2023年08月18日

ウクライナ侵攻で少し変化した戦争観 その2

前回に写真で紹介した日本とウクライナの被害程度の差は、おそらく攻撃する方法・武器ひいては戦争の戦い方の違いによるものだと考えている。

日本に襲来したのはB-29という爆撃機。

B29

爆撃機とは空から地上攻撃をするのが任務の軍用機。全長は約30m。参考までに中型旅客機であるボーイング737と同じくらい。なおB-29もボーイング社製。ただし頭についている「B」はボーイングの略ではなくてBomber(ボマー=爆撃機)の意味。飛行機を撃ち落とす役割の戦闘機にはFighter(ファイター)の「F」がよく使われる。


それがこうやって爆弾をバラ撒いた(>_<)
なぜかアメリカ軍機なのにロシアと同じZマークが!?→実は単なる所属部隊名表示

爆弾投下

東京を例に取ると106回の空襲を受けており、特に1945年(昭和20年)3月から5月にかけての5回が大規模だったとされる。

       襲来したB-29   投下爆弾量
 3月10日   325機      1665トン (これが東京大空襲と呼ばれる) 
 4月13日   327機      2119トン
 4月15日   194機      1110トン
 5月24日   558機      3645トン
 5月25日   498機      3262トン

5回を合計するとB-29襲来は延べ1902機で投下された総爆弾量は1万1801トン。1機あたり平均だと6.2トンの計算。ちなみにB-29の爆弾最大積載量は4.5トンから9トンといわれている(機種によって違う)から、まあ目一杯積んできたのだろう。

なお広島と長崎に落とされた原爆は爆薬に換算すると

  広島1万5000トン相当
  長崎2万1000トン相当

なので1902機での空襲以上の破壊をたった1機の攻撃で実行した計算になる。いかに核兵器の威力が凄まじいかが分かる。 

軍事知識はないから正確ではないかも知れないが、とりあえず1万トン以上の爆撃を受けると、前回に載せた写真のように都市は焼け野原の更地になってしまう。



さてウクライナ侵攻では、爆撃機による空爆はほとんど行われておらず都市部への攻撃はミサイルによるもの。防衛省の資料によると2023年2月23日時点で5000発以上が打ち込まれたという。ニュースで名前を聞くロシアのミサイルは、航空機から発射する「キンジャル」「コディアック」艦船から発射する「カリブル」そして地上発射型の弾道ミサイル「イスカンデル」あたり。

これはイスカンデル。
その名前を聞くと ♪宇宙戦艦ヤ〜マ〜トのメロディーを思い出してしまう(^^ゞ

イスカンデル

それぞれの搭載爆薬量は

   キンジャル  500kg
   コディアック 400kg
   カリブル   500kg
   イスカンデル 490kg

念のために書いておくと500kgとは0.5トンである。つまりミサイルの破壊力は爆撃機B-29だと6.2トン搭載できた爆弾量の8%ほどと極めて小さい。5000発 × 500kg としても2500トンに過ぎない。さらに報道によればロシアのミサイルは飛来途中で撃墜されているものも多い。これが日本は空襲で焼け野原の更地になったのと較べて、ウクライナの街が「思ったより傷んでいない」と感じる原因だろうと考えている。


また前回に載せた写真以外に、
ウクライナからはこのような惨状が届く一方で、
201


ごく普通の市民生活も伝えられて、その違いにいささか混乱してしまうが、(写真が撮られたのは2022年6月と2023年6月で、https://www.asahi.com/articles/photo/AS20220705002218.htmlとhttps://ieei.or.jp/2023/06/special201704042/から引用)
202

203


(参考までに空襲された銀座付近の様子)
204

それもひとつの都市に1万トン以上の爆弾、あるいはそれ以上の破壊力を持つ原爆を落とされた日本と、全土(日本の1.6倍広い)で2500トンのミサイル攻撃を受けたウクライナの違いだと分かれば理解ができる。


