2020年12月23日
さよなら ジョン・ル・カレ
ジョン・ル・カレはスパイ小説で有名なイギリスの作家。
1931年(昭和6年)生まれで、今月12日に89歳で亡くなった。
スパイ小説の分野では巨匠中の巨匠なので、そういう作品が好きな人なら誰でも知っているが、世間全般での知名度はそれほど高くはないかも知れない。何作かは映画になっているものの、それほどのヒットではなかったと思う。
ジョン・ル・カレが描くのは、007やミッション・インポッシブルをはじめとするスーパーヒーロー的なスパイとは対極の世界。あくまでリアルにスパイという人間くさい連中が等身大で迫ってくる。華麗なところはまったくなく暗く湿っぽい。それはジョン・ル・カレ自身が一時期は英国のMI5やMI6という情報機関で働いていて、実際の現場を知っているせいかもしれない。
驚いたことに彼は情報機関に在職中から作家としてスパイ小説を発表している。公務員なので、その時に使ったペンネームがジョン・ル・カレ。本名はディヴィッド・ジョン・ムーア・コーンウェルとやたら長い。ちなみに色仕掛けで相手を絡め取ることをハニートラップと表現したのは彼が最初で、その後に言葉として定着した。
ジョン・ル・カレの作品は26作ある。うち冷戦時代に書かれたのが半分で、それらがスパイを描いた小説。1991年に冷戦が終わった時、スパイはもう活躍しないからジョン・ル・カレも引退するのではと噂されたが、手を変え品を変え作品を発表し続けた。テロリストや外交官やマフィアなどが登場するが、冷戦スパイ小説と較べると少しエンタメ的な要素が増したかな。
私は半数くらい読んでいるはず。ただし20年から30年近く前とかなり昔のことなので、面白くて作品に引き込まれた記憶はあっても、どんな内容だったか具体的には忘れてしまった。しかしひとつだけ今でも強烈に覚えているストーリーがある。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
イギリス情報機関の最高幹部にソ連の二重スパイがいるという噂があった。
ある人物に疑いがかけられた。
そこで彼の行動を過去何十年に遡って調べてみたところ、
彼が外国に出張すると、ソ連のスパイも必ずその街に現れていることがわかった。
ただしそのソ連のスパイにはいつも尾行をまかれてしまい、2人が密会している現場は目撃されていない。
ーーーということで確証はないもののメッチャ怪しい。
実はこれがソ連の仕掛けたワナ。
ソ連はイギリス情報部員の若手の中から、将来は最高幹部になりそうな人物に目をつける。
仮にAという名前だとする
ソ連はAの行動を監視し、外国に出かける際は自国のスパイもその街に行かせる。
それでわざとイギリス側に目撃され尾行される。そして尾行をまく。
もちろんこれはAとは何の関係もない行動。
結果的に何も事件は起きていないのでイギリス側では特に問題にされないで忘れ去られる。
しかし、その目撃情報は記録として残る←ココ大事。
それを何十年と根気よく続ける。
そしてAが最高幹部になってから二重スパイだという噂を流す。
イギリス側が過去の記録を調べてみると、Aが海外に行くと必ずソ連のスパイもその街に現れるという「とても偶然とは思えない事実」が浮かび上がる。
イギリス情報機関は最高幹部Aに対する疑心暗鬼でボロボロになる。
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
だいたいこんな感じ。うろ覚えで(どの作品かも忘れた)あまり正確ではないし、それより私の表現でどれだけ伝わったか自信はない。まあとにかく敵を弱体化するために内部崩壊を仕掛け、その手段として不信感という人間心理を利用し、そのために将来の調査に備えて敵側に記録が残るような偽装工作を長年続けるというストーリーに「そこまでやるのか」と唸ったことを覚えている。
もちろんこれはフィクションである。しかしビジネスでよく使われる「長期的な展望に立って」「将来に向けた種まき」なんて言葉を聞くと、たまにこのストーリーを思い出し「ここまでやる覚悟はあるのかな」なんて考えてしまう(^^ゞ
まだしばらくコロナで外出の機会は減りそうだから、
久しぶりにジョン・ル・カレを読んでみようかな。
