2022年10月17日
句読点がカンマだったりテンでバラバラ その2
70年前に定められた「公用文作成の要領」において横書きの読点はテンの「、」ではなく、カンマの「,」を用いるとされ、なおかつ句点はマルの「。」のままで、ピリオドの「.」にしなかったという謎ルールが採用された。
その理由の記録はないが、有力とされているのが活字が影響したとする説。
手書きじゃないものを活字と呼ぶ場合もあるけれど、狭義で活字とは文字を彫ったハンコみたいなもの。写真は活字は金属(鉛)製だが、木製の時代もあった。
この活字を文章に合わせて1文字ずつ並べ(組むという)、それにインクを付けて紙に刷るのが活版印刷。当然ながら活字を組むのに相当の時間を要するので、今ではほぼ消滅して趣味の印刷物に使われる程度。ちなみに大手の新聞社で活版印刷が使われていたのは1970年代の始めまでだったと思う。
ここでのポイントは活字は1文字単位で作られていること。
縦に日本語を書くときに句読点はマス目の右上に位置する。それに対して横書きでは左下になる。今はパソコンが自動的に調整してくれるが、縦書きが文書の主流だった時代に左下に位置する「、」の活字はなかった(らしい)。英文のカンマ「,」は当然ながら横書き仕様なので左下に彫られている。そこでカンマを使うとしたのが活字影響説。
しかしそれでは句点をピリオドの「.」ではなくマルの「。」のままにした説明がつかない。そこで理由として上げられるのが活字の回転。右上にある「。」を180度回転させると、アラ不思議! 左下に移動するじゃありませんか(^^ゞ もちろんこの回転技はテン「、」には使えない。それがカンマとマルの日英混在な組み合わせになったとするもの。
もっともらしい説に思えなくもないが、左下に位置する横書き用のテン「、」活字を新たに作るのがそんなに負担だったとは考えづらい。だからカンマとマルの組み合わせは謎のまま。
前回に理系ではカンマ「,」とピリオド「.」の組み合わせが使われると書いた。その理由として、論文を書くのに和文タイプライターがよく使われていたからとの説もある。
これが和文タイプライター。
この動画を見ると和文タイプライターは活字を1文字ずつ選ぶような仕組み。だからキーボードもなく英文タイプライターとはまったく構造が違う。英文タイプライターを見たことがない人は、こちらのリンク先動画を参考にして。
それにしても和文タイプライターの面倒なこと。このブログを和文タイプライターで打ったら、ひとつの投稿を書くのに何日かかるやら(/o\) 1980年前後に日本語ワープロが市場に出回った時の価格は200万円以上だった。それでも売れたのがよく分かる。
いくらでも活字を準備できた印刷と違って、和文タイプライターに収められる活字の数は限られている。そこでマル「。」を回転させて横書き用の活字をひとつ増やすのも惜しんで、ピリオド「.」をそのまま使用したとされる。もちろんこれも真偽不明。
面白いのは法曹関連。「公用文作成の要領」による横書きでカンマ「,」とマル「。」を組み合わせる謎ルールの制定は1952年(昭和27年)。なのに法曹界でそれが実施されたのは、ごく最近ともいえる2001年(平成13年)からなのだ。
これは明治以降の100数十年間、裁判関連文書は縦書きと決まっていたのが、2001年1月1日から(つまり21世紀を期に)横書きに変更されたのが原因。そしてとっくに活字の時代は終わって横書きでもテン「、」とマル「。」を左下に配置できるのに、裁判所が律儀に1952年の通達を守ったから。さすがは法の番人というべきか融通が利かないというべきか。
今年の1月に「公用文作成の考え方」が出されてテン「、」とマル「。」に改訂されたから、また対応も変わるのだろう。しかし「公用文作成の考え方」では従来通りのカンマ「,」とマル「。」の組み合わせも認められている。法律の厳格な対応がモットーな裁判所は、曖昧なルールを作らないでくれ!と困っているかも(^^ゞ
ところで句読点は漢文を日本語的に読むために使われた返り点がルーツとされる。レ点とか高校で習ったね。そして日本語の文に句読点を打つ風習は古来の日本にはなく、使われ出したのは明治中頃からのようだ(諸説あり。また使われ出した理由までは調べていない)。
ただしテン「、」とマル「。」の使い方は定まっておらず、文末にテンと今とは逆に使っていた事例もある。またテンは打ってもマルは打たずに1文字空白にしたり、「ウラジーミル、プーチン」と中黒「・」のように使ったり、その他いろいろと今とはずいぶんと違ったようだ。まあテンでバラバラ(^^ゞ
それで1952年(昭和27年)の「公用文作成の要領」以前にも
1906年(明治39年):文部省が教科書の基準とした「句読法案」
1946年(昭和21年):くぎり符号の使ひ方案(上記句読法案のバージョンアップ版)
などが策定されている。
普段は何気なく使っている句読点でも、調べてみるといろいろ奥が深い。そのうち顔文字や絵文字のルールも提唱されたりして(^^ゞ
