2024年10月26日
カモシカのような脚のナゾ その2
カモシカの脚は細くないし短いのに、どうしてスラッと長い美脚を「カモシカのような脚」なんて表現するのか。前回に書いた内容をおさらいすると、画像はhttps://www.tokyo-np.co.jp/article/238926とhttps://x.gd/kL4pjから(短縮URL使用)から引用編集
英語で「ガゼルのような脚 Legs like a gazelle / gazelle-like legs」との表現があり美脚を意味する。ガゼルはカモシカと同じくシカではなくウシ科の動物。画像はhttps://animalia.bio/grants-gazelleから引用
ガゼルに似たウシ科で優美な姿をしている動物をアンテロープと総称し、漢字では羚羊(れいよう)と書く。
↓
カモシカはアンテロープ含まれない。
しかしなぜか日本では羚羊と書いて「かもしか」とも読まれてきた。
↓
ガゼルのような脚 Legs like a gazelle / gazelle-like legsの英文が日本に入ってきたとき、ガゼル=羚羊そしてカモシカ=羚羊なので、「カモシカのような脚」と意訳あるいは誤訳した。
ーーーというのが通説。
もっともらしいストリーではあるけれど、どうにも疑問が残る。
誰かカモシカの脚は太いし毛むくじゃら!ーーーと言わなかったのかと。
今ならネットですぐに突っ込みが入るのに(^^ゞ
このLegs like a gazelle / gazelle-like legsなどの英文表現が日本に入ってきたのは、明治維新以降と考えられる。ただし多くのイギリスやアメリカ人が、アフリカからモンゴルにかけて生息するガゼルを大昔から知っていたわけではないので、この表現が生まれたのはもっと後のはず。
新聞や雑誌に報道写真が載るようになったのは1920年代頃。ガゼルを紹介するアフリカ紀行のようなものまで写真が使われ、イギリスやアメリカ人にガゼルの姿が広く知られるようになったのは第2次世界大戦前後のような気がする。だとすると日本人が知ったのは戦後か? (単なる当てずっぽう)
戦争が終わったのは1945年(昭和20年)。
カモシカは明治期以降に乱獲され、1955年(昭和30年)には全国で3000頭程度にまで激減。1934年に国の天然記念物、1955年に特別天然記念物に指定して保護されたので、現在は10万頭を超えると推測されている。
日本全体での生息数の時系列データは見当たらなかったものの、1970年代頃までは「幻の動物」とされていたカモシカ。「カモシカのような脚」と言われてもカモシカを見た人はほとんどいなかったのかも知れない。
いや、それでもおかしい。
幻の動物扱いされていたのは、それなりにカモシカに関心があった証拠。その姿を知っていた人は少なからずいたと考えられる。また絶滅寸前まで乱獲したのなら逆に、少し前までカモシカは身近な存在でもあったはず。
そのカモシカを知っている人たちは異を唱えなかったのか。そもそもカモシカを知らない人が多数だとして、じゃあなぜ見たこともないカモシカを比喩にした「カモシカのような脚」の表現を受け入れたのかも不思議。「センザンコウみたいな肌」といわれてもピンとこないでしょ。シカの足は細い 〜 よく知らないけれどカモシカというシカがいて、シカよりもっと細い足らしいと連想したのだろうか。
2002年から2012年まで放送された「トリビアの泉」という雑学番組があった。そこで「カモシカの脚は太い」と紹介されたときに、かなりの驚きをもたれたといわれる。ということは約50年間、日本人はカモシカを知らないのに「カモシカのような脚」を細い脚だと認識して、しかも間違って認識していたことになる。我々はアホなのか?(^^ゞ
「トリビアの泉」で取り上げられたとはいえその効果は限定的。現在も多くの人は「カモシカのような脚」を細くて長い脚あるいは美脚だと思い、大根足、象みたいな脚とともに脚に関する三大慣用句として健在。
精一杯に想像力を働かせると、ガゼルのような脚がカモシカのような脚として紹介され広まりかけたとき、カモシカの脚は太いと知っていた人はいただろうが、当時はそんな意見を広く世間に発表する手段は新聞の投書欄くらいしかない。まあ目くじらを立てて(これも海のクジラじゃないよ)投書するような話でもなく、誰も指摘しないままカモシカという脚の細いシカの例えと多くの人が信じ込んで今日に至るーーーそんなところかな。
他に似たような事例はないかと考えているがあまり思い浮かばない。誤解の点では「馬子にも衣装」を「七五三で着飾った孫」に由来すると思っている人が多いのに近いか。あるいは動物の比喩なら、ほとんどの人は「月とスッポン」がそう言われる理由を考えることなく使っている。
