2023年08月07日

防犯カメラと監視されない権利 その2

日本の500万台に対して、中国では2021年時点で5億7000万台の防犯・監視カメラがあるとされる。中国の人口は日本の12倍、また面積は日本の26倍なのにカメラの数は何と114倍。そして、そのうちのどれだけの台数が接続されているかは分からないが、中国政府は天網(てんもう)あるいはスカイネットと呼ばれる社会監視システムを構築している。

簡単に言うとカメラが捉えた画像を顔認証システムで解析し、いろいろなデータベースと照合して人物を特定する仕組み。その速度は1秒で写っている人物が誰なのかを中国国民14億人から識別できるらしい。要は常に誰がどこにいるかを把握するシステム。当然、誰と一緒にいるかも分かる。おそらく中国に入国した外国人も対象。(中国では入国時に顔写真と指紋をとられる)

もちろんこの天網スカイネットも防犯のために使われているーーーことになっている。でもまあ政府にたてついたメディア関係者やジャーナリストが突然に姿を消す国である。活動家の不当逮捕、ウイグルやチベットなどでの少数民族の弾圧に利用されているとの批判もある。ちなみに中国は軍事大国であるが、治安維持費はなんと軍事予算を上回っている。
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画像は天網スカイネットとは直接関係なくイメージとして https://jcvisa.info/facial-recognition-helps-with-catching-suspect-in-crowd-of-concertgoers/とhttps://jp.wsj.com/articles/SB11588421679375374726504583234572468806316から引用


ところで日本には治安維持費と名前のつく予算項目はない。警察の予算がそれに相当するとしたら2021年度では国家支出である警察庁予算が2794億円、各自治体が支出する各都道府県の警察本部への予算が3兆3739億円。合計すれば3兆6533億円。そして同年度の防衛予算は5兆1235億円なので、警察予算は防衛予算の71%に相当する。

警察=治安維持(言葉の定義も難しいが)だけではないとしても、想像よりはるかに警察の予算は大きかった。各都道府県の予算に占める警察支出は平均で4.7%にもなる。中国人は治安維持で締め付けられて可哀想、それに較べて日本は〜と自慢しようと思ったのに、調べたらヤブヘビになってしまった(^^ゞ 警察予算の92%は各都道府県負担なので防衛費と違って国会で議論もされないのは問題かも。なお中国の治安維持費(公共安全費と呼ばれる)にも普通の警察活動費用が含まれている。
5警察と自衛隊



さて前回の投稿で書いた日本の警察の街頭防犯カメラシステムは、中国の天網スカイネットと較べると圧倒的に数も少ないし、画像解析や各種データベースとの連携もなく、24時間警官が目視で対応している模様。

しかし中国の技術レベルには追いつけないかも知れないが(もはやこう書かなければいけない状況なのが残念)、やがてAIなどを駆使した識別システムになるだろう。そして民間の防犯・監視カメラともつながり、将来的にはドライブレコーダーも統合した大規模な監視システムが出来上がる。固定カメラやクルマでカバーできない場所は監視ドローンが巡回している、パソコンやスマホに搭載されているカメラも秘密裏にーーーなんてSF的な未来も想像できる。まさにディストピア(ユートピアの反対語)。


   そんな監視社会はイヤじゃあ(/o\) (/o\)(/o\)


これは監視カメラが防犯に役立つのとはまた別の次元の話。デスクの横であなたの上司がずっといて監視していたら、できる仕事もできないでしょ。


「誰からも監視されない権利」は憲法13条の
 
    すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する
    国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、
    最大の尊重を必要とする

に含まれていると考える。

ただクセモノは「公共の福祉に反しない限り」との文言。この「公共の福祉」は13条を含めて4つの条文で使われている憲法のキーワード。ここでの福祉は老人介護や弱者救済といった福祉と聞いて一般にイメージするものではなく、社会共通の利益のような概念。国語辞書には載っておらず法律独特の用語である。

だから監視されない権利はあるけれど、
防犯のためならその権利も制限されるとの解釈になる。

実際に「防犯」カメラをもっと増やすのには過半数以上が賛成し、プライバシーの侵害などを危惧する声は少ない。また中国国内でも天網スカイネットに大きな反発はなく受け入れられているとも聞く。また監視社会に異を唱えると、犯罪を犯すつもりがなければ関係ないはずと底の浅い反論がかえってきがち。

しかし国家権力は国民を締め上げて、隙あれば懲らしめるようにできている。それは人間の性(さが)が生み出した特性。私だって権力を握ったらガンガンやるでえ(^^ゞ そして全国民の居場所を特定し、誰と誰がつるんでいるのも把握できるなんて、昔なら夢物語だったものがテクノロジーの進歩によって可能になり、また防犯のためとの大義名分も立つのだから、そんな超監視システムは必ず導入される。そして必ず悪用され、また必ず情報が漏洩するのも歴史が証明するところ(/o\)



ついでに最新のテクノロジーを紹介すると、監視カメラで口元の動きを解析して、マイクで音声を拾えなくても会話の内容が分かるソフトウエアも開発されている。

さらに歩容認証という歩き方(歩く見た目だから容姿の「容」)を解析する技術は昔からあるものの、現在では対象者の3Dモデルを作り、全身すべての特徴を元に識別するようになっている。身長や歩幅は当然として、何とオシリの揺れかたまで捉える。これを使うと背中を向けていても腹ばいになっていても人物を特定できるらしい。

つまり顔を隠したって監視カメラの目から逃れるのは不可能。
着ぐるみを着たら余計に目立つし(^^ゞ

また昔からエシュロンという全世界的な電話やメールの盗聴システムがあると噂されていたが、2013年にエドワード・スノーデンが実際はプリズムと呼ばれるもっと凄い監視システムが実在することを告発した。もちろんプリズムを運営するNSA(アメリカ国家安全保障局)はテロ対策のためと「公共の福祉」を主張している。こういったものも監視カメラネットワークと連動して国民に目を光らす。


  居場所、行動、考え、交友関係、生活実態ーーー
  あらゆることがお上に筒抜けになる時代が、
  そう遠くないうちにやってくる。

暑い夏には怪談もいいけれど、こういうのもゾッとして涼しくなるでしょ(^^ゞ

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おしまい

wassho at 23:45│Comments(0) ノンジャンル 

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