方法。案外テクニックはなかったのかも？
「目を閉じて」 1900年以降
「ステンドグラス」 1907年頃
ステンドグラスは色ガラスを組み合わせて作るもの。どうやったってこんなステンドグラスは作れない。なぜこれがステンドグラスというタイトルなのかナゾ
「神秘」 1910年頃
「蝶」 1910年頃
次は「再現と想起という二つの岸の合流にやってきた花ばな」という難解なタイトルのコーナー。これはルドン自身が花について語った言葉から引用されているらしい。展示されていたのは花瓶に活けられた花の静物画。
「日本風の花瓶」 1908年
印象派の時代にフランスでは浮世絵を中心にジャポネスクブームがあった。つまり日本的な趣味がもてはやされた。ルドンは印象派とは真逆だから、世間とはかけ離れた孤高の人かと思っていたが、ちゃかり流行には乗っていたのね。
それはともかく、これはまるで花が宙に舞っているように感じる。グラン・ブーケの妖しさとは方向性は違うが、まるで生きている・動くもののようにように植物を描くのがルドン流。とはいっても展示されていた他の作品はそうではなかったけれど。
「青い花瓶の花」 1912〜1914年頃
「野の花のいけられた花瓶」 1910年頃
これは珍しく写実的で立体感のある作風。約90作品が展示されていた今回の展覧会で奥行きを感じさせるのは、これを含めて数点しかなかった。
グラン・ブーケを初めて見た時は、その美しさに惚れ惚れした。今回はその中にかすかな「妖しさ」を感じられたことが収穫。おそらくそれはルドンがモノクロの薄気味悪い絵を描いて習得した何かが反映されているのだろう。そしてルドンはグラン・ブーケだけの一発屋という認識も完全に覆った。少し捉えどころの難しい絵が多いが、それも想像力を膨らませられて楽しめる。それと背景に青を上手く配置したものが多く、写真を撮るなら青空の下に限ると思っている私と趣味が合う(^^ゞ
おしまい
wassho at 07:15│Comments(0)│
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