2019年05月03日
ラ・フォル・ジュルネTOKYO2019 エルメス弦楽四重奏団
もうすっかり私にとってゴールデンウィークの定番になった、クラシックの音楽フェスであるラ・フォル・ジュルネ。通いだして今年で6年目。
ラ・フォル・ジュルの概要について毎回説明してきたけれど、もう新たに書くこともないので今年は省略。知りたい人は公式ホームページの「ラ・フォル・ジュルについて」を読むか、あるいはこのブログの「ラ・フォル・ジュルのタグ」をクリックして過去のエントリーの中から探してちょうだい。
今年は5月3日に5公演、5月5日に1公演のチケットを手配した。本当は1日にまとめたいのだが、そう都合よく聴きたい公演がタイムテーブルに並んではくれない。また本日の2公演目と3公演目には2時間半ほど空き時間があるので、近くの三菱一号館美術館で展覧会を見てきた。このラ・フォル・ジュルネ+αな過ごし方もいつものパターン。
有楽町駅の高架の向こうに見えるガラスの船みたいなのが会場の東京国際フォーラム。
東京国際フォーラムとビックカメラ有楽町店は向かい合って建っている。
時刻は午前10時ちょっと前。これが最初の公演時間帯で、6つの公演のうち5つはもう始まっているから広場にいる人の数は少ない。
今年のテーマは「CARNETS DE VOYAGE」、日本語では「ボヤージュ 旅から生まれた音楽(ものがたり)」と設定されている。ポスターだと日本語がちょっと小さい。ちなみにラ・フォル・ジュルネはフランス発祥だから、ところどこフランス語が出てくる。イベント名であるラ・フォル・ジュルネ:La folle journeeは熱狂の日と訳されていて、英語に直訳するとThe crazy day。
屋台村もだいたいいつもと同じ顔ぶれ。
去年に初出店だった「俺のフレンチ」の屋台は今年いなかった。
広場の真ん中あたりから有楽町側の入り口を見たところ。
こんな写真も毎年ワンパターンだけれど。
最初に聴く公演はB5ホール。
B5ホールは音楽専用ではなく多目的イベントスペース。長方形のホールの壁際センターにステージがあって、それを取り囲むような椅子の配置。最後列の座席しか取れなかったが、それでも6列目だし、このホールは狭いから音量的には大丈夫。
【公演番号131】
バルトーク:弦楽四重奏曲第4番
ドヴォルザーク:弦楽四重奏曲第12番 ヘ長調 op.96 「アメリカ」
エルメス弦楽四重奏団
エルメス弦楽四重奏団はわりと最近にCDを買ったので選んでみた。10年ほど前にフランスのリヨン国立音楽院の学生で結成されたユニットらしい。メンバーは写真左から
ヴィオラ:ユン=シン・チャン(Yung-Hsin Chang)
第1ヴァイオリン:オメール・ブシェーズ(Omer Bouchez)
第2ヴァイオリン:エリーゼ・リュウ(Elise Liu)
チェロ:アンソニー・コンドウ(Anthony Kondo)
アンソニー・コンドウは顔つきと名前からして日本人とフランス人のハーフなのかな。エルメス弦楽四重奏団についてはネットで調べても、先ほど書いた結成のいきさつと、その後に様々なコンクールで賞を取ったことくらいしか情報が出てこない。ちなみにCDは8枚ほど出ている。
それにしてもエルメス!である。しかもフランスの楽団。スペルもあのファッションブランドのエルメスと同じHermes。エルメスはギリシャ神話の神の名前ではあるが、ブランドのエルメスと商標関係で揉めなかったのかなといらぬお節介。もっとも10年以上活動を続けているということはOKなんだろう。いずれにしてもインパクト抜群のネーミングである。
さて席についてメガネを持ってくるのを忘れたことに気がついた。もちろん音楽は耳で聴くものであるが、コンサートは目でも楽しむものである。また過去にも書いてきたようにクラシックの場合、目で見ると音楽がよくわかるからメガネは必須。ナンテコッタイ(/o\)
最初はバルトーク。ちょっと前衛的で苦手な部類の作曲家。この弦楽四重奏曲第4番はおそらく初めて聴く。やはり案の定の展開で始まった。でもCDじゃなくて目の前で演奏されていると素直についていけるから不思議。メガネがないからよく見えないのだけれど。
音はとても良かった。弦から出た音が弦楽器の胴体で共鳴して音が大きくなっていることが感じ取れる。オーディオで聴く弦楽四重奏と違って音にとても厚みがある。この実体感のようなものを味わいたくてコンサートに来ているわけだから大満足。
びっくりしたのが第4楽章。4つの楽器全てで、最初から最後までピチカート奏法なのである。弦楽器を弓で擦るのじゃなくて指で弾くのがピチカート。よくある手法だが、あくまでもアクセント的に用いられるのが普通。ボン、ボン、ボンと静かに背景音的に鳴る感じ。しかしバルトークの第4楽章はピチカートだけでアンサンブルが成り立っている。また普通のピチカートの場合、それはごくわずかな小節だけだから、弓は手に持ったまま指で弦を弾く。バルトークの第4楽章で弓は使わないので、バイオリンもビオラもチェロも奏者は右手には何も持っていない。こんな光景は初めて見た!
そしてそのピチカートの音が大きい。そこで疑問。指じゃなくてピックのようなようなものを使っているんじゃないか? ーーーどうしてこんな大事な時にメガネがない(>_<) 残念ながら肉眼では手元の細かいところまではよく見えず。ステージ手前までダッシュしたい気持ちだった。でもまあ何となくではあるが指しか使っていないように思えた。演奏はけっこう指先にハードだと思う。
続く第5楽章はところどころロックのようにリズムカル。どこかにサイドギターが隠れているんじゃないかと冗談で思うくらい。さて全体を通して不協和音の塊だし、無骨な音楽だし、もしこの曲を100回聴いてもワンフレーズも覚えられそうにない。しかしたまに聴く分には面白いもの。ライブならなおさら。それとキレイな曲をキレイに弾くことより、こんなヘンテコリンな曲を上手にまとめることの方が難しいと思う。だから演奏家にとっては挑戦しがいがあって好まれるのかなと思ったりする。
2曲目はドヴォルザーク。バルトークとは正反対に流れるような美しい旋律が冒頭から続く。第2楽章は情感たっぷりで第3〜第4楽章は軽やか。露天風呂でシャンパンでも飲みながら聴きたい感じ。エルメス弦楽四重奏団の演奏は素晴らしかったし、何一つ文句はないのだけれど、バルトークの直後に聴くと何か物足りないのが不思議。別にバルトーク好きになったわけでは決してないのに。
というわけで
バルトークの毒に当てられて始まったのが今年のラ・フォル・ジュルネである。
公演が終わり窓をのぞくと、広場も賑やかになっていた。
しかし屋台村には目もくれず私が向かった先は、
徒歩で数分先にある有楽町の駅前。
なぜならメガネ買うため。
やはり演奏者の表情までわからないとコンサートの楽しみが半減する。それでも今年は耳に集中しようかと考えたがハタと気がついた。美術館にも行くことを(^^ゞ もっとも美術館をキャンセルして、2公演目と3公演目の間の2時間半ほど空き時間に自宅に戻ってメガネを持ってくることは可能。しかし、それも面倒である。え〜い、めでたく令和が始まった記念だと理屈をつけてーーー無駄な出費(/o\)
ところで本日のデジカメは35mm換算15-36mmの広角ズーム装着で、これは15mmでの撮影。こういう街中の風景だと錯覚的に広く写る。この駅前はこんなに広々していないんだけどね。
ーーー続く