ジローラモ・デッラ・ロッピア
2013年06月04日
ラファエロ展
3ヶ月間も開催していたのに、例のごとく終了間際にあたふたと。
訪れたのは終了3日前の5月31日。場所は上野の国立西洋美術館。
この展覧会は「ラファエロ」と画家の名前だけで、いたってシンプルなのが珍しい。
写真は展覧会を見終えてからiPhoneで撮ったもの。私が着いた時はこの2〜3倍くらいの行列があった。回れ右して帰るべきか躊躇したが、せっかく上野まで仕事の合間を縫って来たんだしと。ここに写っているのはチケットを買う行列で、その後に美術館の中に入る行列、展示室の中に入る行列と続くが、人数が多い割にはトータル20分くらいで展示室に入れた。
さてラファエロ。
誰でも名前くらいは知っているイタリアの代表的画家。ダ・ヴィンチとミケランジェロとあわせてルネサンスのルネサンスの三大巨匠と呼ばれている。1483年生まれ。日本では応仁の乱が終わったのが1477年だから、室町幕府が名前ばかりになり戦国時代が始まった頃の人である。ちなみに信長が生まれたのは1534年でもう50年ほど後。ラファエロは工房制作方式をとっていたこともあってたくさんの作品を残しているが、37歳で夭折している。時代や分野は違うものの、同じく35歳と若くして亡くなったモーツアルトと「甘美な美しさ」という点では芸風が似ているように私は感じる。
ところでラファエロの絵は何度も見ているような気がしていたが、まとまった数の作品が日本で展示されるのは初めてとのこと。今までたまにしか見ていなくても、それだけ印象が強かったということかもしれない。
「自画像」
20代後半の頃らしい。
この顔があんな絵を描いていたというのは何となく頷ける。首が長かったり肩の辺りの描き方が不自然だったり左側に寄った構図も含めて、私にはちょっとマニエリスムな印象を受ける。でも美術史的にはラファエロは正当ルネサンスでマニエリスムとは無関係ということになっている。マニエリスムの説明は難しいので興味があったら自分で調べて。私もチンプンカンプンにしか理解していないから。
「聖セバスティアヌス」
英語風に読むならセバスチャン。手に持っているのは羽根ペンではなく本物の弓矢。セバスチャンはキリスト教徒を迫害していた頃のローマ皇帝によって「たくさんの弓矢で射られる刑」に処せられた人。他の画家が描いたセバスチャンは身体中に弓矢が刺さっているものがほとんどだが、ラファエロの構成はひとひねり効いている。ついでになぜかは知らないが聖セバスチャンはゲイの象徴ということになっている。
「無口な女」
この作品はラファエロの画風とは少し違う印象。この頃の彼はダ・ヴィンチを研究していたらしく、そういえば顔は違うがポーズなんかは何となくモナリザっぽくもない。モナリザと同じように、あまり魅力的とはいえない女性をモデルにするということまで真似なくていいのに。
ところで、この展覧会では肖像画が多かった。というか後で紹介する大公の聖母以外はたいした作品がないので、肖像画を集めて体裁を繕った印象がなきにしもあらず。
「ベルナルド・ドヴィーツイ枢機卿の肖像」
これも身体のバランスがマニエリスム的にデフォルメされているように見えるーーー
それよりも私の気を引いたのは、いつものように絵とは関係ない事柄。まず赤いガウンの模様。これは織り柄それとも刺繍? いずれにしてもこんな生地は見たことがない。
それとこの人は肖像画を描いてもらうのになぜお札を握りしめているの? これは後で調べたらお札ではなく手紙だった。でもパッと見はお札に見えるよね? 手紙はこんな風に握らないと思うけれど。
「大公の聖母」
後にこの絵を購入したトスカーナー(イタリアの地名)大公フェルディナンド3世が、この絵をこよなく愛したことから大公の聖母という名前がついている。マリアと赤ちゃんのキリストの場合、聖母子と名付けられるのが普通だがなぜか聖母というタイトル。
今回の展示会の中でも圧倒的な存在感、オーラを放っていた作品。ラファエロワールド全開である。もともとは背景が描かれていて後世に黒く塗りつぶされたということで、そういわれてみればラファエロの柔らかさや色彩感がが足りない気もするが、いわれなきゃこれはこれで二人が浮かび上がって神秘的。
がしかし、私は重大なこと?に気がついてしまった。
上に貼った画像には向かってガウンの左側の真ん中から下に伸びる白い線がある。マリアの向かって顔の右側から胸にかけても白い線がある。これは絵についた傷だと思う。それでネットでこの絵を探すと、このキズがあるものとないものの2種類が存在するのである。
展示会のホームページの写真にはキズはない。
テレビ東京の美の巨人という番組で紹介された大公の聖母にはキズがある。これは現地の美術館で撮影したもの。だからキズがあるのが正しいような気がする。
ウィキペディアの写真にもキズはある。
(色が黄色いのは画像処理の過程での色ずれだから、とりあえず無視して)
しかし同じウィキペディアでも英語版にはキズがない。
いったいどっちが正しい?
