2024年11月03日

どうしてツボ(鍼灸・指圧)を医学・科学的に解明しないのかな

30歳前後の頃は重度の慢性的な急性肩こりに悩まされていた。
慢性なのに急性とはおかしな表現だが、次のような症状である。

  午後3時か4時頃に「そろそろ来る」との予感がある。
  30分ほどすると肩の筋肉がギューッと収縮し始める。肩甲骨上部のときもある。
  触ると石か鉄になったかと思うくらい筋肉の一部が硬くなっている。
  肩が凝るというより肩が痛い感覚。
  なぜか元気までなくなる(/o\)

その急性の肩こりが数日おきに起きるから慢性の急性肩こり。どうにも我慢できないときは同僚に揉んでもらったりもしていたが、効果は揉まれているときとその後の10分くらいしか続かない。でも不思議なことに夜になるといつの間にか治まっている。

そして35歳くらいからその症状は出なくなった。現在、肩が凝るのは年に1〜2回くらいで、しかもあの痛かった収縮性の肩こりではなく普通の肩こり。

先日、久しぶりに強めの(普通の)肩こりになった。おそらく極度に集中力が必要なパソコン作業を長時間したのが原因。収縮性の肩こりは数時間で治まるが普通の肩こりは数日続くので、これはこれでやっかい。そんな話をある人にすると、「私の通っている鍼の先生は名医なので紹介しますよ」と言われて、それが今回のブログのきっかけ。実はずっと昔から疑問に思っていたテーマでもある。
medical_harikyu_man

さて鍼灸と書いて「しんきゅう」。

「鍼」を「しん」と読むのは熟語となった「鍼灸」くらいで、単独で使う場合は「はり」。先ほどの「鍼の先生」は「“はり”の先生」。「針」と「鍼」はどちらも金属のハリを意味するが、慣用的に裁縫などに使うのを針、治療で身体に刺すのを鍼と使い分ける。また身体にハリを刺すのは元は中国より伝わった技術で中国式ハリもある。なぜかそちらは「針」の漢字を使う場合も多い。

灸の訓読みは「やいと」。私の祖父母世代は「お灸」ではなく「やいと」と言っていたような気がする。なお「お灸」の「お」は単語を敬語化する接頭辞である。ただし「お灸」の場合は「お」を付けないと意味が通りにくい珍しい例かと思う。あっ「おにぎり」や「おむすび」もそうだった。

その「鍼」と「灸」がセットで鍼灸なのは、どちらも同じようにツボとされる部位を物理的に刺激して、痛みを取ったり体調不良を改善する行為だから。言うまでもなく「鍼」はハリを刺して、「お灸」はモグサを燃やした熱によって。同じくツボを刺激する施術には「指圧」もある。

鍼と灸と指圧を「業(ぎょう)として行う」場合は国家資格が必要。「業として行う」は法律独特の言い回しで、いくつかの要素が含まれるものの、平たく言えば職業=対価を得て行うとの意味。

ツボ関連の資格を得る国家試験は次の3つに分かれている。

  はり師
  きゆう師
  あん摩マツサージ指圧師

なぜか法律では「鍼」と「灸」は平仮名で、しかも灸は「きゅう」と発音するのに「きゆう」と書く。また「マッサージ」ではなく「マツサージ」である。按摩も「按」だけが平仮名。

鍼灸師あるいは鍼灸院とよくいうものの実際は、はり師ときゆう師で別の資格。両方の資格を取る人が多いのだと思われる。ただ鍼灸はそうだとして、あん摩とマッサージは似ていても、指圧はその2つとは少し違うようにも思える。指圧の資格を取りたければ、あん摩とマッサージも勉強しなければならない。あん摩・マッサージ・指圧それぞれの違いについては次のページをご参考に。

    https://www.idononippon.com/about/9033/
    https://www.hinuma-acu.com/962862247

国家試験を受けるには高校卒業後に、厚生労働省か文部科学省が指定する専門学校で3年間、あるいは大学で4年間学ぶ必要がある。そんなにたくさん学ぶ内容があるのかと思うけれど、とにかくそういう仕組みになっている。また専門学校の学費は500万円前後かかる。ただし医師はこれらの資格を取らずに「業として行う」ことが可能。医学部で「鍼」「灸」「指圧」ましてや「あん摩・マッサージ」なんて習わないはずなのに、どうして認められるのだろう?

