2024年08月22日

手話通訳が目障りだったオリンピック閉会式 その2

NHKは閉会式を

   総合テレビでは手話なし
   Eテレでは手話付き

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で放送する予定だった。しかし閉会式のあった8月11日に台風5号が東北地方に接近したので、総合テレビは閉会式の放送を開始直後にキャンセルして台風情報番組に変更。防災情報を優先して放送するのは法律で定められているNHKに課せられた役割。

実際は総合テレビのサブチャンネルで閉会式放送は継続されていたのだが、テレビの(リモコンで呼び出せる)番組表にはそここまで細かくは表示されず、私が閉会式を録画しようと思った10日の夜に、既に閉会式の放送予定が番組表に載っていたのはEテレだけだった。それがEテレで録画した理由。

自宅のテレビは個別の番組録画とは別に、6チャンネル分(NHK総合、日テレ、TBS、朝日、フジ、テレ東に設定している)を24時間自動録画する機能が付いている。それを使って閉会式開始前後の時間帯の総合テレビを確認してみるとと、サブチャンネルへの切り替え方法が案内されていた。画像はテレビ画面の撮影、以下同様
200

そういえばサブチャンネルとは、そんな機能があるとは知っていたものの、今まで見た経験はないな。とりあえず24時間自動録画にサブチャンネルも録画されていないかと、案内されていた方法を試してみたがテレビは反応せず。やはりサブチャンネルまでは録画されていないみたい。ネットで調べるとテレビの設定を変えれば録画も可能なようである。ただしだいたい何が放送されているのかもよく知らないので今のところ試していない。それとサブチャンネルは画質が落ちるらしい。

というわけで朝の4時から始まる閉会式を録画で見た人は多かったと思われるが、実質的にそれはEテレ一択=手話がメインで、閉会式の中継は縮小されてしか写っていない映像で見る以外になかったのである。

つまりこの手話通訳者が主役の画像。
右側を空けてわざわざ中継映像に被る位置に立つのは未だにナゾ
201比較1


もっとも総合テレビで閉会式の放送を続けたとしても、今回は台風が接近していわゆるL字型画面での放送になってしまっているため、本来のサイズでは見られなかった。
202比較2


サブチャンネルがL字なしのフル画面で見られたかどうかは知らない。
この画像はL字部分をトリミングして作成。
203比較3

やはりこうやって較べるとフル画面が断然いいね。
以前にL字型画面を選択可能にして欲しい、録画ではデフォルトで消しておいて欲しいなんて話を書いたけれど、まだまだ道は遠いようでーーー



さてどうしてNHKは

   総合テレビでは手話なし
   Eテレでは手話付き

と2本立てで放送していたのか。
調べてみるとどうやらそれは前回の2020東京オリンピック(コロナで延期になって開催されたのは2021年)に遡る。

ポイントだけを書くと、東京オリンピックでNHKは

   開会式を手話通訳者なしで放送した
       ↓
   その直後に、全日本ろうあ連盟などの団体が手話を付けるよう要求
       ↓
   それを受け後日のオリンピック閉会式とパラリンピック開会閉会式で

      総合テレビでは手話なし
      Eテレでは手話付き

   で放送したとのいきさつ。
  
この総合テレビとEテレで放送を分ける方針は今回も踏襲され、またパリオリンピックでは開会式も同様の措置がとられている。


全日本ろうあ連盟とは15,803名(2024年3月31日現在)の会員がいる聴覚障害者の団体。ホームページによると基本的な取り組みとして、手話通訳の拡大が最初に掲げられている。

    1.手話通訳の認知・手話通訳事業の制度化
    2.聴覚障害を理由とする差別的な処遇の撤廃
    3.聴覚障害者の社会参加と自立の推進

ちなみに「聾(ろう)」は耳が聞こえない、「唖(あ)」は声をうまく出せない・話せないを意味する。昔は「聾唖(ろうあ)の人」と呼んだが、今は「ろう者」が標準みたい。この団体も名前は「ろうあ連盟」なのに「ろう者の当事者団体」と説明している。

なお聴覚障害者=ろう者(まったく聞こえない)+難聴者がその定義で、手話を使うには主にろう者。しかしろう者は聞き慣れなくてイメージが湧かないので、今回は聴覚障害者の用語を使う。


さてNHKは抗議を受けて、東京オリンピック閉会式とパラリンピック開会閉会式を「総合テレビでは手話なし」「Eテレでは手話付き」で放送し、しかもその手話付きとは前回に一般的な手話付き放送と比較したように、聴覚障害者のために手話も付けたというより、手話通訳者を最大限に大きく写し、聴覚障害者向け専用の番組を用意したといえる配慮をした。

だからこれで丸く収まり一件落着かと思ったら、
全日本ろうあ連盟は不満たらたらだったのである。

連盟のホームページに掲載されている資料を読むと、まず彼らは東京オリンピックの開会式で手話が付けられなかったことに対して

   「差別であると考えます

と表明している。
そしてNHKが「総合テレビでは手話なし・Eテレでは手話付き」の対応を発表すると、

   「総合テレビで手話言語通訳付き放送を実現していただきたく

と再度要望を出している。
その理由として、資料に書かれた文章はやや論旨が一定していないものの

   「わが国の視聴者の中には、『多様性と調和』への理解がなく手話言語通訳が
    目障りだとの意見が残念ながら一定数存在します」

   「多様性と調和を掲げるオリンピックだからこそ、NHK総合やEテレの
    それぞれとも閉会式を放映するにあたり、手話言語通訳を付与することが
    多様性と調和がなされた放送・サービスであると考えます」

とあり、多くの人が見る総合テレビでの手話つき放送が、国民への教育につながると考えているように思える。また「国連が定めたSDGsの『誰一人取り残さない』という理念」なども持ち出して自らの意見の正当性を主張している。

とにかく全日本ろうあ連盟にとって、
手話付き放送は聴覚障害者への利便性向上の実現よりも、
健常者へ手話を見せつけるのが目的だったようで、
総合テレビで手話が付かないのが我慢ならなかった様子がうかがえる。




ーーー続く

wassho at 21:24│Comments(0) 社会、政治、経済 

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