ワシーリー・ニコラエヴィチ・バクシェーエフ

2019年01月17日

国立トレチャコフ美術館所蔵 ロマンティック・ロシア展

渋谷にあるBunkamuraの30周年記念として開催されている、
モスクワにあるトレチャコフ美術館のコレクションを紹介する展覧会で、
サブタイトルがロマンティック・ロシア。

Bunkamuraは東急グループが運営する複合文化施設。渋谷の東急百貨店の隣にあり、コンサートホール、劇場、映画館、美術館などが入っている。首都圏以外ではあまり知名度はないかもしれない。出来た当時は東急文化村と呼んでいたように思うが、いつのまにか東急をネーミングにつけなくなり、またBunkamuraとアルファベットで表記するようになった。それで世間に通用するので、パソコンで「ぶんかむら」と打ち込むとBunkamuraと変換される。

さて、この展覧会は1850年(明治維新が1868年)から1917年(大正6年。日露戦争が1904〜1905年、ロシア革命が起きたのが1917年)までのロシア人画家の作品を展示している。概ね印象派の時期と重なるが、時代にかかわらず「ロシアの画家って誰か知っていたっけ?」というのがこの展覧会に興味を持ったきっかけ。シャガールとカンディンスキーが思い浮かんだが、彼らはロシア生まれであっても画家として活動したのはフランスだし。

結論からいうと、この展覧会で見た画家は初めて聞く名前ばかりだった。ポスターにも使われている「忘れえぬ女」に何となく見覚えはあってもロシアの画家の作品だとは思っていなかった。ところでロシア人の名前は長くてややこしいものが多く、作品紹介でブログに書く時に苦労した。


訪れたのは1月5日だからBunkamura入口には門松。
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館内にあったポスター。これが「忘れえぬ女」。
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ロシア文学には詳しくない。ドストエフスキー、トルストイ、チェーホフなどは大昔に読んだはずだが、内容はまったく覚えていない(/o\) だから「ロシア文学ってどんな感じ?」と尋ねられても答えられない。しかしクラシック音楽ならチャイコフスキーやラフマニノフ、ショスタコーヴィチなどにロシアっぽいというかスラブ調のようなものを感じる作品はある。じゃあそれは具体的にどんな音楽なんだと問われても表現できないけれど。まあとにかく、そんなロシアらしさが絵にもあるのかという興味で作品を見て回る。


展覧会全体として風景画が多かったように思う。どれも細密な描写。人物と共に描かれたものもあり、それらには詩情のような雰囲気が感じられる。

アレクセイ・コンドラーチエヴィチ・サヴラーソフ
「田園風景」 1867年
01


イサーク・イリイチ・レヴィタン
「春、大水」 1897年
02


イサーク・イリイチ・レヴィタン
「樫の木」 1880年
06


イワン・イワノーヴィチ・シーシキン
「森の散歩」 1869年
14


イワン・イワノーヴィチ・シーシキン
「雨の樫林」 1891年
15


イワン・イワノーヴィチ・シーシキン
「正午、モスクワ郊外」 1869年
18


エフィーム・エフィーモヴィチ・ヴォルコフ
「10月」 1883年
24


グリゴーリー・グリゴーリエヴィチ・ミャソエードフ
「秋の朝」 1893年
27


ミハイル・マルキアーノヴィチ・ゲルマーシェフ
「雪が降った」 1897年
29


ワシーリー・ニコラエヴィチ・バクシェーエフ
「樹氷」 1900年
31

ロシア絵画の特徴を発見した。画家の名前は長いがタイトルは短い(^^ゞ それは冗談として人物の服装にロシアあるいは東欧的なものは見られても、作風そのものは極めてオーソドックス。それによく考えたらロシアの風景を知っているわけでもなし、絵を見てロシアを感じられるはずもなかった。一番気に入ったのはシーシキンの「雨の樫林」。なんともいえず引き込まれる。傘を差している二人の姿が見えなくなるまで見守りたい気分になる。


海景画を何点か。

イワン・コンスタンチーノヴィチ・アイヴァゾフスキー
「嵐の海」 1868年
08


イワン・コンスタンチーノヴィチ・アイヴァゾフスキー
「海岸、別れ」 1868年
09


ニコライ・ニカローノヴィチ・ドゥボフスコイ
「静寂」 1890年
10

アイヴァゾフスキーの「嵐の海」は、そのコバルトブルー系の海の色に目が引き寄せられた。私が好きな海の色である。でもよく考えると、海は日差しが強くないとこういう色にはならない。でも描かれているのは嵐の海である。そこだけ雲が切れているとの説明も成り立つが、よく見ると後ろの山の日の当たり方もわざとらしい。嵐と快晴で何か比喩してるのかもしれないが、やはり光を描き分けたがるのは画家の習性なんだろう。でも好きな色だからイイヤ。


静物画は少なかったし、画像を見つけられたのはこれのみ。描かれているのはフロックスという花。静物画なのに台に置かれておらず、また花瓶の底周辺に擦れたような線が描かれている。浮いている想定? ナゾ

イワン・ニコラエヴィチ・クラムスコイ
「花瓶のフロックス」 1884年
23



男性の肖像画。作風は様々。

イリア・エフィーモヴィチ・レーピン
「ピアニスト・指揮者・作曲家アントン・ルビンシュテインの肖像」 1881年
35


ウラジミール・エゴローヴィチ・マコフスキー
「自画像」 1905年
36


コンスタンチン・アレクセーエヴィチ・コローヴィン
「フョードル・シャリャーピンの肖像」 1905年
37

このシャリャーピンはオペラ歌手。日本ではシャリアピンと発音されることが多く、来日した時に帝国ホテルでシャリアピン・ステーキを作らせた、あのシャリアピンである。それにしてもスーツなのに靴下が派手だな。


ーーー続く

wassho at 22:34|PermalinkComments(0)