なお多い日には1日に数万発が発射される砲弾も計算に入れるべきだが、残念ながらそこまでは情報収集に手が回らない。ロシアが主力としている152mm砲弾(直径15.2cmとの意味)の爆薬量は6kgほど。ただし1発の威力は小さくても使用量は桁違い。この戦争の兵士を含む死傷者の80%は砲弾によるものとの解説もあった。射程距離は25kmほどだから主に前線で使用されていると思われる。
榴弾砲

正確な情報にはまったく基づいていないが、とりあえず仮定の計算をしておくと

  6kg × 1日1万発 × 侵攻から1年半(548日)=3万2880トン

ウクライナ軍も同じくらい撃ち返しているから2倍して6万5760トンと凄まじい量になる。ただし都市部での撃ち合いは少ないので、前回に載せた写真のように「思ったより街は傷んでいないな」との印象になる。逆にこのページの破壊された村の写真は砲弾によるものだろう。(ただしよく見れば建物はそれほど崩壊していない)

参考までに沖縄戦で撃ち込まれた砲弾は3ヶ月間でなんと約20万トン。広島の原爆13倍の爆薬量。それにより島の一部の地形が変わったといわれる(>_<)



さてロシアがなぜ空爆(ミサイルではなく爆弾を落とすトラディショナルな攻撃)をしないのかは知らない。制空権を握っていないから爆撃機による空爆はリスクが高いと考えているのか、あるいはすべてを破壊する必要はなく要所要所の攻撃で充分と考えているのか。ひょっとしたら第2次世界大戦のような無差別な空爆はもはや許されないと、さすがのプーチンでもわきまえている?

その理由はともかく、同じ戦争でも太平洋戦争で日本が体験した(と私がイメージしている)ものとはずいぶんと違う攻撃だと、戦争だって時代と共に変化するとーーー実に当たり前なことに今さらながら気がついた。そういえば侵攻が始まった頃、民間人を避難させる「人道回廊」なる一時的休戦協定が報道されて、近頃の戦争はそんな仕組みがあるんだと驚いたのも思い出す。

それはおそらく戦争に特に関心を持っているわけではないから、歴史の授業で習ったり、終戦の日前後にマスコミが太平洋戦争について特集する内容をそのまま受け入れて、ステレオタイプ的な戦争観を持っていたからだと思う。だからヘンな表現になるものの、ウクライナ侵攻を通じて少し視野が広がったような気持ちになっている。民間人を巻き込む無差別大規模空襲をしなくなっただけでも、第2次世界大戦から80年近くたって、多少は人類が進歩したのかと思ったり。

もっともそれは兵士の確保も含めて戦争のコストが上昇し、もはやどの国も何百機もの爆撃機を保有しなくなったせいかも知れない。またもし使用すれば、現在の核兵器は小型のものでも広島・長崎に投下された原爆の5倍から10倍の威力を持っているから、戦争が破滅的大惨事の入口であるのに変わりはない。だから「昔と違って戦争は皆殺しを目的としてない」からといって、戦争をひとつの問題解決手段として肯定する気持ちはまったくない。そのあたりは誤解なきようお読み願いたい。

(余談になるが東京への空襲の資料を調べていて、1902機も爆撃機を飛ばすとそのうちのある程度は撃墜もされるのだから、たった1回の攻撃で同じ効果を得られる核兵器は、軍司令官サイドの視点に立てば魅力的なんだろうなと思った)


オチのない話でゴメンm(_ _)m

太平洋戦争の歴史を通じて戦争の悲惨さを胸に刻むのは当然であると同時に、原爆まで落とされたあの戦争を唯一のスタンダードとして、現代史の戦争を見るのもちょっと違うかなと思ったりした終戦の日。

ウクライナでの戦争が早く終わりますように



おしまい

wassho at 09:10│Comments(0) 社会、政治、経済 

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