2020年07月07日

ゲームに課金するという言葉遣い

ときどき世間での言葉遣いに違和感を覚える時がある。もっとも言葉は時代と共に変化していくもの。現時点で国語学者などが明確に誤りと指摘するケースがあったとしても、多くの人が使い続ければ、やがてそれが「正しい日本語」になる。

だから違和感があったとしても、それに反発してもあまり意味はないし、そんな言葉遣いの間違いを指摘するのもジジ臭くてイヤなんだけれど、まあとりあえず書いておこう。

スマホゲーム

私はゲームをしないので詳しくないのだが、スマホなどのゲームでは

   無料でも遊べる
   有料のアイテムを買えば、プレイヤーがパワーアップされてもっと楽しく遊べる

そんな仕組みになっている場合が多いようだ。

そして、その有料アイテムを購入することをゲームに「課金する・課金した」と表現する人が多い。それに違和感ありありなのである。


課金の「課」は「される」もので「する」ものではない。税金を払うのを「税金を課税した」とは言わないと例えればわかりやすいと思う。課税は取り立てることで、税金を払うのは「納税した」である。

文法的には100%誤りだと思うものの、多くの人が使っているので、最近は辞書でも「近年は支払うという意味でも用いられることがある」と注釈を付けている事例もある。

「課金する・課金した」の表現が広まった理由は、課税に対する納税のように対になる単語がなかったからだとの説がある。よく似た事例で引き合いに出されるのが「募金」。募はつのる・集めるという運営側の概念だから、お金を払うのに「募金する・募金した」の表現はおかしい。しかしこれも対となる言葉がない。あえていうなら「寄付」になるが、何となくそぐわない。それで「募金する・募金した」と誰かが言い始め、それが広まって一般的になったとの歴史。今では赤い羽根に募金してきたと言っても「何、その日本語?」と咎められることはまずないだろう。

したがって「課金する・課金した」もいずれ耳に馴染むようになる。でもそれまでが厄介だなあ。「ムカつく」が腹が立つ意味での非常に強い罵り表現だったのに、とても軽い意味でも使われ出した頃、その言葉を聞く度に軽くビクッとしたのを思い出す。ところでムカつくの定義が変わったのはいつ頃だったっけ? まったく記憶が消えたというか現代のムカつくに頭の中がすっかり置き換えられている。旧時代のムカつくのニュアンスも既にはっきりと思い出せない。

このように新しい言葉遣いなんて、とっとと慣れるに越したことはないのだ。しかし実はもうひとつとても違和感をいだいている言葉がある。それは最近よく使われるコロナ関連。


ーーー続く


(補足1)
課金の意味が転用したのは、課税・納税のように対になる単語がないから説は、一見説得力があるように思える。しかし「課金する・課金した」の表現が使われるのは主にゲーム料金、そこから派生してせいぜい携帯電話料金までである。家賃を課金してきたなどとはいわない。そのあたりにこの言葉遣いが発生したメカニズムが潜んでいるように思える。誰か賢い人に掘り下げて欲しい。

(補足2)
「課金する・課金した」と言う表現が始まったのが2003年頃、広まったのは2013年頃かららしい。私はゲームをしないので耳にしたのは数年前から。ゲームをする人には、何を今さらな話かも知れない。

wassho at 18:25│Comments(0) ノンジャンル 

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