ドーム兄弟
2013年11月07日
ポーラ美術館のガラス工芸展と藤田嗣治の新コレクション
書くのが少し後になってしまったが10月27日に出かけた箱根・仙石原ツーリングのパート4で、ポーラ美術館のモネ展パート2である。
さて
モネ展と同時に開催されているのが「ガラス工芸名作選」という展示会。ポーラ美術館はガラス工芸品のコレクションにも力を入れているみたい。
「草花文耳付花器」 エミール・ガレ
「風景文花器」 エミール・ガレ
「アザミ文花器」 エミール・ガレ
「葡萄とカタツムリ文花器」 ドーム兄弟
「蜻蛉文ランプ」 ルイス・C・ティファニー
エミール・ガレの名前くらいは知っているし、作品もいくつか見たことはある。でもこの分野にほとんど知識はなく、今まで関心もなかった。ちなみにルイス・C・ティファニーとは、あのティファニーの二代目だそうである。展示は全部で50点以上はあったと思う。一部はモネ展の中でも並べられていた。
これらは1900年前後(明治の中頃)に作られたアール・ヌーヴォー様式。アール・ヌーヴォーはフランス語なので英語に置き換えればArt New。つまり新しい芸術という意味。何に対して新しいのかはよく知らないが、とにかく柔らかくて優雅な曲線と、花とか昆虫が模様としてよく使われているのが特徴。ついでに日本人的にはよく似た言葉でこんがらがるのがアール・デコ。デコはデコレーションの略だから直訳すれば装飾芸術。アール・ヌーボーより30年くらい後に流行した様式。どちらかといえば直線的、幾何学的な形が多くてちょっと派手で前衛的。もちろん今の視点で見ればヌーボーもデコもどちらもレトロな感じを受けるが。
この時代のガラス作品をまとめてみたのは初めてである。
感想その1
なかなかエエヤン!
理屈抜きにキレイだし、壺とか茶碗とか陶器の骨董品のようなコムツカシさはない。それでいて100年ほど経ったヴィンテージ感も趣として感じる。こんなものが自宅に飾ってあれば楽しいと思う。
感想その2
こういうものって、どうして日本で発達しなかったんだろう。
なんとなく残念。
もうひとつモネ展と同時に開催されていたのが、ポーラ美術館が最近コレクションに加えた藤田嗣治(つぐはる)の3作品。同館の藤田コレクションは国内では一番大きいといわれている。
「グロテスク」
あまりグロテスクな雰囲気はしない。じっくり眺めたくなる絵でもないが、Tシャツにでも刷ればおもしろそう。ある意味ポップな印象。
「シレーヌ」
シレーヌはギリシャ神話に出てくる海の怪物で、美しい歌声で船員を惑わし船を難破させる。まあ悪役キャラだったのだが、いつのまにか人魚の意味になってロマンティックなニュアンスに今はなっている。藤田嗣治の描いたのは怖い方のシレーヌかな。歌い出すと口裂け女になりそう。
この2作品は藤田嗣治の晩年の作品で、一般公開されるのは今回が初めてとのこと。
「キュビスム風静物」
上の2作品とは逆に、これはまだ藤田嗣治が無名だった初期の作品。彼がパリに渡ったのは、ピカソがキュビスムという描き方で一世を風靡していた時期に重なる。タイトルにキュビスム風と「ふう」を付けているから、キュビスム勉強中ということだろう。
キュビスムはフランス語読み。英語読みだとキュビズム、あるいはキュービズムとなる。英語のスペルはCubismで、これはCube(立方体)とism(主義)の合成語で直訳すれば立方体主義。簡略化して立体主義とか立体派ともいう。キュビスムは20世紀で最も重要なトレンドだったといわれる。
ーーーなのであるが、これがやたら難解なのである。
私なりに噛み砕いて解説すると(信憑性35%くらいかな)、
1)
物体はいくつかの要素やパーツに分解することができる。例えば顔なら、目や鼻や口など。
2)
また物体は視点を変えれば違う形に見える。たとえば正面の顔と横顔の形はまったく違うが、どちらも同じ顔である。
3)
なんてことをウニウニと考え、分解した要素やパーツを抽象化したり、デフォルメ(変形)したりする。またいくつかの視点から物体を眺めると違う形に見えるが、絵という二次元表現の1枚に落とし込むには、最後にそれらを無理やり統合しなければならない。
それで出来上がるのがこんな絵。
これはピカソの「泣く女」という作品でキュビスムだけじゃなく、さらにシュルレアリスム(超現実主義)も入っている。※今回の展示会とは関係ない
私はキュビズムが苦手だし好きじゃない。描くという行為のひとつの方向として、こういう考え方もあることは認めるとして、私が絵に求めているものとはずいぶん違う。とりあえず藤田嗣治が、こっちの趣味に走ってくれなくてよかった。
