ベイヤーダイナミックT90

2016年02月14日

ベイヤーダイナミック T90 その5

去年の年末に購入したベイヤーダイナミック社のT90というヘッドホン。ここ最近に買ったものの中では群を抜いて満足度が高く、いい買い物をしたと思っている。細かないきさつは今までに書いた「その1〜その4」のエントリーを読んでもらうとして、

  ヘッドホンというのは聴き疲れするものだと思っていたが、

  開放型という構造のヘッドホンだと、聴き疲れの原因となる音圧感や圧迫感が
  ないことを知り、

  いくつか聴き較べて、求めていた音の開放感では少し劣るものの、高音が
  圧倒的にキレイなことを気に入ってT90を選んだ。

というのが大筋。
店頭では比較しての試聴なのに対して、自宅では単独の評価になるし、耳が慣れてくるので印象も変わってくる。また店頭では気付かなかったこともいくつかある。ということで2ヶ月ほど使ってみた感想をまとめておく。


一番心配していたのは他の候補機種だったシュアのSRH1840やゼンハイザーのHD650がまさに開放的な鳴り方をするのに対して、ベイヤーのT90は音圧感や音の広がりといった点で、それらと比較すれば密閉型寄りな鳴り方だったこと。購入に当たってはそれよりも高音の魅力を優先したわけだが、その点が気になるようだったら、なんのために新しくヘッドホンを買ったのかわからなくなってしまう。

しかしそれは杞憂だった。自宅で聴くT90は充分に音の広がりがあり、スピーカーで聴くのと変わらないとはいわないけれど、ヘッドホン特有の耳で聴くというより頭の中で音が鳴っているような圧迫感はまったく感じない。較べればSRH1840やHD650にかなわないにしても絶対値では充分にOKということ。それまでヘッドホンは深夜にどうしても大音量で聴きたい時のための、いわば仕方なく使うスピーカーの代用品でしかなかった。今は自宅で音楽を聴く割合はスピーカーとヘッドフォンで、音量に関係なく7対3くらいの比率になっている。


低音が弱いのも視聴で気になっていた点だった。これも自宅で特に不満を感じていない。まあ較べなきゃわからないレベルだし、耳も慣れてきたということだろう。そういう意味ではT90の美点である高音のクリアさも、他の機種を買ったらそれなりに耳が慣れて満足したのかもしれない。でもそれは考えないようにしている(^^ゞ



買ってから初めてわかったこと。それは重さである。T90はちょっと重い。2つのスピーカーを結ぶヘッドバンド部分が頭にかかるわけであるが、そこ=頭のテッペンに重さを感じる。もっとも5分くらいすると慣れてきて気にならなくなるが。重さを較べてみると

  シュア        SRH1840  268g
  ゼンハイザー     HD650   260g
  ベイヤーダイナミック T90     330g

お店で比較している時は音の聴き較べに集中していて、重さまでは気が回らなかった。それと重いからそう感じるのかフィット感もあまりよくない。頭を動かしたりすると微妙にずれる。ヘッドホンのスピーカー部分が頭に密着する力を側圧というが、それも弱いように思う。ヘッドホンを広げて癖をつけて側圧の強さを和らげる方法はあるが、その逆は対処できないから困りもの。


あまり専門的なことはわからないが、T90は音の歪みとかノイズとかも低い。それでどうなるかというと、音量を上げていっても音がうるさくならないというか、うるさく感じない。おそらく開放型の特徴である音圧感の低さとダブルで利いているのかもしれない。これはかなり快感である。もっとも将来に難聴になったら困るので、年に何回かの爆音祭り以外は常識的な音量で聴くようにはしている。



結論をいうと、今までヘッドホンを使うのは苦痛だった(だから年に何回か爆音を欲する時しか使わなかった)のが、T90を買ってから苦痛ではなくなった。そんなに大きな音量でスピーカーを鳴らしているわけではないが、それでも夜間とか春や秋の窓を開けておきたい季節ではボリュームを落とさざるを得ない。それもまた別の意味で苦痛だった。そっちの苦痛がT90によって解消されてハッピーである。

