2021年08月20日
実はほとんどのご先祖様と血がつながっていない
タイトルを少し変更したが、お盆特別企画:ご先祖様のナゾ3部作の最終回。
先祖と血がつながっていないとはどういうことだ、そんなのはあり得ないじゃないかと思われるかも知れない。まずは血がつながっているって何?という話から。
血縁、血統、血筋、血を分けた、血を引く、血は水よりも濃いーーー共通の先祖を持つ関係は血の文字を使って表現されるのが一般的。ただしこの血は体内を流れている血液ではなく概念としての血である。もちろん生物的に父親と母親の血液を使って子供が生まれてくるわけでもない。
では何を使って子供が生まれるかというと精子と卵子。そして親から子供に受け継がれるのは血液ではなく遺伝子であるのはいうまでもない。
さて人間の身体は細胞でできていて、細胞の中の核と呼ばれる部分に染色体と呼ばれるパーツが入っている。染色体には二重らせん構造を持つヒモのようなDNAが巻き付いており、そのDNAの一部が遺伝子になっている。遺伝子とは身体の設計図みたいなもの。
遺伝子はDNAの1.5%ほどの割合を占めているだけなのだが、一般的な表現としてはDNA=遺伝子のような使われ方をする場合が多い。また今回は染色体がテーマで、染色体=DNAともいえるので、三段論法で染色体=遺伝子として話を進める。
写真は人の染色体。23対あって46本で構成されている。
これはDNAが46分割されていることを意味している。
その46本の染色体は父親と母親から23本ずつ受け継いだもの。23本の染色体を持つ精子と、同じく23本の染色体を持つ卵子が結合するのが受精。
そしてあなたが子供を作る時も同様に、46本持っている染色体のうち23本を精子または卵子に送り込む。言い換えれば両親より受け継いだ染色体合計46本のうち半分しか自分の子供に伝えないのだ(←ここがポイント)。どちらの親から受け継いだ染色体をいくつ渡すのかよく知らないのだが、あまり極端な比率にはならずに、父親から受け継いだ23本から12本、母親からは11本とかそんな感じらしい。そしてあなたの子供も同様に、あなたから受け継いだ染色体の半分だけを子供に渡す。あなたから見れば、自分の染色体の1/4が孫に伝わることになる。
これを逆にして各世代の先祖から、あなたに受け継がれた染色体を数えると
1世代前:2人の親からは 23本ずつ
2世代前:2組4人の祖父母からは 11〜12本ずつ
3世代前:4組8人の曾祖父母からは 5〜6本ずつ
4世代前:8組16人の高祖父母からは 2〜3本ずつ
5世代前:16組32人からは 1〜2本ずつ
となる。
問題はここから。
n代前の先祖の人数は2のn乗なので6世代前は64人いる。しかし染色体は46本しかない。つまり64人−46本=18人からは染色体=遺伝子を受け継げない。すなわち血のつながりが切れる事態になる。
そして2のn乗で先祖の数は倍々で増える。前回に書いたように血統の崩壊という現象が起こり、その計算通りには増えはしないものの、とりあえず10世代前を2の10乗で1024人とすると、1024人−46本=978人からは遺伝子を受け継いでいない。978人÷1024人=95%だから、10世代前の先祖の95%はアカの他人!との衝撃的な結論となる。
これが20世代前になると先祖は104万8576人。血のつながっている46人は、46人÷104万8576人だと0.004%の割合でしかない。これはもう誤差みたいな値で、20世代前に血を分けてくれた先祖は存在しないといえるレベル。
こうなると先祖って何だろうと思えてくる。人間が生まれるには男女2人のペアが必要で、それが綿々と生命のリレーを繰り返して自分に至っている。もし記録があるならば、過去に遡るにつれて何系統にも分かれた膨大な家系図が描けるはず。一般的にはそれが「血がつながっている」関係である。どの世代の誰か1人欠けても私は存在しない。
しかしそこに書き込まれた遠い先祖のほとんどとは、家系図という文化ではつながっていても、生物的に自分と連続性のない無関係な存在なのである。それがとても不思議で、頭で理解できても何となく腑に落ちてこない。この感覚はビッグバン以前は物質も空間も時間もなかったとの話を初めて知った時と似ているような気もする。
え〜っと今回の話にオチはないよ。とりあえずタイムマシンが発明されて、大昔のご先祖様を訪ねる時にでも思い出してちょうだい(^^ゞ
おしまい
<補足>
実際には染色体で組み替えという現象が起きて、先祖から受け継げるDNAは46本より多くなる。だから血のつながっていない先祖が出現する割合はもう少し緩やかになるものの、ここで述べた話の趣旨が変わるほどではない。