1931年(昭和6年)生まれで、今月12日に89歳で亡くなった。
スパイ小説の分野では巨匠中の巨匠なので、そういう作品が好きな人なら誰でも知っているが、世間全般での知名度はそれほど高くはないかも知れない。何作かは映画になっているものの、それほどのヒットではなかったと思う。
ジョン・ル・カレが描くのは、007やミッション・インポッシブルをはじめとするスーパーヒーロー的なスパイとは対極の世界。あくまでリアルにスパイという人間くさい連中が等身大で迫ってくる。華麗なところはまったくなく暗く湿っぽい。それはジョン・ル・カレ自身が一時期は英国のMI5やMI6という情報機関で働いていて、実際の現場を知っているせいかもしれない。
驚いたことに彼は情報機関に在職中から作家としてスパイ小説を発表している。公務員なので、その時に使ったペンネームがジョン・ル・カレ。本名はディヴィッド・ジョン・ムーア・コーンウェルとやたら長い。ちなみに色仕掛けで相手を絡め取ることをハニートラップと表現したのは彼が最初で、その後に言葉として定着した。
ジョン・ル・カレの作品は26作ある。うち冷戦時代に書かれたのが半分で、それらがスパイを描いた小説。1991年に冷戦が終わった時、スパイはもう活躍しないからジョン・ル・カレも引退するのではと噂されたが、手を変え品を変え作品を発表し続けた。テロリストや外交官やマフィアなどが登場するが、冷戦スパイ小説と較べると少しエンタメ的な要素が増したかな。
私は半数くらい読んでいるはず。ただし20年から30年近く前とかなり昔のことなので、面白くて作品に引き込まれた記憶はあっても、どんな内容だったか具体的には忘れてしまった。しかしひとつだけ今でも強烈に覚えているストーリーがある。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
イギリス情報機関の最高幹部にソ連の二重スパイがいるという噂があった。
ある人物に疑いがかけられた。
そこで彼の行動を過去何十年に遡って調べてみたところ、
彼が外国に出張すると、ソ連のスパイも必ずその街に現れていることがわかった。
ただしそのソ連のスパイにはいつも尾行をまかれてしまい、2人が密会している現場は目撃されていない。
ーーーということで確証はないもののメッチャ怪しい。
実はこれがソ連の仕掛けたワナ。
ソ連はイギリス情報部員の若手の中から、将来は最高幹部になりそうな人物に目をつける。
仮にAという名前だとする
ソ連はAの行動を監視し、外国に出かける際は自国のスパイもその街に行かせる。
それでわざとイギリス側に目撃され尾行される。そして尾行をまく。
もちろんこれはAとは何の関係もない行動。
結果的に何も事件は起きていないのでイギリス側では特に問題にされないで忘れ去られる。
しかし、その目撃情報は記録として残る←ココ大事。
それを何十年と根気よく続ける。
そしてAが最高幹部になってから二重スパイだという噂を流す。
イギリス側が過去の記録を調べてみると、Aが海外に行くと必ずソ連のスパイもその街に現れるという「とても偶然とは思えない事実」が浮かび上がる。
イギリス情報機関は最高幹部Aに対する疑心暗鬼でボロボロになる。
↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑
だいたいこんな感じ。うろ覚えで(どの作品かも忘れた)あまり正確ではないし、それより私の表現でどれだけ伝わったか自信はない。まあとにかく敵を弱体化するために内部崩壊を仕掛け、その手段として不信感という人間心理を利用し、そのために将来の調査に備えて敵側に記録が残るような偽装工作を長年続けるというストーリーに「そこまでやるのか」と唸ったことを覚えている。
もちろんこれはフィクションである。しかしビジネスでよく使われる「長期的な展望に立って」「将来に向けた種まき」なんて言葉を聞くと、たまにこのストーリーを思い出し「ここまでやる覚悟はあるのかな」なんて考えてしまう(^^ゞ
まだしばらくコロナで外出の機会は減りそうだから、
久しぶりにジョン・ル・カレを読んでみようかな。
wassho at 23:30│Comments(0)│
│映画、ドラマ、文学