2021年12月21日

万年筆のインクは変質する

タイトルを微妙に変更して話の続き。
これではネタバレになってしまうが。


前回に書いたようにインクの色が薄いのは、万年筆に水分が残っているのではなく、ペン先とそれを支えている台座の間に、水では洗い流せないくらいに固まってこびりついたインクがあり、それがインクの供給を阻害しているからだと考えた。しかしペン先は強く固定されており、押しても引いても捻ってもまったく動かず分解できなかった。

素人には万年筆のペン先分解は無理とされる。それを無視して壊してしまっても仕方がないという前提での作業だから、ペンチで挟んで力任せにとも思った。しかしどの方向に力を入れるのかも分かっていないから、それだと「壊してしまっても仕方がない」ではなく確実に壊す可能性が高い。いろいろなものを壊してきた私の本能がそう警告した(^^ゞ


それで次の作戦は「溶けぬなら溶かしてみせようホトトギス」。今度は水ではなく、通常は40倍に薄めて使用する強力な洗剤の原液に浸してみる。

1日が経過。
透明な洗剤の色にほとんど変化なしーーー。

念入りにすすいで、ペン先を振って水を切り、さらにペン先にキッチンペーパーを押し当てて毛細管現象で水を吸い出す。カートリッジを装着して書き始めると、最初は水混じりのインクであるが徐々に色が濃くなってくる。

しかしそれでもインク本来の色にはほど遠い。
やはり喪中はがきのようなグレーの文字色にしかならない。
(そういえば近頃は喪中はがきに薄墨色を使わなくなったな)


一縷の望みをかけて文字を書いたりグルグルとマルを描いたりを続ける。実に退屈な作業。やがてそれに飽きてカートリッジのインク残量を確認すると半分くらいを使っていた。これだけやってもダメだということは、やはりこびりついた汚れは溶かせなかったということか。それではいよいよ最終手段のペンチでーーーと考えた時にふと気づく。

   “差し込んであるカートリッジはブルーブラックのインク”

ブルーブラックはつまり紺色である。インクが水で薄まっているにせよペン先へのインクの供給が不十分にせよ、薄いブルーならともかくグレーになるのはおかしいではないか。

この時点までに使った2本のカートリッジは3〜4年前に買ったものだった。ひょっとしてと思い、先日に買い足した新しいカートリッジに交換してみると、目にも鮮やかなブルーブラックの文字が!

ヤッターという喜びはなくヘナヘナと肩から力が抜けたね。 要するに色が薄い原因は水分でもペン先の詰まりでもなく、インクが変質してブルーブラックからグレーに変わっていたということ。今までの苦労は何だったのだ(/o\)

インクはペリカン社製。これを3〜4年前に買ったのは銀座の伊東屋(明治創業の老舗文具店)だからパチモノだった可能性はまずない。そしてこの現象は昨年から起きているので2〜3年で変質したことになる。ただしこの万年筆を使って10年間でそんなことは過去になかったから、製造不良の商品だったと推測するのが妥当だろう。それにしても万年筆はもちろんボールペンでもサインペンでもインクの色が変化した経験なんて生まれて始めて。

カートリッジ

どうしてブルーブラックがグレーになっている時点で変質に気づかなかったのか。それは以前にブラックのインクを使っており、それが水で薄まったときの色と同じだったから。つい過去の経験や記憶に引っ張られてしまったということ。

そしてインクの供給が不十分などと見当違いの推測をしたのは、困っているときにネットで見つけた新知識に深く考えもせずに飛びついてしまったからだろう。よく考えたらインク供給に問題があるなら色が薄くなるのではなく文字がかすれるはず。冷静に判断できずワラをつかんでしまったアホさ加減が情けない。

まだまだ修行が足りないね。
それでもペンチを使うのを思い留まった自分の成長は褒めてあげたい(^^ゞ


おしまい

wassho at 23:00│Comments(0) 生活、日常 

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