先祖と血がつながっていないとはどういうことだ、そんなのはあり得ないじゃないかと思われるかも知れない。まずは血がつながっているって何?という話から。
血縁、血統、血筋、血を分けた、血を引く、血は水よりも濃いーーー共通の先祖を持つ関係は血の文字を使って表現されるのが一般的。ただしこの血は体内を流れている血液ではなく概念としての血である。もちろん生物的に父親と母親の血液を使って子供が生まれてくるわけでもない。
では何を使って子供が生まれるかというと精子と卵子。そして親から子供に受け継がれるのは血液ではなく遺伝子であるのはいうまでもない。
さて人間の身体は細胞でできていて、細胞の中の核と呼ばれる部分に染色体と呼ばれるパーツが入っている。染色体には二重らせん構造を持つヒモのようなDNAが巻き付いており、そのDNAの一部が遺伝子になっている。遺伝子とは身体の設計図みたいなもの。
遺伝子はDNAの1.5%ほどの割合を占めているだけなのだが、一般的な表現としてはDNA=遺伝子のような使われ方をする場合が多い。また今回は染色体がテーマで、染色体=DNAともいえるので、三段論法で染色体=遺伝子として話を進める。
写真は人の染色体。23対あって46本で構成されている。
これはDNAが46分割されていることを意味している。
その46本の染色体は父親と母親から23本ずつ受け継いだもの。23本の染色体を持つ精子と、同じく23本の染色体を持つ卵子が結合するのが受精。
そしてあなたが子供を作る時も同様に、46本持っている染色体のうち23本を精子または卵子に送り込む。言い換えれば両親より受け継いだ染色体合計46本のうち半分しか自分の子供に伝えないのだ(←ここがポイント)。どちらの親から受け継いだ染色体をいくつ渡すのかよく知らないのだが、あまり極端な比率にはならずに、父親から受け継いだ23本から12本、母親からは11本とかそんな感じらしい。そしてあなたの子供も同様に、あなたから受け継いだ染色体の半分だけを子供に渡す。あなたから見れば、自分の染色体の1/4が孫に伝わることになる。
これを逆にして各世代の先祖から、あなたに受け継がれた染色体を数えると
1世代前:2人の親からは 23本ずつ
2世代前:2組4人の祖父母からは 11〜12本ずつ
3世代前:4組8人の曾祖父母からは 5〜6本ずつ
4世代前:8組16人の高祖父母からは 2〜3本ずつ
5世代前:16組32人からは 1〜2本ずつ
となる。
問題はここから。
n代前の先祖の人数は2のn乗なので6世代前は64人いる。しかし染色体は46本しかない。つまり64人−46本=18人からは染色体=遺伝子を受け継げない。すなわち血のつながりが切れる事態になる。
そして2のn乗で先祖の数は倍々で増える。前回に書いたように血統の崩壊という現象が起こり、その計算通りには増えはしないものの、とりあえず10世代前を2の10乗で1024人とすると、1024人−46本=978人からは遺伝子を受け継いでいない。978人÷1024人=95%だから、10世代前の先祖の95%はアカの他人!との衝撃的な結論となる。
これが20世代前になると先祖は104万8576人。血のつながっている46人は、46人÷104万8576人だと0.004%の割合でしかない。これはもう誤差みたいな値で、20世代前に血を分けてくれた先祖は存在しないといえるレベル。
こうなると先祖って何だろうと思えてくる。人間が生まれるには男女2人のペアが必要で、それが綿々と生命のリレーを繰り返して自分に至っている。もし記録があるならば、過去に遡るにつれて何系統にも分かれた膨大な家系図が描けるはず。一般的にはそれが「血がつながっている」関係である。どの世代の誰か1人欠けても私は存在しない。
しかしそこに書き込まれた遠い先祖のほとんどとは、家系図という文化ではつながっていても、生物的に自分と連続性のない無関係な存在なのである。それがとても不思議で、頭で理解できても何となく腑に落ちてこない。この感覚はビッグバン以前は物質も空間も時間もなかったとの話を初めて知った時と似ているような気もする。
え〜っと今回の話にオチはないよ。とりあえずタイムマシンが発明されて、大昔のご先祖様を訪ねる時にでも思い出してちょうだい(^^ゞ
おしまい
<補足>
実際には染色体で組み替えという現象が起きて、先祖から受け継げるDNAは46本より多くなる。だから血のつながっていない先祖が出現する割合はもう少し緩やかになるものの、ここで述べた話の趣旨が変わるほどではない。
wassho at 20:55│Comments(0)│
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