2022年07月27日

木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり その3

前回までに紹介したのはストリートの風景を切り取った「パリの街角」、そこにいる人たちを主役にした「素顔のパリっ子」。そしてその次のコーナーは「安らぐパリ」というタイトルだった。「素顔のパリっ子」の括りに入れてもよかったんじゃない?と思える写真も混ざっているが、くつろいだり楽しんだりしているパリの人々が撮られている。


「パリ、1954-1955年」
  この時代(1954年は昭和29年)の日本でクルマに乗ってお出かけしている
  イヌはいなかっただろうなあ。
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「ロンシャン競馬場、パリ、1954年」
  男性のセータが、前から見てどんな模様になっているか知りたい。
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「カフェにて、パリ、1955年」
  前回に書き忘れたが、この当時のパリの男性は女性と較べて垢抜けない感じ。
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「パリの女、シャンゼリゼ通り、パリ、1955年」
  背景にいるのはストリート・ミュージシャン?
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「テュイルリー公園にて、パリ、1955年」
  国産初のカラーフィルムを使用したのが、この撮影旅行の売りなのに、
  ところどころセピアに近い色調になっている写真も混ざっているのが不思議。
  次のリュクサンブール公園の写真も同じく。
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「リュクサンブール公園にて、パリ、1954年」
  このジイさん達はコートを着ている。他には半袖姿の写真もあるから、
  木村伊兵衛はかなり長くパリに滞在していたようだ。
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「サン・マルタン運河、パリ、1955年」
  ところで私は写真を撮るとき、カメラを水平に保つように気をつけている。
  しかし中心となる被写体が手前にあると、それに気を取られて
  おろそかになることが多い。
  でも木村伊兵衛もけっこうアバウトなので安心した(^^ゞ
3-106

  この写真も少女の部分だけでは気づかないが、
  橋のところの水面を見れば、かなり画面が傾いているのがわかる。

  参考までに傾きを修正したものを。
3-106のコピー


「パリからブロワへむかう途上で、1954年」
  風景が広いと水平を意識させるものが多くなるので、
  傾きが目立ちやすい。
3-099

  木村伊兵衛の写真には、戦前のものも含めて当時に走っていたクルマが
  たくさん写っていて面白いのだが、バイクの姿をキチンと分かるように撮られた
  ものはほとんどない。彼はバイクには興味がなかったみたいだ。


「職人町のパリ祭、メニルモンタン、パリ、1955年」
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「職人町のパリ祭、メニルモンタン、パリ、1955年」
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パリ祭とはフランスの革命記念日のこと。
フランス革命はルイ16世やマリー・アントワネットがギロチンされたあれね。この革命の戦いは約10年に渡って続いたが、1789年7月14日にパリ市民が政治犯の投獄されていたバスチーユ牢獄を襲撃したのが始まり。ということでこの日が革命記念日とされた。また王制を倒して現在まで続く共和制が成立したので建国記念日でもある。もちろん祝日。ちなみに明治維新が1868年だからフランス革命はその80年ほど前の出来事。江戸時代の2/3が過ぎた当たり。

ところでこの革命記念日、フランス語では Fete nationale francaise (直訳すればフランス国民祭典)となる。それを「パリ祭」と呼ぶのは日本独特の訳語。盛大な軍事パレードもおこなわれる日なのに随分と軽いニュアンスになっている。

一説によると、フランスではこの日を単に Quatorze Juillet(7月14日の意味)と呼ぶこともあり、昭和の初めにその Quatorze Juillet というタイトルのフランス映画が入ってきて、その邦題を「7月14日」に訳しても日本人には意味がわからないからパリ祭(映画では漢字で巴里祭)に意訳?したのがきっかけらしい。

Fete と Festival は同じような意味だけれど、なぜフランスじゃなくてパリ限定に? 以前フランス人に日本では Paris Festival と呼ぶと教えたらけっこうビックリされた。

なお日本では初代天皇である神武天皇の即位日を建国記念日に当てている。とはいっても彼は神話上の人物であり、即位日とされる2月11日も半分はこじつけみたいなもの。その他いろいろあって戦後に建国記念日を再制定するとき、反対意見を押さえるため「建国記念日」ではなく「建国記念の日」と名称に「の」をいれて、「この日に建国された」という意味ではなく「建国を祝う日」の趣旨に置き換えられた。すごい政治テクニック! まあほとんどの人は「建国記念の日」と「の」が挟まっていることに気がついていないが。

話がそれた(^^ゞ


ーーー続く

wassho at 19:38│Comments(0) 美術展 

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