2022年07月29日
木村伊兵衛と画家たちの見たパリ 色とりどり その4
最後のコーナーは「華やぐパリ」。
女優やモデルの写真が多くわかりやすいタイトル。
「夕暮れのコンコルド広場、パリ、1954年」
この夕暮れが華やいでいるのかと?が浮かぶが、これは当時の感度の低い(暗いところでは写らない)カラーフィルムの限界を探った写真らしい。これを見て写真に詳しい人はスゲー!とか思うのだろうか。それはともかく都心で夕焼けが眺められていいね。今でもパリは高い建物が少ないから、こんな景色が見られるのかな。
ところでこの写真展ではカメラを縦に構えて撮った写真が多い。それは人物写真が中心だからだろう。それで縦長と横長の写真では縦横比率が違うものがあるのに気がついた。この写真はかなり横長。その2で紹介した「ミラボー橋、パリ、1955年」という写真もそう。
おそらく横長にトリミングして広々感を出しているのだと思う。トリミングもレタッチの一種だけれど、そういうことにも気を配って作品を仕上げるものなんだ。
「ジョアンビル撮影所のミシェル・モルガン、パリ郊外、1955年」
さてここからが華やいでいる写真。
ミシェル・モルガンはフランスを代表する女優の1人らしい。ただし活躍したのが1930年代から60年代なので名前を聞いたことがあるような・ないようなくらいしか知らない。ジャン・ギャバンやイヴ・モンタンとかが活躍していた頃の人。
撮影所に潜り込めたのはフランスの大御所カメラマンであるアンリ・カルティエ=ブレッソンの手配があったから。そして彼が木村伊兵衛のパリでの撮影をコーディネートするために同行させたのがロベール・ドアノー。こちらも超有名カメラマン。ドアノーの名前は知らなくても、彼が撮ったこの「パリ市庁舎前のキス」を見たことがある人は意外といるかも知れない。20歳代の頃、これを自宅に飾っていたら「ウチにもある」といった人が2名いたから。
木村伊兵衛がパリでいい写真を撮れたのは、ブレッソンとドアノーという当時のドリームチームのアシストも大きかったと思う。それを言い出すと写真は「カメラマンの才能や能力」か「被写体自体の魅力なのか」にまた話が戻ってしまうが。
「パリ、手鏡、1955年」
「ファッションショー、パリ、1954年」
「ジバンシーのコレクション会場、パリ、1955年
これらはファッションショーの楽屋などを撮影した写真。2枚目のは屋外パーティーみたいだが、ヘアスタイルコンテストのモデルが出番待ちをしているところ。
「マヌカン、パリ、1955年」
フランス語でマヌカンはファッションモデルのことを指す。しかし日本ではかつて1980年代のDCブランドブームの頃に、その販売員をハウスマヌカンと呼び、短縮してマヌカンともいった。当時を知っている人なら、そのブームをおちょくった「夜霧のハウスマヌカン」という歌を覚えているだろう。
YouTubeの動画はこちら
なんとテレサ・テンもカバーしていた!
改めて歌詞を読むとクスッと笑える
ところでマヌカンを販売員あるいはモデルを指す言葉だと知っていても、
それが mannequin を
フランス語読みしたらマヌカン
英語読みしたらマネキン
であることはあまり知られていないかも。マネキンと聞けば服を着せる人形をまず思い浮かべるが、ファッション業界だけではなく臨時の派遣店員をマネキンと呼ぶこともある。なぜか「マネキンさん」と、さん付けすることが多いかな。
例によって前書きが長かったが、
これが木村伊兵衛の撮ったマヌカン。
扇子と組み合わせた帽子?を被ったファッションモデル。かなりアバンギャルドな華やかさである。この表情と手の位置なら携帯電話で話しているようにしか見えないが、もちろんこの時代にそんなものはない。ポーズの解釈も時代によって変わるね。
ところでこれは屋上で撮影したのだろうが、背景の屋根に写っている無数のレンガ色をしたものは何なんだろう。焼く前の陶器を乾かしているようにも思えるが、屋根の上でそんなことはしないだろうし。超ナゾ
そして大先生である木村伊兵衛に何度もダメだしするのは気が引けるが、この写真も傾きが気になる。メインの被写体に合わせて撮るとこうなりがち。モデルの姿勢からカメラが傾いているとは感じなかったのだろう。
さて1950年代半ばのパリを色々と見られて楽しい写真展だった。よくいわれる「空気感も一緒に写し込む」の意味が分かったような気もする。それと教科書でしか知らないような大昔でもないから、現在との連続感があるというか、肌感覚で「こうだったんだろうなあ」とわかる親しみやすさもある。また街角写真なので、どれも気取りのない写真だったのもよかった。言い換えれば「どうだ、スゴイ写真だろ」との押しつけがましさがない。そういうテンションの高い写真はどうも苦手で。でも撮れるものなら撮ってみたい(^^ゞ
写真展は今まで数えるほどしか訪れたことはないが、
もうちょっとマメに足を運ぶか。
おしまい