難点は今まで満足していた、外出先で使うイヤホンの音がやたら貧弱に感じること。
人生、悩みはつきないものである(^^ゞ


おしまい

wassho at 19:11|PermalinkComments(0)

2015年12月23日

ベイヤーダイナミック T90 その4

ヘッドホンの話でこんなに長く続くとは思っていなかった(^^ゞ

さて、できたら安く済ませたいと願って聴いてみた下位機種の印象は


シュア SRH1440
SRH1440

これはかなり好印象。基本的には上位機種のSRH1840と同じ音の傾向。バランスよし音の広がりよし。違いは音のきめ細かさ。SRH1840がシルクの肌触りだとすれば、こちらはコットン。もちろんコットンでも頬ずりしたくなるような高級コットンではある。その場で聴き較べればSRH1840を気に入ってしまうが、買ってきて自宅でずっとこれだけを聴いていれば不満は出ないと思う。それはゼンハイザーのHD650に対しても同じこと。つまりコストパフォーマンスが高いわけで、もしベイヤーT90が今回の試聴機種に入っていなければ、ゼンハイザーよりもさらに1万円安いこのSRH1440を選んでいたと思う。

残念なのはデザイン的にプラスティック部分の占める割合が大きくて、安っぽく見えること。値段が上位機種に較べれば安いとはいえ37,560円もするのだから、もう少しがんばって欲しかった。



ゼンハイザー HD598
HD598

これはデザインというか色彩的に受け付けなかった。プリンというあだ名が付いているらしい。こんな色だということはもちろん事前にわかっていて「ヘンなの」と思ったものの、実物はまた違う印象かと期待していたが、やっぱり実物も写真と同じだった(^^ゞ

ゼンハイザーのラインナップの中で、なぜかこの機種だけがプリン色。明るい色を使うのはいいアイデアだと思うけれど、これは単に色を変えただけでデザインとして成り立っていないように思う。どんな分野でもデザインは大事だが、オーディオではデザインが気に入らないと音もいいものに聞こえないもの。というわけでこのヘッドホンがどんな音だったかは、もう忘れてしまった。



ベイヤーダイナミクスの下位機種

ベイヤーダイナミクスはモデル数の多いメーカーで、かつラインナップが単純なヒエラルキーで構成されていない。どれがT90の次の下位機種かよくわからず。とりあえずお店にあった開放型と書かれているベイヤーの機種は一通り聴いてみた。結論からいうとそれらはT90の高音とは違う系統の高音だった。つまり普通の高音。前回のエントリーに書いたようにT90を選んだのはひとえにあの独特の高音の鳴り方だったわけだから、それがグレードダウンしていたとしても備わっていないとわかった時点で興味消失。普通の音がするヘッドホンとして評価できるほど時間を掛けては聴かなかった。




T90の高音は試聴した中では唯一無二だったので、機種選定はほとんど悩むことなくあっさりと決まった。さてここからが問題。前回のエントリーで書いたようにeイヤホンはいいお店なのだが値段が割高。T90の価格は

  eイヤホン       50,840円
  価格コムでの最安値店  43,848円

その差6992円。率にするとeイヤホンは16%高いことになる。ポイントは付いても1%だし、この店でポイントを溜めてもあまり使い道がない。店内には「他店より1円でも高い商品がありましたらーーー」という張り紙もなかった。以前にDACを買った時はここが最安値だったから何でもかんでも高いわけじゃないみたいだが、とりあえずT90は安くはなかった。その場で買って持ち帰りたい気持ちはあったが、結局6992円を節約しようという結論になる。


価格コムで最安値近辺を提示しているのは並行輸入品を扱うお店。別に並行輸入品でも中身は同じだから気にはしないが、何かお店に関するトラブルでもあればやっかいだから、それを調べてから注文しようと思いながらオフィスに戻る。

