2021年10月09日

ゴッホ展 響きあう魂 ヘレーネとフィンセント その2

タイトル

展覧会のサブタイトルにあるフィンセントとはゴッホの名前である。
日本的にいうなら「下の名前」。

原語で書くと Vincent van Gogh 。

何となくヴィンセント・ヴァン・ゴッホのほうが馴染みがあるけれど、それは英語読みでの発音。一般に最近は母国語の発音表記にする傾向がある。彼はオランダ人で、オランダ語読みだとVの発音がfになるらしくフィンセント・ファン・ゴッホとなる。


この母国語の発音で表記することには正統性があるようにも思えるが、今まで英語読みで馴染んできた経緯のある言葉では違和感を感じることも多い。昨年のハマスホイ展は彼の母国であるデンマーク語に忠実に表記する原理主義で貫かれていた。ハマスホイのことは知らなかったから、従来の英語読みのハンマースホイじゃなくても気にならなかったが、、

   Laurits Andersen Ring

という画家がラウリツ・アナスン・レングと表記されているのにはちょっと無理があると感じた。中央のスペルを見て欲しい。アナスンとはアンデルセンのデンマーク語読みなのである。やっぱりアンデルセンはアンデルセンじゃないと。


実はフィンセント・ファン・ゴッホというのはオランダ語読みと英語読みのチャンポンである。Goghのオランダ語読みはカタカナにするならホッホとなる。さすがにこれじゃ日本で通用しないからゴッホが用いられている。だったらどうしてフィンセントにする?と何かと外国語の表記は難しいもの。

ついでにいうと van Gogh のvan はミドルネームではなく苗字の一部とのこと。だから省略はできなくてオランダでは van Gogh と呼ばれる(どうして van が小文字なんだろう?)。日本的にゴッホとだけ呼ぶのは長谷川さんを谷川さんと呼ぶみたいなもので別人になってしまうのかな。

というわけでゴッホはオランダ語読みするならファンホッホとなる。しかしファンでホッホなんて愉快なオッサンみたいみたいで、ゴッホのイメージと違っちゃうなあ(^^ゞ

なおゴッホは1853年生まれで1890年没。
明治維新が1868年だから、その頃の人ね。

ポートレート




ヘレーネとはヘレーネ・クレラー・ミュラーという女性のこと。(ヘレーネの英語読みがヘレン)1869年生まれで1939年没。
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彼女は夫のアントン・クレラー・ミュラーと供にクレラー・ミュラー美術館を創設。実業家のアントンも財をなした人物だったが、彼女の実家はさらに「太かった」ようだ。
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ちなみに夫婦別姓問題が話題となっている日本であるが、この夫婦はアントン・クレラーさんとヘレーネ・ミュラーさんが結婚したもの。オランダでは苗字をつなげてクレラー・ミュラーとなるのか。その子供が結婚したらさらに苗字を足していくのだろうか。

このクレラー・ミュラー美術館は首都アムステルダムから100キロほど離れた国立公園の中にある。その国立公園も元々はクレラー・ミュラー夫妻の私有地だったというから、どれくらいの金持ちだったかがわかるというもの。

だからヘレーネ奥様は白馬にだって乗っちゃいます!
なぜか横座りだけど。
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ところでゴッホの作品は生前に1枚か数枚売れただけだといわれている。油絵だけで約860点を描いたとされるから、つまりほとんど売れなかったことになる。美しいメロディーのポップスが流行っている頃に、ヘヴィメタのロックみたいな絵を描いていたのがゴッホである。だから世間に受け入れられなかった。

もっともゴッホが絵を描いていたのは10年間ほどであり、その程度のキャリアでは知名度不足で売れないのは当然で、ゴッホの絵が売れ始めた時期は他の画家と較べても早いという学説もある。だいたい死後10年目くらいかららしい。

ヘレーネは1908年からゴッホの作品をコレクションし始め、1929年までに油彩90点、素描180点あまりを集めた。いってみればまだ「ぽっと出」のゴッホの価値をいち早く見抜いたのだから、その目は確かである。彼女がゴッホの作品を買うことで、ゴッホの人気も上がっていったとのこと。

そして1938年に美術館を創設。ただしこの頃にはクレラー・ミュラー家は没落しかけていて、美術館を建てることを条件にコレクションと土地を政府に寄付したのだが(/o\) このことから既にその当時、政府が美術館を建てる価値を認めるくらいにゴッホの評価が高まっていたことがわかる。


このクレラー・ミュラー美術館のゴッホ・コレクションは、ゴッホの遺族が相続した作品を元にした現在のオランダ国立ゴッホ美術館(油絵約200点を所有)と並んで双璧で、2大ゴッホ美術館と呼ばれている。

というわけでゴッホ展を開催する場合は、必然的にこの両美術館から作品を借りることが多くなる。だから内容的に「クレラー・ミュラー美術館収蔵ゴッホ展」は今までも開かれてきたが、今回は創設者のヘレーネにもスポットを当てた企画となっている。

それで会場にヘレーネの写真や略歴などの資料も展示されていた。しかしはっきり言ってゴッホの作品自体とは無関係な話。つまりは今回を含めてこの20年間に9回も開かれているゴッホ展である。マンネリ化する企画コンセプトに困って、ヘレーネを持ち出してきた感がなきにしもあらず。


それにしても、こんな大富豪で目利きのヨメをもらって、
アート三昧な人生を送りたかったゼ(^^ゞ



なかなか話が作品までたどり着かないがm(_ _)m ーーー続く

wassho at 20:45│Comments(0) 美術展 

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