ーーーおしまい。
さて
モネ展と同時に開催されているのが「ガラス工芸名作選」という展示会。ポーラ美術館はガラス工芸品のコレクションにも力を入れているみたい。
「草花文耳付花器」 エミール・ガレ
「風景文花器」 エミール・ガレ
「アザミ文花器」 エミール・ガレ
「葡萄とカタツムリ文花器」 ドーム兄弟
「蜻蛉文ランプ」 ルイス・C・ティファニー
エミール・ガレの名前くらいは知っているし、作品もいくつか見たことはある。でもこの分野にほとんど知識はなく、今まで関心もなかった。ちなみにルイス・C・ティファニーとは、あのティファニーの二代目だそうである。展示は全部で50点以上はあったと思う。一部はモネ展の中でも並べられていた。
これらは1900年前後(明治の中頃)に作られたアール・ヌーヴォー様式。アール・ヌーヴォーはフランス語なので英語に置き換えればArt New。つまり新しい芸術という意味。何に対して新しいのかはよく知らないが、とにかく柔らかくて優雅な曲線と、花とか昆虫が模様としてよく使われているのが特徴。ついでに日本人的にはよく似た言葉でこんがらがるのがアール・デコ。デコはデコレーションの略だから直訳すれば装飾芸術。アール・ヌーボーより30年くらい後に流行した様式。どちらかといえば直線的、幾何学的な形が多くてちょっと派手で前衛的。もちろん今の視点で見ればヌーボーもデコもどちらもレトロな感じを受けるが。
この時代のガラス作品をまとめてみたのは初めてである。
感想その1
なかなかエエヤン!
理屈抜きにキレイだし、壺とか茶碗とか陶器の骨董品のようなコムツカシさはない。それでいて100年ほど経ったヴィンテージ感も趣として感じる。こんなものが自宅に飾ってあれば楽しいと思う。
感想その2
こういうものって、どうして日本で発達しなかったんだろう。
なんとなく残念。
もうひとつモネ展と同時に開催されていたのが、ポーラ美術館が最近コレクションに加えた藤田嗣治(つぐはる)の3作品。同館の藤田コレクションは国内では一番大きいといわれている。
「グロテスク」
あまりグロテスクな雰囲気はしない。じっくり眺めたくなる絵でもないが、Tシャツにでも刷ればおもしろそう。ある意味ポップな印象。
「シレーヌ」
シレーヌはギリシャ神話に出てくる海の怪物で、美しい歌声で船員を惑わし船を難破させる。まあ悪役キャラだったのだが、いつのまにか人魚の意味になってロマンティックなニュアンスに今はなっている。藤田嗣治の描いたのは怖い方のシレーヌかな。歌い出すと口裂け女になりそう。
この2作品は藤田嗣治の晩年の作品で、一般公開されるのは今回が初めてとのこと。
「キュビスム風静物」
上の2作品とは逆に、これはまだ藤田嗣治が無名だった初期の作品。彼がパリに渡ったのは、ピカソがキュビスムという描き方で一世を風靡していた時期に重なる。タイトルにキュビスム風と「ふう」を付けているから、キュビスム勉強中ということだろう。
キュビスムはフランス語読み。英語読みだとキュビズム、あるいはキュービズムとなる。英語のスペルはCubismで、これはCube(立方体)とism(主義)の合成語で直訳すれば立方体主義。簡略化して立体主義とか立体派ともいう。キュビスムは20世紀で最も重要なトレンドだったといわれる。
ーーーなのであるが、これがやたら難解なのである。
私なりに噛み砕いて解説すると(信憑性35%くらいかな)、
1)
物体はいくつかの要素やパーツに分解することができる。例えば顔なら、目や鼻や口など。
2)
また物体は視点を変えれば違う形に見える。たとえば正面の顔と横顔の形はまったく違うが、どちらも同じ顔である。
3)
なんてことをウニウニと考え、分解した要素やパーツを抽象化したり、デフォルメ(変形)したりする。またいくつかの視点から物体を眺めると違う形に見えるが、絵という二次元表現の1枚に落とし込むには、最後にそれらを無理やり統合しなければならない。
それで出来上がるのがこんな絵。
これはピカソの「泣く女」という作品でキュビスムだけじゃなく、さらにシュルレアリスム(超現実主義)も入っている。※今回の展示会とは関係ない
私はキュビズムが苦手だし好きじゃない。描くという行為のひとつの方向として、こういう考え方もあることは認めるとして、私が絵に求めているものとはずいぶん違う。とりあえず藤田嗣治が、こっちの趣味に走ってくれなくてよかった。
ーーーおしまい。
wassho at 23:32|Permalink│Comments(0)│