「カモシカのような脚」と同じ勘違いの慣用句が見つかったら、
またブログを書きましょう。
おしまい
英語で「ガゼルのような脚 Legs like a gazelle / gazelle-like legs」との表現があり美脚を意味する。ガゼルはカモシカと同じくシカではなくウシ科の動物。画像はhttps://animalia.bio/grants-gazelleから引用
ガゼルに似たウシ科で優美な姿をしている動物をアンテロープと総称し、漢字では羚羊(れいよう)と書く。
↓
カモシカはアンテロープ含まれない。
しかしなぜか日本では羚羊と書いて「かもしか」とも読まれてきた。
↓
ガゼルのような脚 Legs like a gazelle / gazelle-like legsの英文が日本に入ってきたとき、ガゼル=羚羊そしてカモシカ=羚羊なので、「カモシカのような脚」と意訳あるいは誤訳した。
ーーーというのが通説。
もっともらしいストリーではあるけれど、どうにも疑問が残る。
誰かカモシカの脚は太いし毛むくじゃら!ーーーと言わなかったのかと。
今ならネットですぐに突っ込みが入るのに(^^ゞ
このLegs like a gazelle / gazelle-like legsなどの英文表現が日本に入ってきたのは、明治維新以降と考えられる。ただし多くのイギリスやアメリカ人が、アフリカからモンゴルにかけて生息するガゼルを大昔から知っていたわけではないので、この表現が生まれたのはもっと後のはず。
新聞や雑誌に報道写真が載るようになったのは1920年代頃。ガゼルを紹介するアフリカ紀行のようなものまで写真が使われ、イギリスやアメリカ人にガゼルの姿が広く知られるようになったのは第2次世界大戦前後のような気がする。だとすると日本人が知ったのは戦後か? (単なる当てずっぽう)
戦争が終わったのは1945年(昭和20年)。
カモシカは明治期以降に乱獲され、1955年(昭和30年)には全国で3000頭程度にまで激減。1934年に国の天然記念物、1955年に特別天然記念物に指定して保護されたので、現在は10万頭を超えると推測されている。
日本全体での生息数の時系列データは見当たらなかったものの、1970年代頃までは「幻の動物」とされていたカモシカ。「カモシカのような脚」と言われてもカモシカを見た人はほとんどいなかったのかも知れない。
いや、それでもおかしい。
幻の動物扱いされていたのは、それなりにカモシカに関心があった証拠。その姿を知っていた人は少なからずいたと考えられる。また絶滅寸前まで乱獲したのなら逆に、少し前までカモシカは身近な存在でもあったはず。
そのカモシカを知っている人たちは異を唱えなかったのか。そもそもカモシカを知らない人が多数だとして、じゃあなぜ見たこともないカモシカを比喩にした「カモシカのような脚」の表現を受け入れたのかも不思議。「センザンコウみたいな肌」といわれてもピンとこないでしょ。シカの足は細い 〜 よく知らないけれどカモシカというシカがいて、シカよりもっと細い足らしいと連想したのだろうか。
2002年から2012年まで放送された「トリビアの泉」という雑学番組があった。そこで「カモシカの脚は太い」と紹介されたときに、かなりの驚きをもたれたといわれる。ということは約50年間、日本人はカモシカを知らないのに「カモシカのような脚」を細い脚だと認識して、しかも間違って認識していたことになる。我々はアホなのか?(^^ゞ
「トリビアの泉」で取り上げられたとはいえその効果は限定的。現在も多くの人は「カモシカのような脚」を細くて長い脚あるいは美脚だと思い、大根足、象みたいな脚とともに脚に関する三大慣用句として健在。
精一杯に想像力を働かせると、ガゼルのような脚がカモシカのような脚として紹介され広まりかけたとき、カモシカの脚は太いと知っていた人はいただろうが、当時はそんな意見を広く世間に発表する手段は新聞の投書欄くらいしかない。まあ目くじらを立てて(これも海のクジラじゃないよ)投書するような話でもなく、誰も指摘しないままカモシカという脚の細いシカの例えと多くの人が信じ込んで今日に至るーーーそんなところかな。
他に似たような事例はないかと考えているがあまり思い浮かばない。誤解の点では「馬子にも衣装」を「七五三で着飾った孫」に由来すると思っている人が多いのに近いか。あるいは動物の比喩なら、ほとんどの人は「月とスッポン」がそう言われる理由を考えることなく使っている。
「カモシカのような脚」と同じ勘違いの慣用句が見つかったら、
またブログを書きましょう。
おしまい
wassho at 23:33│Comments(0)│
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