しかし地下鉄に乗っているうちに一刻でも早くT90を手に入れたいという気持ちがフツフツと。それでオフィスには戻らずビックカメラに直行。あまり買い物に便利なところにオフィスがあるのも考えものである。

ビックカメラに行ってみると売り場にT90はなかった。ガッカリしたような無駄遣いをしなくて安心したような複雑な心境。ところがよく探すと、なぜか50万円以上する高級ヘッドホンが入っている鍵付きショーケースの中にT90が陳列されていた。値札は5万8000円くらいだったかな。最近のビックカメラは「価格コムで安い店はこれくらい」とiPhoneでウエッブ画面を見せると、あっさり交渉に応じるようになっている。もちろん現金値引きではなく10%のポイント付与を含めた価格であるが。

通りかかった店員にショーケースを指さして「このヘッドホンを見たい」と声を掛けると「オーディオ担当を呼んで参ります」とどこかに行ってしまった。指さしたのは50万円の商品じゃないんだけれど(^^ゞ 幸か不幸か在庫はあり価格は4万8720円、10%のポイントを加味すると4万3843円相当ということになった。価格コムの最安値店より5円高いだけ。eイヤホンもこれくらいの値段だとよかったのだが。ちなみにやって来たオーディオ担当はかなり優秀で、私のイヤホンを見て型番まで正確に言い当てたのにはびっくりした。今の90EXと先日断線した60EXは見た目にほとんど差がなくオーナーである私でも見分けられないのに。


何はともあれ、自腹で自分向けクリスマスプレゼントをゲット。


ーーーもう1回くらい続く。

wassho at 17:12|PermalinkComments(0)

2015年12月22日

ベイヤーダイナミック T90 その3

その後、ネットであれこれ調べて候補にしたのは次の3機種。

  シュア        SRH1840  59,180円
  ゼンハイザー     HD650   46,100円
  ベイヤーダイナミック T90     50,840円

5万円前後の開放型ということで選んだ。他にもいくつかあったが、あまり聴き較べて迷うのも面倒なので口コミ情報なども参考にしながら、シュアSRH1840に対抗機種を2つ加えたというところ。ちなみにベイヤーダイナミクスという会社はこの時に初めて知った。ゼンハイザーとベイヤーダイナミックと、もうひとつウルトラゾーンというのがドイツのイヤホンやヘッドホン業界の御三家らしい。

それぞれの下位機種が

  シュア        SRH1440  37,560円
  ゼンハイザー     HD598   24,966円
  ベイヤーダイナミック いくつかあって25,000円から35,000円くらい

つい魔が差した12月1日から少し日がたって冷静になり、ヘッドホンに5〜6万円払うのがもったいないようにも思えてきて、下位機種で満足できればいいなあと期待する。

シュアはイヤホンだと10万円以上の製品があるのに、ヘッドホンではSRH1840が最上位機種。しかしゼンハイザーには同じく開放型でHD800、ベイヤーダイナミクスは半開放型だがT1という上位機種がある。どちらもとても評判がいいみたい。お値段は188,760円と140,400円。この2つは絶対に試聴しないと心に決める(^^ゞ


12月10日に機種選びに出かけたのは秋葉原にあるeイヤホンという専門店。オフィスのある銀座から秋葉原までは10分くらい。ここは以前にDAC(デジタルからアナログへのコンバーターの略:パソコンに取り込んだCDの音楽をオーディオアンプにつなぐためにアナログに変換する機器)を買ったことがある。その時は通販だったので、一度お店も訪れて見たいと思っていた。それとゼンハイザーのプラグは太くてそのままではiPhoneに刺さらないのだけれど、専門店なら変換プラグを貸してくれるだろうと思って。ちなみに上に書いたヘッドホンの価格はeイヤホンの販売価格。

eイヤホンは1階が店舗で2階以上がオフィスフロアになっているビルの4階にある。だからオフィス用の玄関から入ってエレベーターで昇っていくわけで少し変な感じ。店内はとても広い。ビックカメラ有楽町店もイヤホン・ヘッドホン売り場は元はテレビ売り場だったからかなり広いが、同じくらいの面積があるように思えた。平日昼間なのに客はそこそこいる。現在このマーケットは活気があるようだ。