そこでこの作品が収蔵されているイタリア・フィレンツェのパラティーナ美術館のホームページを調べてみた。本家にはキズはある。
どういうこと?????
推論1
どちらかが贋作。あるいは展示や貸し出し用のレプリカ。しかし仮に贋作・レプリカだとしても、こんな目立つところを書き間違えるとは考えづらいが。
推論2
キズのところを最近修復して、修復前後の画像が出回っている。でもネットで調べたがキズを修復したという情報はなかった。
推論3
単に作品を写真に撮った時の微妙なライティングなどの違いで、キズが目立ったり目立たなくなっているだけ。ーーーかなり大きなキズなので、ちょっと説得力が弱い。
推論4
画像ファイルによってはレタッチでキズを修復してある。
ーーーあり得るけど、美術館がそんなことするかな?
う〜ん、ナゾ ところで実際にこの目で見た上野の国立西洋美術館の展示にキズはあったかどうかというとーーーそんなことを気にしていなかったから、よく覚えていない(/o\)
なんとなく写真で判断する限りレプリカ疑惑がぬぐえないが
まっ、きれいな作品だったから、どっちでもいいや。
ジローラモ・デッラ・ロッピア
「聖母子と幼い洗礼者ヨハネ」
こういう工作物を何と呼ぶのかわからないが、ラファエロの絵を陶器で再現したもの。ジローラモというのが作者の名前。珍しさもあってとても気に入った。公園にある小便小僧とはハッキリとレベルが違う。
焼き物だから、この類のものは型を取ってたくさん作れるはず。名画をモチーフにした立体置物なんてインテリアとか庭の置物におもしろいと思う。私もひとつ欲しいね。
これが陶器のモデルになったラファエロの「美しき女庭師」という作品。今の日本なら美しすぎる女庭師とでも呼ぶところ。この女性は聖母マリアその人なのに、なぜ庭師というマリアとも絵の情景とも関係ないタイトルがついている。なおこの絵は今回の展示作品には含まれていない。
大公の聖母以外にもうひとつくらい目玉となる作品が欲しかった気もするが、まあこんなものかな。でも満足度はちょっと低め。肖像画は似たようなものも多かったし、ラファエロの後継者とされる彼以外の画家の作品はイマイチだった(ラファエロの作品の後に見たせいもある)。またラファエロの作品をモチーフにした陶器の皿がたくさんあったものの、私には土産物屋レベルにしか見えなかった。
無理に作品数を欲張らないで、これぞという作品10点くらいだけで、その代わり入場料300円くらいでやってくれればいいのにと思う。ちなみに今回の入場料は1500円。このチケットで通常420円する常設展も見られるから実質1080円という計算もできるが、常設展抜きの料金も設定して欲しい。見たいと思っても、いつも時間がないから。
ついでに美術館前庭にあるロダンの彫刻。
「カレーの市民」という作品。カレーとはフランスの地名。
これは誰でも知っている「考える人」。
逆光で撮ったら虹みたいな光線になっちゃった。
訪れたのは終了3日前の5月31日。場所は上野の国立西洋美術館。
この展覧会は「ラファエロ」と画家の名前だけで、いたってシンプルなのが珍しい。
写真は展覧会を見終えてからiPhoneで撮ったもの。私が着いた時はこの2〜3倍くらいの行列があった。回れ右して帰るべきか躊躇したが、せっかく上野まで仕事の合間を縫って来たんだしと。ここに写っているのはチケットを買う行列で、その後に美術館の中に入る行列、展示室の中に入る行列と続くが、人数が多い割にはトータル20分くらいで展示室に入れた。
さてラファエロ。
誰でも名前くらいは知っているイタリアの代表的画家。ダ・ヴィンチとミケランジェロとあわせてルネサンスのルネサンスの三大巨匠と呼ばれている。1483年生まれ。日本では応仁の乱が終わったのが1477年だから、室町幕府が名前ばかりになり戦国時代が始まった頃の人である。ちなみに信長が生まれたのは1534年でもう50年ほど後。ラファエロは工房制作方式をとっていたこともあってたくさんの作品を残しているが、37歳で夭折している。時代や分野は違うものの、同じく35歳と若くして亡くなったモーツアルトと「甘美な美しさ」という点では芸風が似ているように私は感じる。