女優やモデルの写真が多くわかりやすいタイトル。
「夕暮れのコンコルド広場、パリ、1954年」
この夕暮れが華やいでいるのかと?が浮かぶが、これは当時の感度の低い(暗いところでは写らない)カラーフィルムの限界を探った写真らしい。これを見て写真に詳しい人はスゲー!とか思うのだろうか。それはともかく都心で夕焼けが眺められていいね。今でもパリは高い建物が少ないから、こんな景色が見られるのかな。
ところでこの写真展ではカメラを縦に構えて撮った写真が多い。それは人物写真が中心だからだろう。それで縦長と横長の写真では縦横比率が違うものがあるのに気がついた。この写真はかなり横長。その2で紹介した「ミラボー橋、パリ、1955年」という写真もそう。
おそらく横長にトリミングして広々感を出しているのだと思う。トリミングもレタッチの一種だけれど、そういうことにも気を配って作品を仕上げるものなんだ。
「ジョアンビル撮影所のミシェル・モルガン、パリ郊外、1955年」
さてここからが華やいでいる写真。
ミシェル・モルガンはフランスを代表する女優の1人らしい。ただし活躍したのが1930年代から60年代なので名前を聞いたことがあるような・ないようなくらいしか知らない。ジャン・ギャバンやイヴ・モンタンとかが活躍していた頃の人。
撮影所に潜り込めたのはフランスの大御所カメラマンであるアンリ・カルティエ=ブレッソンの手配があったから。そして彼が木村伊兵衛のパリでの撮影をコーディネートするために同行させたのがロベール・ドアノー。こちらも超有名カメラマン。ドアノーの名前は知らなくても、彼が撮ったこの「パリ市庁舎前のキス」を見たことがある人は意外といるかも知れない。20歳代の頃、これを自宅に飾っていたら「ウチにもある」といった人が2名いたから。
木村伊兵衛がパリでいい写真を撮れたのは、ブレッソンとドアノーという当時のドリームチームのアシストも大きかったと思う。それを言い出すと写真は「カメラマンの才能や能力」か「被写体自体の魅力なのか」にまた話が戻ってしまうが。
「パリ、手鏡、1955年」
「ファッションショー、パリ、1954年」
「ジバンシーのコレクション会場、パリ、1955年
これらはファッションショーの楽屋などを撮影した写真。2枚目のは屋外パーティーみたいだが、ヘアスタイルコンテストのモデルが出番待ちをしているところ。
「マヌカン、パリ、1955年」
フランス語でマヌカンはファッションモデルのことを指す。しかし日本ではかつて1980年代のDCブランドブームの頃に、その販売員をハウスマヌカンと呼び、短縮してマヌカンともいった。当時を知っている人なら、そのブームをおちょくった「夜霧のハウスマヌカン」という歌を覚えているだろう。
YouTubeの動画はこちら
なんとテレサ・テンもカバーしていた!
改めて歌詞を読むとクスッと笑える
ところでマヌカンを販売員あるいはモデルを指す言葉だと知っていても、
それが mannequin を
フランス語読みしたらマヌカン
英語読みしたらマネキン
であることはあまり知られていないかも。マネキンと聞けば服を着せる人形をまず思い浮かべるが、ファッション業界だけではなく臨時の派遣店員をマネキンと呼ぶこともある。なぜか「マネキンさん」と、さん付けすることが多いかな。
例によって前書きが長かったが、
これが木村伊兵衛の撮ったマヌカン。
扇子と組み合わせた帽子?を被ったファッションモデル。かなりアバンギャルドな華やかさである。この表情と手の位置なら携帯電話で話しているようにしか見えないが、もちろんこの時代にそんなものはない。ポーズの解釈も時代によって変わるね。
ところでこれは屋上で撮影したのだろうが、背景の屋根に写っている無数のレンガ色をしたものは何なんだろう。焼く前の陶器を乾かしているようにも思えるが、屋根の上でそんなことはしないだろうし。超ナゾ
そして大先生である木村伊兵衛に何度もダメだしするのは気が引けるが、この写真も傾きが気になる。メインの被写体に合わせて撮るとこうなりがち。モデルの姿勢からカメラが傾いているとは感じなかったのだろう。
さて1950年代半ばのパリを色々と見られて楽しい写真展だった。よくいわれる「空気感も一緒に写し込む」の意味が分かったような気もする。それと教科書でしか知らないような大昔でもないから、現在との連続感があるというか、肌感覚で「こうだったんだろうなあ」とわかる親しみやすさもある。また街角写真なので、どれも気取りのない写真だったのもよかった。言い換えれば「どうだ、スゴイ写真だろ」との押しつけがましさがない。そういうテンションの高い写真はどうも苦手で。でも撮れるものなら撮ってみたい(^^ゞ
写真展は今まで数えるほどしか訪れたことはないが、
もうちょっとマメに足を運ぶか。
おしまい
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