店員はフレンドリーでいい感じ。変換プラグも快く貸してくれた。またゼンハイザーとベイヤーのヘッドホンはインピーダンス(トータルの電気抵抗のこと)が高くてiPhoneのパワーだと音量を一杯に上げてもあまり音が大きくならない。それで「外付けのアンプをお貸ししましょうか」ともいってくれた。音の傾向はわかるくらいの音量にはなるので借りなかったが、そういう気配りも行き届いていいお店である。



さて試聴。本当はいろいろなジャンルの音楽で試したいところであるが、時間もないのでチャイコフスキーのバイオリン協奏曲第1楽章の後半部分の賑やかなところで聴き較べた。


シュア SRH1840
SRH1840

相変わらずいい音。ヘッドホンをつけていることをほとんど意識させない。音はよく広がり、そして抜けていくから聴感的に圧迫感はほとんどなし。音域のどこにも強調がなくフラットで音色的にはニュートラル。いってみればミネラルウォーターみたいなヘッドホン。喉に引っかからずゴクゴク飲めるのを耳と音に置き換えたイメージ。

店に来る前から8割方この製品に決めていたが、改めて聴いて9割にアップ。



ゼンハイザー HD650
HD650

音の全体的傾向はシュアSRH1840に似ている。広がりも抜けも申し分なし。較べるとシュアのほうがやや繊細で、ゼンハイザーのほうが音が少し太い。鉛筆でいうならFとHB位の違いかな。その差はごく僅か。

ただしシュアはとてもフラットに聞こえたが、ゼンハイザーは低域と高域が少し持ち上げられてる気がする。言葉にするとフラットのほうが正しい音楽再生のようだが、少しアクセントがあったほうが音楽が生き生きしてくるのがオーディオの奥深いところ。

さて今回ヘッドホンに目が向いたのは、開放型だと私が苦手だった音圧感のようなものがないことを知ったから。その観点でゼンハイザーがシュアに劣る点はなかった。音色的には少し違うが、どちらがいいとも、どちらが好きともいえないというか、自分でもよくわからないレベル。一対一で聴き較べるから違いがわかるわけで、買ってしまえば気にならないはず。それでいてゼンハイザーはシュアより1万3000円程安い。

運命的な出会いと思えたシュアSRH1840だったが、この時点で敗退決定(/o\)



ベイヤーダイナミック T90
T90

音楽が鳴って0.1秒でシュアやゼンハイザーとはまったく違う音だとわかる。ものすごく高音がきれいというか澄み切っているというか。とにかく高音がよく聞こえる。ヘッドホンによってこんなに違うものかと驚いた。この高音はとても魅力的。文章で高音、高音と書くとキンキンした音がするイメージになってしまうが、別に高音の音量が強くて耳につくのではなく、高音がクリアだからよく聴き取れるという意味。

ただし他の点では

音圧感については文字取り「開放型」な音だったシュアやゼンハイザーに対して、ベイヤーは少し密閉型に近い感触がある。同じベイヤーの密閉型と較べれば、このT90が開放型の鳴り方をしているのは明らかなのだが、ゼンハイザーと取っ替え引っ替えて聴くと開放型と密閉型の聴き較べをしているように感じてしまう。

音の広がりについても同様で、特にシュアは広い空間で音楽を聴いているような雰囲気があるのだけれどベイヤーはごく普通である。

それとベイヤーは低音のボリューム感が少し足りない。ひょっとしたら高音がよく聴き取れるから相対的に低音が弱いと感じてしまうのかもしれないが、そう聞こえるのだったら私にとっては低音が弱いということである。

ある程度高級なイヤホンやヘッドホンはケーブルが着脱式になっているものがある。本来はケーブルを別のものに換えて音の違いを楽しむというマニア向け仕様。ただしケーブルが断線した時にも着脱式なら交換は容易。それでシュアとゼンハイザーの2機種は着脱式なのにベイヤーT90は交換できないタイプ。このヘッドホンを自宅から持ち出して使うつもりはない。だからイヤホンのように簡単には断線しないと思うが、もし断線して修理もできなくて5万円がパーになるのかと思うと少し気掛かり。



