2022年11月01日

実は渋柿を食べていた

秋の味覚のひとつである柿。
皮をむくのが面倒だけれどたまに食べている。

柿

おそらく柿についての平均的な認識は次のようなものかと。

   食べられる柿と、食べられない渋柿がある
   渋柿も干し柿にすると渋みが抜けて食べられる

私もずっとそう思っていた。しかし市場に出回っている、つまりフルーツとして生で食べている柿の多くは渋柿だというお話。


農水省の2019年版特産果樹生産動態等調査では66品種の柿が調べられている。このうち甘柿が23品種なのに対して、渋柿が43品種で倍近い。

グラフは同調査データから品種毎の作付面積比率を示したもの。

作付面積

品種によって実の付き方に多少の差はあっても、これが生産量シェアに近いと思われる。そして品種名にピンクの下線を引いたのが渋柿。

この中で市田柿は干し柿専用のようだが、平核無(ひらたねなし)、刀根早生(とねわせ)、甲州百目(こうしゅうひゃくめ)、西条、中谷早生(なかたにわせ)の渋柿はそのまま食べる柿。市田柿の3.5%とその他の16.7%を除いたパーセンテージを合計すると

   渋柿 44.6%
   甘柿 35.3%

となって渋柿は甘柿より生産量が多い。

     ※渋柿の反対語が甘柿。ただし渋柿を食べることはないから、
      普通はわざわざ甘柿とは言わないので農業用語に近いかな。


もちろんこれは世の中に激辛好きがいるようにシブ好きがいるからではない(^^ゞ 実は平核無(ひらたねなし)に代表されるこれらの渋柿は、渋抜きの処理をされてから出荷されている。だから渋柿とは気づかずに食べていたのだ。

 柿の渋みの元はタンニン。
 これは渋柿・甘柿ともに含まれている。
   ↓
 そのタンニンには水溶性と不溶性(水に溶けないとの意味。水溶性は可溶性ともいう)
 があって、水溶性タンニンは唾液で溶けて舌に渋みを感じる。
   ↓
 渋柿のタンニンは水溶性で、甘柿のは不溶性。
 柿の持っている甘みと渋みは渋柿・甘柿とも変わらないが、
 渋柿は渋みにマスキングされて甘みを感じられず、甘柿は渋みを感じないので甘い。

これが渋柿・甘柿の違いをもたらすメカニズム。
そこで「渋いなら水溶性タンニンを不溶性にしてしまえホトトギス」なのが渋抜き。



原理としてはアセトアルデヒドという物質が、水溶性タンニンと結合すると不溶性に変わる性質を利用する。アセトアルデヒドって悪酔いしたり、シックハウスの原因になる有害物質と思っていたけれど、毒も使いようってことか。

具体的には

  お湯に浸す
     柿が窒息状態になり、柿の中にアルコールができ(発酵みたいなもの?)、
     それが分解される時にアセトアルデヒドが生まれる。
     40度くらいの温度がアセトアルデヒドの生成に適しているから水ではなくお湯。

  アルコールを垂らす
     ヘタに焼酎などを垂らすらしい。
     柿が吸い込んだアルコールからアセトアルデヒドが生まれる。

  炭酸ガスで密閉する
      お湯と同じように柿が窒息状態になりアルコール→アセトアルデヒド。

  皮をむいて干す(干し柿)
      果物は皮を通じて呼吸している。皮をむくと実の表面に薄い膜ができて
      酸素を通さなくなる→窒息状態→以下同上。


お湯とアルコールは家庭での渋抜き方法で、柿農家は品種にもよるが炭酸ガスを使うのが主流。炭酸ガスを満たしたコンテナに渋柿を約48時間密閉し、その後に取り出してさらに48時間ほどで渋が抜ける。もっとも渋みの原因であるタンニンを水溶性から不溶性に変えたのだから、渋抜きというより渋隠しの作業である。

ところで水溶性と不溶性の話は分かったとして、柿農家はどうして手間とコストを掛けて渋柿を甘柿にするのだろう。最初から甘柿を育てればいいのにと思ってしまうが、その理由は少し調べただけでは分からなかった。地域によって育つ柿の品種が違うのかな。ナゾ


なお料理やジャム作りで煮込むと、タンニンとアセトアルデヒドの結合が外れて、元の水溶性タンニン=渋柿に戻る。そういう場合は元から甘柿の品種を使う必要がある。まあ柿料理や柿ジャムは食べたことがないけど。

そういえば子供の頃から渋柿の存在を知ってはいても、それを食べた経験はない。どれくらい渋いものなのか、何事も経験として、ひと囓りくらいは試してみたい気もする。

wassho at 23:43│Comments(0) ノンジャンル 

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