2024年10月22日

カモシカの名前由来の諸説

01-01

しばらく前に見たテレビ番組。
取り上げられていたのはカモシカ。

カモシカについては何かと知らない話だらけだった。
まずカモシカはシカではなく、ウシやヤギと同じウシ科の動物なんだって。

蹄(ひづめ)が2つに分かれており、さらに大きく開くこともできるので踏ん張りがきく。それでカモシカは山の標高の高いところや急斜面に生息している。画像はテレビ画面を撮影
01-02蹄

しかし平地や標高の低い場所に住むシカが、この30年間で5倍にも増えてカモシカの住むエリアにも進出。エサとなる草を食べ尽くすのでカモシカの生息が脅かされているというのが番組の趣旨。



ところでカモシカのカモの名前の由来については諸説ある。
でもどれも怪しい。

(1)
まず山の険しいところを「かま」と呼び、カモシカはそこに住んでいるからという説。

もっともらしく聞こえるものの、山の険しいところを「かま」と呼ぶ事例は見つけられなかった。山用語で「鎌」といえば切り立って細い尾根、いわゆる馬の背を指す。カモシカは斜面に生息しているので「鎌」は当てはまらない。山岳の漢字に山岳(かま)とフリガナを振ってあるものもあったが、辞書に載っている限りでは山岳を「かま」とは読まない。


(2)
カモシカの肉は鴨のようにおいしいからとの説もある。

カモシカは1934年(昭和9年)に天然記念物として指定され、1955年からは特別天然記念物。基本的に天然記念物は保護される対象とはいえ、近年になってカモシカは増えすぎたため、一部の地域では有害鳥獣として駆除も行われている。(天然記念物=絶滅危惧種ではない)

天然記念物が理由なのか、あるいは年間で捕獲されるのが600頭前後と少ないせいかどうかは知らないが、カモシカの肉は市場で売られたりレストランで供されることはない。それでも駆除したカモシカの肉を食べた人はいるわけで、ネットでその感想をいくつか見つけた。

それによれば「鴨肉のよう」と書いてあるレポートは皆無。鹿よりも牛に近いとの感想はいくつかあり、まあウシ科だからそうなのだろう。だいたい古代にカモシカを食べていた=カモシカとネーミングしたのは山の民であって、彼らは鴨の味なんて知らなかったんじゃないかな。

だからこの説も却下。


(3)
カモシカを漢字で書くと氈鹿。これは毛氈(もうせん)が昔はカモシカの毛から作られているのに由来し、氈は「かも」とも読むのでカモシカと呼ぶとの解説も多い。


毛氈(もうせん)とは動物の毛を圧縮した不織布。より一般的な言葉ならフエルト。主な用途は敷物である。現在、毛氈の名前で呼ばれるのはほとんどが茶道の野点(のだて)や、雛人形で使われるもの。赤い毛氈は緋毛氈(ひもうせん)で別格扱い。VIPが通るレッドカーペットと同じ。書道の下敷きに用いられるのも高級品はウールの毛氈。安いのはポリエステルのフエルト。画像はhttps://x.gd/yLFYzとhttps://x.gd/dGKeXから引用(短縮URL使用)
01-2毛氈

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「氈」の字を辞書で引くと音読みの「せん」、訓読みの「もうせん」「けむしろ」としか載っていない。しかし以前は「氈」を「かも」とも読んでいたようだ。「おりかも」とも言った。
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その意味は獣毛で織った敷物。それがカモシカの毛だったのか、また毛氈のように不織布のフエルトが含まれるかは不明。また昔は馬の鞍の下に敷くクッション材にカモシカの毛皮を使い、それを「かも」と呼ぶ事例も見つけた。画像はhttps://pacalla.com/article/article-1412/から引用
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では毛氈(もうせん)や「氈(かも)」がカモシカの名前の由来なのか。何となく順序が逆のような気がする。カモシカなんて人より先に日本に生息していて、既に縄文時代には食べられていたのがわかっている。それに対して毛氈(もうせん)が日本に伝来したのは奈良時代。日本でも作り始めて、それにカモシカの毛を使ったとしても(グルーバルスタンダード的には羊毛)、その頃にカモシカの名前はあったはず。それでいわゆる当て字で氈鹿と書いて「カモシカ」と読ませた可能性が高い。


他にも説があるものの、いずれも「カモシカの名前の由来には諸説ある」の域を過ぎない。昔のことなんてなかなか確定できないので「諸説ある」となるのは仕方ないにしても、けっこういい加減な「諸説」がまかり通っていると思ったしだい。

そしてネットの時代になって、真偽を確認せずに、あるいは深く考えずにコピペ、コピペを重ねて拡散し、いつのまにかすっかり事実のように扱われているケースもあるのが怖いところ。AIだってその情報源はネットにある情報。これからはフェイクニュースならぬフェイク諸説も増えてきそう(/o\) だから気をつけないと。


結局、あれこれ調べてカモシカのカモの由来について、納得のいく説明にはたどり着けず。考えてみればシカだって、なぜシカなのかわからないから別にいいけれど。でもとりあえずカモウシとよばれなくてよかったねカモシカ君(^^ゞ

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wassho at 23:34│Comments(0) ノンジャンル 

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