あれこれ比較すると、ベイヤーはシュアやゼンハイザーに対して高音以外に取り柄がないことがわかった。音圧感を感じない鳴り方であることは、そのためにヘッドホンを買い換えることにした第1優先事項だし、クラシックを聴くなら低音が大事というのはかねてよりの持論である。

でも選んだのはベイヤーT90。
その高音の魔力には逆らえなかったというところ。たいして美人じゃないのに、おっぱいの形がキレイなオネエチャンに惚れることってあるよね(^^ゞ


ーーー続く

wassho at 22:06|PermalinkComments(0)

2015年12月20日

ベイヤーダイナミック T90 その2

イヤホンのケーブルが断線したので、新しく買い換えたことは少し前のエントリーで書いた。ケーブルが絡みにくいソニー製にすることは最初から決めていたし、断線したイヤホンの上位機種が型落ち商品として安く売られていたので、ほぼ即決で新しく買うイヤホンを選んだ。たぶんお店に入ってからレジでお金を払うまで10分もかかっていない。

それで思ったより早くイヤホンを選び終えたので、買う気はまったくなかったけれど、ついでにヘッドホンでも聴いて回るかと思ってしまったのが運の尽き(/o\)


以前にオーディオ関連のプロジェクトはいくつか経験があるので、CDプレーヤー〜アンプ〜スピーカーといった一般的なオーディオ製品の知識はそれなりにある。しかしイヤホンやヘッドホンは、それとはまた別のジャンルなので知らないメーカーがほとんど。前々回に買ったイヤホンのゼンハイザーも当時はまったく知らないメーカーだった。業界ではドイツの御三家メーカーの1つに数えられる存在であることを知ったのはかなり後から。そんなわけで、いざ聴いて回るとなっても商品が多すぎてどれから聴くのか迷うのが正直なところ。

たまたまオーディオテクニカ(これは日本の老舗メーカー)のラインナップが安いのから高いのまでズラーッと1列に並べられているコーナーがあったので順番に聴いていく。「イヤ〜さすがに高いヘッドホンはいい音するわ。値段を隠されたらどれが高いので、どれが安いのか聴き当てる自信はないけど(^^ゞ」と呑気に試聴を楽しむ。

しかしある機種を聴いた時、それまでの機種とははっきりと音の鳴り方が違うことがわかった。私が苦手なヘッドホン特有の音圧感というか圧迫感があまり感じられない。何これ?ひょっとして超高級機?と思って値札のところを見ると、それほどの値段ではない。しかし種別として「開放型」と書いてあった。これが開放型のヘッドホンかと、その時に初めてヘッドホンには密閉型と開閉型があったことを思い出す。理屈としては知っていたけれど、本当に密閉型と開閉型では音の出方が違っていた。


それで興味を持って開放型のヘッドホンをあれこれ試聴する。しかし開放型は数が少ない上に、オーディオテクニカの特別展示のようにすぐ隣りに同クラスの密閉があって聴き較べられるわけじゃないから、方式の違いによる音の変化を充分に確信したわけではない。密閉型であまり音圧を感じないものもあった。それでもアレコレ聴いているうちに「もしヘッドホンを買い換えることがあったら、次は開放型にしよう」という気持ちにはなっていた。逆にいえば、その時点ではまだその程度の気持ちだった。


最後にシュアのヘッドホンを聴いた。シュアはその昔レコードカートリッジ(レコード針がついている部分ね)で一世を風靡したアメリカのメーカー。イヤホンはとてもよく売れているから販促費も潤沢なようで、ビックカメラでは他のメーカーの陳列とは少し離れたところに半独立した形のブースを構えている。だからあれこれヘッドホンを聴き較べている時は、そのブースに気付かず帰り際に見つけたしだい。