ところでラファエロの絵は何度も見ているような気がしていたが、まとまった数の作品が日本で展示されるのは初めてとのこと。今までたまにしか見ていなくても、それだけ印象が強かったということかもしれない。
「自画像」
20代後半の頃らしい。
この顔があんな絵を描いていたというのは何となく頷ける。首が長かったり肩の辺りの描き方が不自然だったり左側に寄った構図も含めて、私にはちょっとマニエリスムな印象を受ける。でも美術史的にはラファエロは正当ルネサンスでマニエリスムとは無関係ということになっている。マニエリスムの説明は難しいので興味があったら自分で調べて。私もチンプンカンプンにしか理解していないから。
「聖セバスティアヌス」
英語風に読むならセバスチャン。手に持っているのは羽根ペンではなく本物の弓矢。セバスチャンはキリスト教徒を迫害していた頃のローマ皇帝によって「たくさんの弓矢で射られる刑」に処せられた人。他の画家が描いたセバスチャンは身体中に弓矢が刺さっているものがほとんどだが、ラファエロの構成はひとひねり効いている。ついでになぜかは知らないが聖セバスチャンはゲイの象徴ということになっている。
「無口な女」
この作品はラファエロの画風とは少し違う印象。この頃の彼はダ・ヴィンチを研究していたらしく、そういえば顔は違うがポーズなんかは何となくモナリザっぽくもない。モナリザと同じように、あまり魅力的とはいえない女性をモデルにするということまで真似なくていいのに。
ところで、この展覧会では肖像画が多かった。というか後で紹介する大公の聖母以外はたいした作品がないので、肖像画を集めて体裁を繕った印象がなきにしもあらず。
「ベルナルド・ドヴィーツイ枢機卿の肖像」
これも身体のバランスがマニエリスム的にデフォルメされているように見えるーーー
それよりも私の気を引いたのは、いつものように絵とは関係ない事柄。まず赤いガウンの模様。これは織り柄それとも刺繍? いずれにしてもこんな生地は見たことがない。
それとこの人は肖像画を描いてもらうのになぜお札を握りしめているの? これは後で調べたらお札ではなく手紙だった。でもパッと見はお札に見えるよね? 手紙はこんな風に握らないと思うけれど。
「大公の聖母」
後にこの絵を購入したトスカーナー(イタリアの地名)大公フェルディナンド3世が、この絵をこよなく愛したことから大公の聖母という名前がついている。マリアと赤ちゃんのキリストの場合、聖母子と名付けられるのが普通だがなぜか聖母というタイトル。
今回の展示会の中でも圧倒的な存在感、オーラを放っていた作品。ラファエロワールド全開である。もともとは背景が描かれていて後世に黒く塗りつぶされたということで、そういわれてみればラファエロの柔らかさや色彩感がが足りない気もするが、いわれなきゃこれはこれで二人が浮かび上がって神秘的。
がしかし、私は重大なこと?に気がついてしまった。
上に貼った画像には向かってガウンの左側の真ん中から下に伸びる白い線がある。マリアの向かって顔の右側から胸にかけても白い線がある。これは絵についた傷だと思う。それでネットでこの絵を探すと、このキズがあるものとないものの2種類が存在するのである。
展示会のホームページの写真にはキズはない。
テレビ東京の美の巨人という番組で紹介された大公の聖母にはキズがある。これは現地の美術館で撮影したもの。だからキズがあるのが正しいような気がする。
ウィキペディアの写真にもキズはある。
(色が黄色いのは画像処理の過程での色ずれだから、とりあえず無視して)
しかし同じウィキペディアでも英語版にはキズがない。
いったいどっちが正しい?