ーーー続く
次回はようやく菅前総理の話。
断っておくけれど、たいした内容じゃないよ。
その理由の記録はないが、有力とされているのが活字が影響したとする説。
手書きじゃないものを活字と呼ぶ場合もあるけれど、狭義で活字とは文字を彫ったハンコみたいなもの。写真は活字は金属(鉛)製だが、木製の時代もあった。
この活字を文章に合わせて1文字ずつ並べ(組むという)、それにインクを付けて紙に刷るのが活版印刷。当然ながら活字を組むのに相当の時間を要するので、今ではほぼ消滅して趣味の印刷物に使われる程度。ちなみに大手の新聞社で活版印刷が使われていたのは1970年代の始めまでだったと思う。
ここでのポイントは活字は1文字単位で作られていること。
縦に日本語を書くときに句読点はマス目の右上に位置する。それに対して横書きでは左下になる。今はパソコンが自動的に調整してくれるが、縦書きが文書の主流だった時代に左下に位置する「、」の活字はなかった(らしい)。英文のカンマ「,」は当然ながら横書き仕様なので左下に彫られている。そこでカンマを使うとしたのが活字影響説。
しかしそれでは句点をピリオドの「.」ではなくマルの「。」のままにした説明がつかない。そこで理由として上げられるのが活字の回転。右上にある「。」を180度回転させると、アラ不思議! 左下に移動するじゃありませんか(^^ゞ もちろんこの回転技はテン「、」には使えない。それがカンマとマルの日英混在な組み合わせになったとするもの。
もっともらしい説に思えなくもないが、左下に位置する横書き用のテン「、」活字を新たに作るのがそんなに負担だったとは考えづらい。だからカンマとマルの組み合わせは謎のまま。
前回に理系ではカンマ「,」とピリオド「.」の組み合わせが使われると書いた。その理由として、論文を書くのに和文タイプライターがよく使われていたからとの説もある。
これが和文タイプライター。
この動画を見ると和文タイプライターは活字を1文字ずつ選ぶような仕組み。だからキーボードもなく英文タイプライターとはまったく構造が違う。英文タイプライターを見たことがない人は、こちらのリンク先動画を参考にして。
それにしても和文タイプライターの面倒なこと。このブログを和文タイプライターで打ったら、ひとつの投稿を書くのに何日かかるやら(/o\) 1980年前後に日本語ワープロが市場に出回った時の価格は200万円以上だった。それでも売れたのがよく分かる。
いくらでも活字を準備できた印刷と違って、和文タイプライターに収められる活字の数は限られている。そこでマル「。」を回転させて横書き用の活字をひとつ増やすのも惜しんで、ピリオド「.」をそのまま使用したとされる。もちろんこれも真偽不明。
面白いのは法曹関連。「公用文作成の要領」による横書きでカンマ「,」とマル「。」を組み合わせる謎ルールの制定は1952年(昭和27年)。なのに法曹界でそれが実施されたのは、ごく最近ともいえる2001年(平成13年)からなのだ。
これは明治以降の100数十年間、裁判関連文書は縦書きと決まっていたのが、2001年1月1日から(つまり21世紀を期に)横書きに変更されたのが原因。そしてとっくに活字の時代は終わって横書きでもテン「、」とマル「。」を左下に配置できるのに、裁判所が律儀に1952年の通達を守ったから。さすがは法の番人というべきか融通が利かないというべきか。
今年の1月に「公用文作成の考え方」が出されてテン「、」とマル「。」に改訂されたから、また対応も変わるのだろう。しかし「公用文作成の考え方」では従来通りのカンマ「,」とマル「。」の組み合わせも認められている。法律の厳格な対応がモットーな裁判所は、曖昧なルールを作らないでくれ!と困っているかも(^^ゞ
ところで句読点は漢文を日本語的に読むために使われた返り点がルーツとされる。レ点とか高校で習ったね。そして日本語の文に句読点を打つ風習は古来の日本にはなく、使われ出したのは明治中頃からのようだ(諸説あり。また使われ出した理由までは調べていない)。
ただしテン「、」とマル「。」の使い方は定まっておらず、文末にテンと今とは逆に使っていた事例もある。またテンは打ってもマルは打たずに1文字空白にしたり、「ウラジーミル、プーチン」と中黒「・」のように使ったり、その他いろいろと今とはずいぶんと違ったようだ。まあテンでバラバラ(^^ゞ
それで1952年(昭和27年)の「公用文作成の要領」以前にも
1906年(明治39年):文部省が教科書の基準とした「句読法案」
1946年(昭和21年):くぎり符号の使ひ方案(上記句読法案のバージョンアップ版)
などが策定されている。
普段は何気なく使っている句読点でも、調べてみるといろいろ奥が深い。そのうち顔文字や絵文字のルールも提唱されたりして(^^ゞ
ーーー続く
次回はようやく菅前総理の話。
断っておくけれど、たいした内容じゃないよ。
wassho at 23:11│Comments(0)│
│ノンジャンル