ブースに座ってSRH1840という開放型のヘッドホンを聴いた。びっくりするくらいいい音だった。音圧感は皆無に感じた。自宅でスピーカーで聴いているよりいいかもと思えた。恐るべし最近のヘッドホン、そして開放型ヘッドホンである。

おそるおそる値札を見ると5万8000円ほどと腰を抜かすような金額じゃない。ビックカメラでは鍵付き陳列ガラスケースに収められた50ウン万円というヘッドホンもあった。

魔が差したのはたぶんこの時である(^^ゞ

でもこの日は思いとどまった。ヘッドホンの製品情報についてまったく何も知らなかったし、お店でそんなに数多く試聴したわけでもない。ここで衝動買いをしたら、後で別の機種にすればよかったと後悔する可能性もある。そんな経験は人より豊富である(^^ゞ それとイヤホンで気に入っていたゼンハイザーのヘッドホンも試したかったのだが、ゼンハイザーのプラグは太くてiPhoneに刺さらず聴けていないのも気掛かりだった。


なかなかベイヤーのT90まで話がたどり着けない。


ーーー続く

wassho at 20:00|PermalinkComments(0)

2015年12月19日

ベイヤーダイナミック T90

今年はたいしたことを何もしなかったから、来年はがんばるようにという都合のいい解釈をして(^^ゞちょっと高級なヘッドホンを自分向けクリスマスプレゼントとして買ってしまった。ドイツのベイヤーダイナミック社のT90という製品。

T90


今までヘッドホンを使う機会はそれほど多くなかった。夜中に超大音量で音楽を聴きたくなることがまれにあって、その時に使っていた程度。数えたことはないが年間に10時間程度かなあ。それまでのヘッドホンをいつ買ったのかもよく覚えていない。たぶん15年前から10年前くらいのはず。記憶によれば私にとって2台目のヘッドホンで、だから1台目のヘッドホンはびっくりするくらい長く使っていたことになる。ヘッドホンの耳当て部分がボロボロになったので買い換えたように覚えている。


要するにヘッドホンに関するこだわりはまったくなかった。2台目ヘッドホンはヘッドバンドとスピーカーをつなぐ調節部分がバカになって、頭に掛けるとスピーカーがズリ落ちてきたけれど、滅多に使うものじゃないからと気にもしていなかった。それを買ったのもスーパーの電気製品売り場で、棚にぶら下がっているパッケージを値段で選んでレジに運んだだけ。ゼンハイザーCX870ソニーMDR-XB60EXとそれなりに製品選びに時間を掛けたイヤホンとはずいぶん違う。


それなのになぜ新しいヘッドホンを買ったのか。ちなみにベイヤーダイナミックT90は4万8000円ほどした。10%のポイントを考えても4万3200円でそれなりの値段。

理由は2つある。

iPodやiPhoneに付属してくるイヤホンから多少はまともなイヤホンを使うようになって、イヤホンで音楽を聴くのがずいぶんと楽しくなった。今では1人で歩いている時はほとんどイヤホンが耳に刺さっている。オマケのイヤホンよりスピーカーに近いまともな音がするということであるが、音の善し悪しとは別にイヤホンにはスピーカーにはない特徴もある。

うまく表現できないがスピーカーと較べるとイヤホンは細かな音が聴き取れることが多い。聴き慣れた曲をイヤホンで聴いて「こんな音鳴っていたっけ?」と思ったことが何度もあった。ただし試しにその曲をスピーカーで聴いてみると、イヤホンで初めて聴いたと思っていたその音もしっかり鳴っている。別にイヤホンでだけはっきりと鳴ってスピーカーでは他の音に紛れているということもない。つまりスピーカーで鳴っていなかったのではなく、私が聴いていなかっただけの話である。