ちなみに国家試験の合格率は

   はり師         69.3%(2023年)
   きゆう師        70.2%(2023年)
   あん摩マッサージ指圧師 84.0%(2023年)

   医師          92.4%(2024年)
   歯科医師        66.1%(2024年)

もちろんこれは医師免許のほうが合格率が高い=簡単なのではなく、いわゆる受験生のレベルの差である。医師と歯科医師の差も同じく。
okyuu

「あはき」との言葉を聞いたことがあるだろうか。これはあん摩マッサージ指圧の「あ」、鍼の「は」、灸の「き」の頭文字をとった略語。あはき業、あはき療養、あはき師などに使われる業界用語。「鍼」と「灸」の資格だけを持つ人を「はき師」とも呼ぶらしい。別に鍼灸師でいいと思うけれど(^^ゞ

鍼灸の施術を行っているところは2020年のデータで、全国に7万412箇所ある。内訳は「はき」が3万2103、「あはき」が3万8309箇所。「あ」だけだと1万8342箇所。

参考までにコンビニの数は5万5709(2024年9月)で歯医者は6万7755(2022年)。よく歯医者はコンビニより多くて飽和状態と言われるが鍼灸はそれより多い。


なお「あはき」と同じ意味で「鍼灸マッサージ」との新しい言い方もある。こちらは「あん摩と指圧」の単語が省かれてお気の毒。そういえば「按摩」は、ほとんど聞かなくなってもう死語に近い気がする。昔は視覚障害者で按摩の職業に就く人が多く、按摩=盲人=差別との謎ロジックで按摩は放送禁止用語になっている。そういうのも影響しているのかも知れない。


ところで「あはき」を「業として行う」には国家資格が必要なはずなのに、エステティックサロンやいわゆるリラクセーションとしてのマッサージ、それに整体やカイロプラクティックなどに国家資格はなく無免許での施術となる。ホテルなどで部屋に来てくれるマッサージ、足裏マッサージなども同様。そのあたりは法律的に微妙でグレーな領域。エステでは「あ」の資格を持つ従業員が施術するのでなければ、マッサージの言葉は使えず「リラクセーション、リフレクソロジー、トリートメント、ケア、癒やし、ほぐし」などと表現する。例えばフェイシャルケア。

国家資格がある=法律で規制されているといえる。しかし同時に法律で利権が守られているでもある。このあたりは大人の事情ならぬ大人の社会構造。だから「あはき」業界とエステ業界、整体業界は仲が悪い(^^ゞ また「あはき」と似たような国家資格に柔道整復師がある。いわゆる接骨整骨。こちらは「あはき」とは健康保険の取り扱い方が異なり、それが原因でここでもよく揉めている。

なお「治療」の言葉は医師のみに認められた行為で「あはき」で行うのは「施術」と法律ではなっている。なのに「〇〇鍼灸治療院」なんて名前はざらにある。「あはき」で開業するには自治体への届け出が必要なので、つまりその名前は公に認められているともいえる。その当たりの事情はナゾ

参考までに業界規模は

   あはき       4890億円(2021年)
   柔道整復      4790億円(2021年)
   エステチックサロン 3130億円(2024年見込)

「あ」「は」「き」それぞれを知りたいところだが、兼業しているところも多いせいか個別の数字は見つけられなかった。

例によって下調べでわかった内容で、ずいぶんとボリュームを取ってしまった。
本題は次回にm(_ _)m




ーーー続く

wassho at 23:18│Comments(0) ノンジャンル 

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