2022年07月19日
掛け軸や絵巻は巻かない方がいいんじゃない?
日本画には掛け軸や絵巻といった形のものがある。大きなサイズの作品は屏風(びょうぶ)や襖絵(ふすまえ)で、小さなものは掛け軸にする文化だったというイメージを持っている(絵巻は長編絵画みたいなものだから特殊なジャンル)。そして掛け軸サイズでない日本画が描かれて額装されるようになったのは、明治以降に西洋画の影響を受けてからと思う。もっと後のことかも知れない。
掛け軸や絵巻はクルクルと巻いて収納する。コンパクトになって場所を取らずに便利。ただし紙や布(日本画は絹の布に描くのが一般的)を丸めるのだから、当然ながらシワが寄ったり波打ったりする。
これは5月に見てきた鏑木清方の作品。彼は1972年(昭和47年)まで生きた画家だから、つまり作品はまだそれほど古くないから、巻いたことによるダメージはそれほど大きくない。それでもカタログの画像と較べると形が歪んでいるし、波打って無地の背景が陰影のように見える。
こちらは江戸時代前期の17世紀に描かれた菱川師宣(もろのぶ)の見返り美人図。
けっこうシワクチャ(>_<) ※展示写真はhttps://go-to-museums.com/beautylookingback-1834からの引用
もちろんダメージがひどくなってくれば修復作業がおこなわれる。それがどうのような作業かは知らないが、巻かなければ傷まないのにと思うのは私だけかな。驚いたことに国宝や重要文化財でも展示していないときは巻かれている(何度かそんなシーンをテレビで見た)。
家庭では収納場所に困るから巻物にするのは合理性があるとしても、美術館なら作品の保全を優先すべきだと思うのだが。
そんなことを考えながらネットで調べていると興味深いものを見つけた。写真は名古屋にある徳川美術館が所蔵している源氏物語絵巻。平安時代末期の作品で国宝に指定されている。教科書で見た記憶がある人も多いかと思う。
徳川美術館によると
3巻の絵巻だったものを
昭和7年(1932)に額装に改めた(つまり切り離した)
当時はそれが最善と判断したが、80年が経過して弊害が生じたため、
2016年から5年かけて絵巻に戻した
とのこと。その際に絵巻の軸の直径を大きくして巻くことによる負担を少なくしたらしいが、それでも巻いたり広げたりを繰り返せば傷むでしょ。額装で生じた弊害が具体的に何かは分からないが、遠い将来のことまでを考えるなら巻かずに保管して欲しい。もちろん掛け軸と違って絵巻は長いから大変だろうが(源氏物語絵巻は1巻が5〜7m)、国宝ならそれくらいはしましょう。もちろん11mちょっとある鳥獣戯画も是非。
美術館関係者の皆様ご一考を。
話は変わるが、シワが寄ったりしている掛け軸の作品。例として上げたものを見てもわかるように、それらもカタログ写真ではきれいに真っ平らである。シワの部分つまり元の絵に対して歪んでいる箇所の分量をコンピューターで計算して補正することは可能。しかしそんなことができるようになったのは20年ほど前からの話。パソコンがなかった時代からカタログの写真は真っ平らだった。
どうやって撮影しているのだろう。パッと思いつくのはガラス板を載せてシワを伸ばす方法。油絵と違って日本画に凹凸はないから可能だろうが、まさかね? とにかくナゾ
掛け軸や絵巻はクルクルと巻いて収納する。コンパクトになって場所を取らずに便利。ただし紙や布(日本画は絹の布に描くのが一般的)を丸めるのだから、当然ながらシワが寄ったり波打ったりする。
これは5月に見てきた鏑木清方の作品。彼は1972年(昭和47年)まで生きた画家だから、つまり作品はまだそれほど古くないから、巻いたことによるダメージはそれほど大きくない。それでもカタログの画像と較べると形が歪んでいるし、波打って無地の背景が陰影のように見える。
こちらは江戸時代前期の17世紀に描かれた菱川師宣(もろのぶ)の見返り美人図。
けっこうシワクチャ(>_<) ※展示写真はhttps://go-to-museums.com/beautylookingback-1834からの引用
もちろんダメージがひどくなってくれば修復作業がおこなわれる。それがどうのような作業かは知らないが、巻かなければ傷まないのにと思うのは私だけかな。驚いたことに国宝や重要文化財でも展示していないときは巻かれている(何度かそんなシーンをテレビで見た)。
家庭では収納場所に困るから巻物にするのは合理性があるとしても、美術館なら作品の保全を優先すべきだと思うのだが。
そんなことを考えながらネットで調べていると興味深いものを見つけた。写真は名古屋にある徳川美術館が所蔵している源氏物語絵巻。平安時代末期の作品で国宝に指定されている。教科書で見た記憶がある人も多いかと思う。
徳川美術館によると
3巻の絵巻だったものを
昭和7年(1932)に額装に改めた(つまり切り離した)
当時はそれが最善と判断したが、80年が経過して弊害が生じたため、
2016年から5年かけて絵巻に戻した
とのこと。その際に絵巻の軸の直径を大きくして巻くことによる負担を少なくしたらしいが、それでも巻いたり広げたりを繰り返せば傷むでしょ。額装で生じた弊害が具体的に何かは分からないが、遠い将来のことまでを考えるなら巻かずに保管して欲しい。もちろん掛け軸と違って絵巻は長いから大変だろうが(源氏物語絵巻は1巻が5〜7m)、国宝ならそれくらいはしましょう。もちろん11mちょっとある鳥獣戯画も是非。
美術館関係者の皆様ご一考を。
話は変わるが、シワが寄ったりしている掛け軸の作品。例として上げたものを見てもわかるように、それらもカタログ写真ではきれいに真っ平らである。シワの部分つまり元の絵に対して歪んでいる箇所の分量をコンピューターで計算して補正することは可能。しかしそんなことができるようになったのは20年ほど前からの話。パソコンがなかった時代からカタログの写真は真っ平らだった。
どうやって撮影しているのだろう。パッと思いつくのはガラス板を載せてシワを伸ばす方法。油絵と違って日本画に凹凸はないから可能だろうが、まさかね? とにかくナゾ