自宅でスピーカーで聴く時、スピーカーに正対してじっくり音楽を聴くことはほとんどない。今もブログを書きながら机の隣でスピーカーが鳴っている。イヤホンで聴く時もじっくり聴いている意識はないのだが、歩きながらだと他にすることもないので自然に注意深く聴いているのかもしれない。もう1つ考えられるのはイヤホンは耳のすぐそばで鳴っていること。それぞれの音が同じ音量比率で鳴っていたら、遠くだろうが耳のそばだろうが理屈では同じように聞こえるはず。でもなんとなく耳(というより脳)は音源からの距離も察知して、すぐ近くで鳴っている音をより注意深く聴き分ける仕組みになっているような気がしてならない。

ちなみに細かな音が聴き取れるのは、楽器の種類が多くて音色が豊富なクラシックのオーケストラの場合。ロックやジャズでそういうことはあまり感じない。でも例えばクラシックの四重奏で、スピーカーでは4つの音が鳴っていてもほとんど主旋律しか聴いていないというか頭に入っていない場合でも、イヤホンでは全部丸ごと聴いているという感覚はある。

いずれにせよスピーカーと較べていろんな音が聴き分けられるという鳴り方はイヤホンの魅力のひとつ。より分析的に音楽に浸れるといった感じ。常にそう聴きたいとは思っていないが、自宅でそういう聴き方もできればいいなと思っていた。



じゃ自宅でもイヤホンを使えばいいようなものであるが、イヤホンには耳のすぐ横でなっているから音の広がりがないという欠点がある。ひょっとしたらそれはいろんな音が聴き分けられることとのトレードオフかもしれないが、スピーカーを鳴らせる自宅でイヤホンを使う気にはなれなかった。

それでヘッドホン。今までは難聴になるような爆音でしか使っていなかったので(^^ゞ 聴き分けられるかどうかなどはもちろん気にしていなかった。試しにやってみると、当たり前だがイヤホンに近い鳴り方をする。音の広がりに大差はないが、ヘッドホンのほうがイヤホンと較べて音のレンジが広くてナチュラルに聞こえる。

ただしイヤホンとヘッドホンには共通の欠点がある。どちらも耳のそぐそばで鳴るから、音量とは関係なく音圧が高いというか音に圧迫感があるというか、簡単にいえばちょっと聞き疲れする。その鳴り方は音楽への没頭感につながるところもあって100%悪いわけじゃない。でも、そういうことをあまり求めていなかったので、今まで自宅でヘッドホンは臨時にしか使わないものだった。



話は変わるがイヤホンやヘッドホンの構造は密閉型と開放型に大きく分かれる。スピーカー部分の耳と接する反対側がケースで密閉されているか、メッシュなどの素材で隙間があるかの違い。

左が開放型で右が密閉型。開放型は耳の穴に被せる形で、密閉型は耳栓のような形のものを突っ込むようになっている。なぜか逆の組み合わせはない。イヤホンの場合は開放型をインナーイヤー式、密閉型をカナル式ということが多いがメーカーによって多少違う。
スライド1

イヤホンの場合、オマケで付属しているようなものを除いて、例外はあるものの今は市販されているほとんどが密閉型である。開放型はスピーカー部分の裏側が密閉されていないのだから、密閉型より音が外に漏れやすい。一昔前と較べて電車の中でシャカシャカとイヤホンから漏れている音を聞かなくなったのは、密閉型のイヤホンが普及してきたからだと思っている。


左が開放型で右が密閉型。イヤホンと較べてヘッドホンは違いがわかりやすい。
スライド2

ヘッドホンも理由は知らないが密閉型が主流である。eイヤホンというイヤホンやヘッドホンの専門店サイトで検索したら、密閉型が949件に対して開放型は128件だった。開放型はスピーカー部分が閉じられていない分、先ほど書いた音の圧迫感は軽減される。そのせいで同じように耳のそばで鳴っていても、たぶん錯覚なんだろうけれど音の広がりも密閉型よりは感じられる。




そんな理屈は昔から知っていた。しかしヘッドホンに関心もなかったので今まで開放型のヘッドホンを聴いたこともなかった。それがつい魔が差したのは(^^ゞ


ーーー続く

wassho at 20:25|PermalinkComments(0)