2024年02月08日
デイヴィッド・ホックニーとキュビスム
1月28日まで国立西洋美術館で開催されていたキュビスム展。その鑑賞日記は5回に分けてブログに書いた。そこでは触れなかったものの実は会場を回りながら、その展覧会には出品されていないある画家と、35年ほど昔の出来事を思い出していた。
その画家とはデイヴィッド・ホックニー。
ホックニー? それをキュビスムの展覧会で? と絵に興味のある人は思うかも知れない。
一般にホックニーといえばお洒落なアートのイメージ。
Sun State I 1973年
そしてプールの絵が人気。
眺めているだけで幸せな気分になる画風。
3枚目の Day Pool with Three Blue は私が初めて買ったアートポスターでもある。
A Bigger Splash 1967年
Steps Into The Water 1975年
Day Pool with Three Blues 1978年
ホックニーは何度か来日していて、こんな絵もある。これは私が今まで目にした絵で最もなだらかに描かれた富士山。日本人の画家ならこうは描きづらい
Mt. Fuji and Flowers 1972年
そんなホックニーに対してキュビスムといえば、一般的にはピカソやジョルジュ・ブラックが描いた難解でわけのわからない暗い絵をイメージする。彼とは正反対で何の接点もない。私も以前はそう思っていた。
それで話は35年ほど前に遡る。
初めてニューロークを訪れた私は、お上りさんよろしくメトロポリタン美術館にも足を運んだ。ちなみにメトロポリタン美術館の床面積は18.5ヘクタール、上野の国立西洋美術館は1.7ヘクタールなのでその11倍近くある超巨大な美術館(床面積=展示面積ではないとしても)。とても1日で見て回れるものではない。
なのに私は入り口近くにあった古代エジプトのコーナーがやたら気に入り、そこでけっこうな時間を費やしてしまったため、残りはまさに駆け足状態だった。だから何を見たのか今ではほとんど覚えていない(/o\)
でもその中にホックニーの作品もあった。メトロポリタン美術館はクラシックな作品を展示しているイメージを持っていたので、ホックニーの展示自体が当時は意外に思えた。そしてそこにはポスターなどで見慣れたホックニー調の絵画数点と、ホックニーに限らず今までに見たことのないコラージュ写真の展示が。
そのコラージュのセンス、カッコよさに痺れた。ただし、そのときは美術の知識もあまりなくキュビスムと結びつけては考えなかった。しかし後年になってあれはホックニーのキュビスムだったのかと気付く。
月日は流れて、そんなこともすっかり忘れてしまっていたが、先日のキュビスム展でホックニーを思い出したしだい。あの展覧会でホックニーを思い浮かべていた人は他にもいただろうか。
そしてネットで調べてみたら、かなり多くの画像を見つけたので、自分の備忘録を兼ねて紹介しておこうと書いたのが今回のブログ。
なおキュビスムの特徴を因数分解すれば
多角度の視点を平面(キャンバス)に落とし込む
対象を解体・単純化して幾何形態に置き換える
が古典的な解釈になる。ホックニーの作品は写真なので当然ながら多角度の視点で捉える要素のみ。それが理由なのかどうかは知らないものの、あまりキュビスムとはいわずフォトコラージュと紹介されるケースが多い。またホックニー自身は「ジョイナーフォト」と呼んでいる。ジョイナー Joiner とはたぶん、つなぎ合わせる人=指物師、建具職人の意味だと思う。
まずはポートレートから。
Mother 1, Yorkshire Moors, August 1985
Billy Wilder Lighting His Cigar 1982年
Mother 〜は多角度の視点をまとめただけだが、Billy〜が面白いのは葉巻に火をつける、口にくわえると時間の経過が1枚の写真にまとめられているところ。下のThe Skater〜はコラージュによって動いている感じがよく出ている。阿波踊りやフラダンスの写真を撮った経験があるけれど、どうしてもダルマさんが転んだ的な「瞬間静止」写真になりがち(^^ゞ
The Skater, New York 1982年
室内での撮影あれこれ。
パソコンで読んでいるなら画像クリックで拡大して眺めて欲しい。
Christopher Isherwood Talking to Bob Holman 1983年
上のジョイナーフォトにはそのベースと思われる絵画もある
Christopher Isherwood and Don Bachardy 1968年
George, Blanche, Celia, Albert And Percy, London, January 1983年
Luncheon at the British Embassy, Tokyo, February 16th 1983
Sunday Morning, Mayflower Hotel, New York Nov. 28, 1982
これはかなり大胆な多角度の視点のまとめ方。
Raymond Foye Looking At Brooklyn, Dec. 1982
静物画的?ジョイナーフォト。