そこでこの作品が収蔵されているイタリア・フィレンツェのパラティーナ美術館のホームページを調べてみた。本家にはキズはある。
どういうこと?????
推論1
どちらかが贋作。あるいは展示や貸し出し用のレプリカ。しかし仮に贋作・レプリカだとしても、こんな目立つところを書き間違えるとは考えづらいが。
推論2
キズのところを最近修復して、修復前後の画像が出回っている。でもネットで調べたがキズを修復したという情報はなかった。
推論3
単に作品を写真に撮った時の微妙なライティングなどの違いで、キズが目立ったり目立たなくなっているだけ。ーーーかなり大きなキズなので、ちょっと説得力が弱い。
推論4
画像ファイルによってはレタッチでキズを修復してある。
ーーーあり得るけど、美術館がそんなことするかな?
う〜ん、ナゾ ところで実際にこの目で見た上野の国立西洋美術館の展示にキズはあったかどうかというとーーーそんなことを気にしていなかったから、よく覚えていない(/o\)
なんとなく写真で判断する限りレプリカ疑惑がぬぐえないが
まっ、きれいな作品だったから、どっちでもいいや。
ジローラモ・デッラ・ロッピア
「聖母子と幼い洗礼者ヨハネ」
こういう工作物を何と呼ぶのかわからないが、ラファエロの絵を陶器で再現したもの。ジローラモというのが作者の名前。珍しさもあってとても気に入った。公園にある小便小僧とはハッキリとレベルが違う。
焼き物だから、この類のものは型を取ってたくさん作れるはず。名画をモチーフにした立体置物なんてインテリアとか庭の置物におもしろいと思う。私もひとつ欲しいね。
これが陶器のモデルになったラファエロの「美しき女庭師」という作品。今の日本なら美しすぎる女庭師とでも呼ぶところ。この女性は聖母マリアその人なのに、なぜ庭師というマリアとも絵の情景とも関係ないタイトルがついている。なおこの絵は今回の展示作品には含まれていない。
大公の聖母以外にもうひとつくらい目玉となる作品が欲しかった気もするが、まあこんなものかな。でも満足度はちょっと低め。肖像画は似たようなものも多かったし、ラファエロの後継者とされる彼以外の画家の作品はイマイチだった(ラファエロの作品の後に見たせいもある)。またラファエロの作品をモチーフにした陶器の皿がたくさんあったものの、私には土産物屋レベルにしか見えなかった。
無理に作品数を欲張らないで、これぞという作品10点くらいだけで、その代わり入場料300円くらいでやってくれればいいのにと思う。ちなみに今回の入場料は1500円。このチケットで通常420円する常設展も見られるから実質1080円という計算もできるが、常設展抜きの料金も設定して欲しい。見たいと思っても、いつも時間がないから。
ついでに美術館前庭にあるロダンの彫刻。
「カレーの市民」という作品。カレーとはフランスの地名。
これは誰でも知っている「考える人」。
逆光で撮ったら虹みたいな光線になっちゃった。
wassho at 23:49|Permalink│Comments(0)│