2022年02月01日

ミケル・バルセロ展 その3

次に紹介するのは海関連の作品。ーーーのつもりだったが、
改めてタイトルを確認するとそうじゃないものが混ざっていた(^^ゞ


それがこの
「午後の最初の一頭」 2016年

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あまり興味を引かなかったのでサラッと見ただけで、会場ではタイトルも読まなかった。青いし、水しぶきのようなものが表現されているからてっきり海がテーマかと。しかし前回で紹介した「とどめの一突き」と同じく小さく闘牛士と牛が描かれている。

「とどめの一突き」もかなり抽象的だったが、さらに色彩まで超越して紺色と白のモノトーンで仕上げた作品ともいえる。改めて眺めれば宇宙空間のようでもある。まあ闘牛士と牛がいなくても、そんなに変わりがないと思うがねーーーと負け惜しみ。


「サドルド・シーブリーム」 2015年

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この聞き慣れないサドルド・シーブリーム saddled seabream という魚は、シーブリームが鯛(たい)だから、その一種みたい。日本の海では獲れず、よって日本名もないようだ。

Saddled seabream

サドルは馬に乗るときの鞍(くら)で saddled は鞍がついたというような意味かな。尾びれの手前にある黒い丸模様のことを指していると思われるが、ミケル・バルセロはどうして一番の特徴部分を描かなかったのだろう。


「漂流物」 2020年

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最初はクジラの大群と思ったが、よく見るとそれぞれに何か文字が書いてある。浮かんでいるのは転覆したボートなんだろう。


「飽くなき厳格」 2018年

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これはかなり深みを感じさせる絵。砕ける大波のようにも、あるいは氷山のようにも見える。しかしタイトルに海関連の文字がないからあまり自信なし(トラウマ)。


「下は熱い」 2019年

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これが展覧会で一番印象に残った作品。

おそらくブログに載せた画像を見て「適当に水色に塗ってサカナを描いているだけじゃないか」「前回に紹介した“銛の刺さった雄牛”の迫力較べたら、まったく物足りない」と思われるかも知れない。私も最初はそんな印象だった。

展示会場はところどころに間仕切り壁があって、私はこの写真の奥の方から、係員が座っているところの隙間を通ってこちら側の展示スペースに入った。つまり「下は熱い」に最初は至近距離で遭遇したことになる。
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この写真では分かりにくいが、間近で見ると、サカナは絵の具を厚塗りして5センチくらいの半立体的に描かれている。当然ながらモダンアート嫌いとしては「また小賢しいことを」という反応になるわけで。

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それでほとんどチラ見をしただけで、隣にあるタコの絵を見に行った。その後にもう一度この「下は熱い」を眺めると、その時は絵から少し距離が取れていたのだが、まるでサカナが水面で跳ね回っているように見えたのである。ピチャピチャという音まで聞こえた。本当だってば!

その後はもうこの絵に釘付けである。接近するとそんなに面白くないが、少し離れて眺めると凄く動的に見える。絵に近づいたり離れたりを繰り返していたから、係員におかしな奴と思われていたかも知れない(^^ゞ

少し離れて撮影した写真を。
まあこれを見ても私が受けた印象は伝わらないな。
是非、展覧会に出かけてピチャピチャを体験してちょうだい。
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「恐れと震え」 2018年

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これは厚塗りではなくキャンバスを波打たせて半立体にしてあった作品。けっこう面白かった。しかしそのウネウネしたところの写真を撮り忘れるという失態を犯す(/o\)



次のレントゲン写真のようなものはブリーチ・ペインティングという手法で描かれたもの。全部で10作品ほどあり、モデルはミケル・バルセロの知り合いみたい。小林康夫という名前もあって、調べてみると彼に関する本を書いたり対談もしている大学教授だった。


「J.L.ナンシー」 2012年

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「ドリー」 2013年

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ブリーチ・ペインティングとは絵の具を塗ったキャンバスに、漂白剤液で絵を描く手法とのこと。すぐには下地が脱色しないから、描いているときはもちろん、しばらく経ってからでないとどんな作品が出来上がるか分からないらしい。

そうやって描くことは楽しそうに思えるが、出来上がった作品を見ても「だから何?」という感想しか出てこないのが正直なところ。「下は熱い」でノックアウトされそうになったが、まだまだモダンアート・アンチの精神は健在(^^ゞ

なおブリーチ・ペインティング作品は、
これまでに紹介したものと違って普通サイズだった。
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集められた画像から何となく似たようなものをグルーピングしてきたが、次の3つはどこにも入らなかったいわば「その他」のグループ。


「開いたメロン」 2019年

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たぶんスペインでもメロンはこんな姿をしていないと思う。もちろんそこは重要じゃなくて、この絵を見てどう思う、何を感じるかなのだけれどーーーウ〜ン。それなのにどこか引っ掛かるものがあって、かなり長く眺めていた作品。


「曇った太陽ー海」 2019年

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これはタイトルに海の文字があるし、サカナも描かれているから(立って歩いているけど)海がテーマなのは確実。しかし黄色がメインだから前半に紹介したグループとは一緒にしなかった

それはともかく、
サカナを縦に描くだけで、何となく楽しい絵になるというのが小さな発見。


「良き知らせ」 1982年

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これは紙をコラージュのように重ね合わせてある作品。無意識にバスキアを連想してしまうのは顔の描き方のせいだろうか。ちなみにバスキアは27歳で夭折したけれど、彼は1960年生まれで、ミケル・バルセロが1957年生まれだから同世代の画家である。

この作品は、最初の回で紹介した1982年の「ドクメンタ7」という展覧会に出品が決まったことの喜びを描いているとのこと。だからそれを知らせる手紙を持っている。今ならスマホを握っている姿になるのかな。それにしてもそんな背景を知らなかったら、イヤ知った上でも、怒っているようにしか見えないが。

それではこのシチュエーションを想像してみましょう。

   浮気をして、赤ん坊を残して逃げたヨメから手紙が来た。
   そこにはこう書かれていた。
   ごめんなさい、その子の父親はあなたではありません。

最悪の知らせにタイトルを変更しなくちゃ(^^ゞ



ーーー続く

wassho at 23:08│Comments(0) 美術展 

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