2024年03月11日

日本の半分は雪国だったーーーと、その闇

かなり以前、まだタクシーに乗るとラジオが流れていた頃に「日本の半分は雪国ですからね」と出演者同士の会話が聞こえてきた。そんなわけないだろ、どういうこと?と思ったものの、その続きをあまり聞く間もなく目的地に到着。

すっかり忘れていたが、2月5日に東京でも雪が積もって、
その景色を眺めているときに突然「日本の半分は雪国」を思い出した。
IMG_5698

そんな話はタクシーを降りて10秒後には忘れていたのに。
何度か書いたが脳はすべてを記憶していて「忘れた領域」と「覚えている領域」に分散格納しているだけ。何かのきっかけで忘れていた記憶が「思い出した」領域に移動するとの仮説を改めて確信した。「思い出したくない記憶」がたくさんあるから、この仮説が間違っていますように(^^ゞ


それはさておき調べてみると、

  雪国について気象学的な定義や基準はない
  その降雪量や豪雪についても同じく

しかし豪雪地帯対策特別措置法という昭和37年(1962年)に成立した法律があり、それによって指定された地域を都道府県単位で数えると24あり、全部で47都道府県だから「日本の半分は雪国」との理屈になるようだ。

これがその指定地域。
青が特別豪雪地帯、水色が豪雪地帯。
数字は市町村数で括弧内はそのうちの特別豪雪地帯数。
マップ


都道府県名で書くと

   北海道    
   青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県
   栃木県 群馬県
   新潟県 富山県 石川県 福井県
   山梨県 長野県 岐阜県 静岡県
   滋賀県 京都府 兵庫県
   鳥取県 島根県 岡山県 広島県

地図を眺めてみると中国山陰地方には雪国の印象は持っていなかったなあ。また静岡に豪雪地帯があるのは意外だった。静岡市の井川地区・浜松市の水窪地区とのことで富士山とは関係ないみたい。それと長野はあまり雪が降らないんだね。

面積や人口で較べたのがこちら。
面積比だとまさに半分になっている。人口では約15%。ここまでの資料はhttps://www.mlit.go.jp/kokudoseisaku/chisei/content/001584511.pdfによる
表



ところでである。

豪雪地帯対策特別措置法が豪雪地帯と指定する基準だけれど、まず法律本体には「政令で定める基準に従い」としか書かれていない。

その政令であるが、豪雪地帯の指定基準に関する政令(昭和三十八年政令第三百四十四号)によると、

  国土交通省令・総務省令・農林水産省令で定める期間における

  累年平均積雪積算値が五千センチメートル日以上の地域

とある。累年平均積雪積算値とは

  毎日の積雪量の平均値を、積雪が始まる秋の終わりから積雪が終わる、
  翌年の春の初めまで日を追って順次加え合わせた値

になる。この値は単位をセンチメートルにする慣習らしくてピンとこないものの、五千センチメートルは50メートル。仮に12月15日〜3月15日までの90日間で割れば、1日あたり55.5cmになる。降雪量ではなく積雪量だから毎日どれくらいの雪が降るかはイメージしづらい。しかし屋根の雪下ろしは1メートル積もったらといわれるから意外と低い値。東京じゃ数センチ積もっただけで大騒ぎになるが。


そして期間については「国土交通省令・総務省令・農林水産省令で定める期間」とあるように、なぜか別の政令である「豪雪地帯の指定基準に関する政令に規定する期間及び施設を定める省令(昭和三十八年総理府令第四十七号)」に記述されている。

それによると

  気象官署(出張所を含む。)又は気象官署から観測の委託を受けた者が、

  その観測点において、積雪に関する観測を開始した日の属する年の翌年
  (その日が一月一日である場合は、その日の属する年)から

  昭和三十七年の積雪の終期までとする。

  ただし、その期間は、三十年以上でなければならない。

となっている。文章がややこしいので要約して平たく書くと、ミニマムで法律のできた昭和37年(1962年)から過去30年間!

近頃よく使われる「大切な事なので2回言いました」をすれば、92年前から62年前の積雪記録を元に豪雪地帯の指定が行われている!天気予報が始まったのは明治16年(1883年)からであり、全国ほとんどの地域ではさらに昔からのデータが加えられているはず。問題なのは最新データが62年前の昭和37年止まりなこと。

政令の調べ方が間違っているかと思ったが「国立研究開発法人 土木研究所 寒地土木研究所」という公的機関が2003年に出しているこのレポートでも指定基準の概要として同じく「昭和37年の積雪の終期」と書かれているから、たぶん間違いないはず。


それにしてもーーー

これだけ地球温暖化が叫ばれ、昨今はスキー場が雪不足で過去最多の倒産となっているのに62年前のデータに基づいた行政なんてどういうこと??? もう豪雪地帯とはいえないところもあるだろうし、また同じだけの積雪があっても昭和37年(1962年)と現在では雪を克服するテクノロジーも違う。例えばクルマなんて昭和37年には鎖(くさり)の形そのもののタイヤチェーンしかなかった。しかしその後スノータイヤ〜スパイクタイヤ〜スタッドレスタイヤと開発され大抵の雪道なら普通に走れる。

しかもこの法律は昭和46年(1971年)に特別豪雪地帯における特例措置が設けられ、その後10年毎に特例措置の期限を延長している(特別措置法の中の特例措置なんて実にわかりにくい手法)。さらにこの法律は過去に21回も改正されている。平成以降だけでも14回。そういう際に基準見直しの話は出なかったのか? さらに言えば、こんなに永続的に続くならもはや「特別措置法」ではない。


おそらくはーーー

この豪雪地帯対策特別措置法に基づいて様々な公共事業が行われたり交付金や補助金が出る。それが利権となって、なおかつ昭和37年(1962年)から62年間も続く強固な利権の巣窟構造を形成していて誰もそれを崩せないんじゃないか。野党議員だって地元利権を減らせば選挙が危ない。名前は挙げないけれど政治絡みの圧力団体ぽいところのホームページもあり、特例措置の延長を主張していた。

もちろん全国で532ある豪雪地帯の実情を調べたわけじゃない。本当に支援が必要な地域があるとしても、豪雪地帯対策特別措置法のおかげでウハウハなところもあるだろうと思い、政治と行政の闇を見た気分。

何たってその指定は最新で62年前の気象データが基準なのだから。
大切な事なので3回書きましたm(_ _)m

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wassho at 22:13│Comments(0) 社会、政治、経済 

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