2021年01月07日

発出は大人の事情で遺憾?

本日コロナの緊急事態宣言が菅総理から発出された。期間は明日からの1ヶ月間で、主に飲食店の営業時間などに制限がかかる。罰則はないが協力した店舗には1日6万円×30日=180万円の協力金が出るとのこと。

コロナのことはさておいて、目についたのは「発出」という言葉づかい。漢字から意味はよくわかるものの、ナンジャソレ?という気がする。法律に基づく措置なので発令というのが適当なはず。

緊急事態宣言

発令=命令というニュアンスから強制的なイメージを避けたかったのか。ただでさえ支持率が低下気味だから、少しでも嫌われたくなかったのかもしれない。それでいて発表じゃ言葉に重みがないと考えたか。しかし発出とは単に出すという意味だから、宣言の発出なんて意味がダブっていると思うけれど。


1月2日に小池都知事が官邸に乗り込んでから緊急事態宣言は政治的なトピックであったが、報道では発令という表現が主に使われていたように思う。それが総理が発出と言った途端に右にならえするマスコミにもナンダカナア〜という気持ちである。なお昨年4月の緊急事態宣言の時も安倍総理は発出だったはずだが(だいたい発出を連発したのは彼である)、報道の状況がどうだったのかまでは覚えていない。しかしネットで画像を検索すると発令と報道している事例も見られる。


話はそれるが、少し前に売春→援助交際→パパ活という言葉の変遷について書いた。それに限らず日本語には言葉を置き換える文化がある。その背景や意図は様々だろうが、言葉の印象を曖昧にしようとするものが多い。

近年の最高傑作は「大人の事情」かな。使われ出したのは10年くらい前だろうか。はっきり覚えているわけじゃないが、20年前にこんな表現はなかったと思う。

大人の事情とは、

  合理性や正義のある事情じゃないけれど
  それを大っぴらにすると、なにかと軋轢が起こるので、
  そのあたりを忖度してナアナアで済ませましょう

ということで持ち出される事情である。「ここはひとつ大人の事情ということで」と妥協が成立するのがこの国の特殊性。外国語には翻訳不可能な日本語だろう。


さらに時代を遡っての最高傑作は「遺憾」だと思っている。「それについて遺憾に思います」というのは、

  「申し訳ございませんでした」と謝る屈辱感はまったく感じなくてすむのに
   遺憾と言っておけば謝ったことになる

というマジックワードである。メンツやプライドも絡んで謝罪するのは心理的なハードルが高い。それは相手方も同じで謝罪のあるなしは大問題。だから謝罪で話がこじれる。それを一気に解決するのだから、この表現を発明した人は天才である。

もともと遺憾は「残念」という意味を堅苦しくしたような言葉。相手に対して使えば非難にもなる。しかし堅苦しすぎて血の通っていない言葉である。「我が国の領海を侵犯したことは遺憾」なんて声明からはほとんど抗議の意志が感じられない。天才はこのクソ丁寧さを逆手に取っている。

そして遺憾を自分に使えば誤りを認めたことになる。しかし誤りを認めても謝ったわけじゃない。しかし、その辺をあまり追求しないで謝罪したことにするのが「大人の事情」ってやつかな(^^ゞ

言葉というのは面白いというか、バカバカしいというか。とりあえずコロナをもらわないように気をつけましょう。

コロナ対策


wassho at 23:30│Comments(0) ノンジャンル 

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