The Desk, July 1st, 1984
Chair 1985年
ーーー続く
その画家とはデイヴィッド・ホックニー。
ホックニー? それをキュビスムの展覧会で? と絵に興味のある人は思うかも知れない。
一般にホックニーといえばお洒落なアートのイメージ。
Sun State I 1973年
そしてプールの絵が人気。
眺めているだけで幸せな気分になる画風。
3枚目の Day Pool with Three Blue は私が初めて買ったアートポスターでもある。
A Bigger Splash 1967年
Steps Into The Water 1975年
Day Pool with Three Blues 1978年
ホックニーは何度か来日していて、こんな絵もある。これは私が今まで目にした絵で最もなだらかに描かれた富士山。日本人の画家ならこうは描きづらい
Mt. Fuji and Flowers 1972年
そんなホックニーに対してキュビスムといえば、一般的にはピカソやジョルジュ・ブラックが描いた難解でわけのわからない暗い絵をイメージする。彼とは正反対で何の接点もない。私も以前はそう思っていた。
それで話は35年ほど前に遡る。
初めてニューロークを訪れた私は、お上りさんよろしくメトロポリタン美術館にも足を運んだ。ちなみにメトロポリタン美術館の床面積は18.5ヘクタール、上野の国立西洋美術館は1.7ヘクタールなのでその11倍近くある超巨大な美術館(床面積=展示面積ではないとしても)。とても1日で見て回れるものではない。
なのに私は入り口近くにあった古代エジプトのコーナーがやたら気に入り、そこでけっこうな時間を費やしてしまったため、残りはまさに駆け足状態だった。だから何を見たのか今ではほとんど覚えていない(/o\)
でもその中にホックニーの作品もあった。メトロポリタン美術館はクラシックな作品を展示しているイメージを持っていたので、ホックニーの展示自体が当時は意外に思えた。そしてそこにはポスターなどで見慣れたホックニー調の絵画数点と、ホックニーに限らず今までに見たことのないコラージュ写真の展示が。
そのコラージュのセンス、カッコよさに痺れた。ただし、そのときは美術の知識もあまりなくキュビスムと結びつけては考えなかった。しかし後年になってあれはホックニーのキュビスムだったのかと気付く。
月日は流れて、そんなこともすっかり忘れてしまっていたが、先日のキュビスム展でホックニーを思い出したしだい。あの展覧会でホックニーを思い浮かべていた人は他にもいただろうか。
そしてネットで調べてみたら、かなり多くの画像を見つけたので、自分の備忘録を兼ねて紹介しておこうと書いたのが今回のブログ。
なおキュビスムの特徴を因数分解すれば
多角度の視点を平面(キャンバス)に落とし込む
対象を解体・単純化して幾何形態に置き換える
が古典的な解釈になる。ホックニーの作品は写真なので当然ながら多角度の視点で捉える要素のみ。それが理由なのかどうかは知らないものの、あまりキュビスムとはいわずフォトコラージュと紹介されるケースが多い。またホックニー自身は「ジョイナーフォト」と呼んでいる。ジョイナー Joiner とはたぶん、つなぎ合わせる人=指物師、建具職人の意味だと思う。
まずはポートレートから。
Mother 1, Yorkshire Moors, August 1985
Billy Wilder Lighting His Cigar 1982年
Mother 〜は多角度の視点をまとめただけだが、Billy〜が面白いのは葉巻に火をつける、口にくわえると時間の経過が1枚の写真にまとめられているところ。下のThe Skater〜はコラージュによって動いている感じがよく出ている。阿波踊りやフラダンスの写真を撮った経験があるけれど、どうしてもダルマさんが転んだ的な「瞬間静止」写真になりがち(^^ゞ
The Skater, New York 1982年
室内での撮影あれこれ。
パソコンで読んでいるなら画像クリックで拡大して眺めて欲しい。
Christopher Isherwood Talking to Bob Holman 1983年
上のジョイナーフォトにはそのベースと思われる絵画もある
Christopher Isherwood and Don Bachardy 1968年
George, Blanche, Celia, Albert And Percy, London, January 1983年
Luncheon at the British Embassy, Tokyo, February 16th 1983
Sunday Morning, Mayflower Hotel, New York Nov. 28, 1982
これはかなり大胆な多角度の視点のまとめ方。
Raymond Foye Looking At Brooklyn, Dec. 1982
静物画的?ジョイナーフォト。
The Desk, July 1st, 1984
Chair 1985年
ーーー続く
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